[303] 2001年09月20日(木)
「写真はレンズが肝心」
「写真はレンズが肝心」とよく言われる。
確かにそうだ。カメラを簡素化された要素で見てみると、カメラボディはあくまでがらんどうな暗箱でしかなく、撮影に不可欠な光を導く役割はレンズ光学系が担っている。究極的には、数枚のレンズとフィルムだけが撮影に直接関わると言えよう。
我輩の好きなレンズに「50mmf1.8」がある。
50mmレンズというのは、全交換レンズの比較基準となる光学性能を持ち合わせている大事な存在。言うなればメーカーの看板のようなもの。一眼レフを持つならば、必ず1本は用意しておきたい。
交換レンズというのは、同じ焦点距離のものでも明るさ(口径比)の違うものがいくつか用意されている。50mmレンズの場合、一般的には「f1.8」、「f1.4」、「f1.2」の3種類がある。EOS用レンズを見てみると、「f1.8」、「f1.4」、「f1.0」となっている。
その中で我輩がいつも選ぶ50mmレンズは「f1.8」。無理のない光学設計(クセの無さ)、コンパクト、安価、そして近距離での描写力。
もちろん、50mmレンズには接写用のマクロレンズもラインナップにあるのだが、図体が大きく値段も「f1.8」の3〜4倍と非常に高価。コストパフォーマンスを考えると、断然、「f1.8」しかない。
そんな我輩が「EOS-D30」と共に購入した交換レンズは、当然「EF50mmf1.8」である。新品でありながら実売価格9千円程度というのも凄まじい。
だがその値段も、そのレンズを手に取ってみると納得する。呆れるほどチープなのだ。
レンズ本体はもちろんのことマウント面はプラスチック製であるし、距離指標も省略されている。ピントリングはレンズ先端に申し訳程度に付いているのみ。
それでも商品撮影などの静物を撮影する限りに於いては、別段問題になるとは思われなかった。しかし実際に撮影をしていくうちに、どうにもこのレンズの使いにくさが無視出来なくなってきた。
まず、何と言ってもピントリングの幅が狭く、なかなかピント操作が思うように行かない。AFレンズであっても、商品撮影のようなものはAFはかえって邪魔になる。同じアングルで何枚も撮ることが多く、撮影するたびに測距し直すのは迷惑。露出値を固定する意味でマニュアル露出を使用するのと同様に、ピント面をロックするためにMFを選択している。だからピントリングが狭いとキビシイ。
しかも、AF/MF切替スイッチが安物で、ギアが外れないのであろうか、MFに切替えてもモーターのトルクを感ずるようなことがよくある。そういう場合、勢いよくピントリングを往復させるとギアが外れてスカスカになってはくれるが・・・。
このようなことでは、いかに「光学系には問題無い」と言われても使いづらくてしょうがない。
昔から「50mmf1.8」というレンズは貧乏人のためのレンズだという待遇を受けてきたが、キヤノンのEOS用レンズほど完璧に割り切って作られたレンズも珍しいと言える。
そうは言うものの、ここまで手を抜いて作られるレンズも哀れであろう。これならば、ニコンの「おもしろレンズ工房」のほうがまだ高級感・操作感に勝るに違いない。
まあ確かに、レンズ光学系に関してはどのレンズにも引けを取らぬ実力を持つように思う。だから外見や操作性を気にせず撮れば、それは作品には現れないはず。
それにしても、EOSシステムが登場した頃の「50mmf1.8初期版」はまだ良かった。ピントリングもしっかり作られていたし、距離指標もきちんとあった。マウント面はステンレスが光っていたものだ。それが新タイプの「f1.8」になると途端に貧乏臭くなってしまった。
「写真はレンズが肝心」と自分を励ましてはいるものの・・・、まったく情けない外観で悲しくなる。
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