2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[287] 2001年08月03日(金)
「写真を殺すデザイナー」

最近我輩は、極めて硬い甲鉄で覆われた戦艦大和が簡単に沈められたことを不思議だと思い始めた。
大和型戦艦は46センチ主砲を搭載し、魚雷攻撃はもちろんのこと、同クラスの砲弾を撃ち込まれても防御出来ることを想定して造られたはず。不沈艦と呼ばれた大和がなぜ沈められたのか。

確かに10本以上の魚雷を受ければたまらないというのもあるだろう。だがもう少し技術的な面での理由を知りたい。厚い甲鈑はなぜに破られたか・・・。
そんな疑問から、我輩は戦時中での造船に関する本や戦史などを調査してみた。

それら書籍の中には、興味深い貴重な写真資料が多く掲載されているものもあり、我輩は静止したモノクロ写真から爆音や煙のにおいを感じとった。
古びた写真ながらも、それは確かに存在した風景をフィルムに焼き付けたものである。それは、今自分を取り囲んでいる現実世界と同じように、色や音や動きを持っていたのだ。
このように、過去を記録した写真の重要性は以前にも書いたと思う。

だがいくつか購入した書籍の中で、そんな写真を台無しにするようなレイアウトをしている本があり、かなり不愉快に思った。それは、見開きレイアウトを安易に多用したもので、明らかに思慮を欠いている。


特攻機によって炎上した米空母。船体が見開きの間に埋もれてしまっている。本が割れるくらい開くと、ようやく艦橋部分が見えてきた。
「特攻機が火に包まれて落ちていく」という解説が載っている。だが、どんなに見開きを開いても煙のスジは見えるものの、火の部分はほとんど埋もれて見えない。
攻撃を受けている戦艦「伊勢」だそうだが、肝心の戦艦の姿が見開きの間に埋もれていて、艦首と艦尾がかろうじて見えるのみ。

我輩は、基本的に見開きの写真は好きではない。もちろん、それは個人的な好みの問題も多分に含まれているだろう。しかし、それでも写真を見開きページの真ん中で分断するのはあまり見易いとは言えないと思う。いくら面積的に迫力があるように見せようとも、本の綴じ方によってはほとんど真ん中が見えなくなる。

手元に鉄道関係の写真集があったので、試しに見比べてみた。 こちらは意味の無い見開きレイアウトを多用せず、スッキリと見易い写真集であった。たまに見開き写真もあるのだが、それは問題無い写真で構成してあり、表現に無理が無く素直に観ることが出来る。

デザイナーは、本の綴じを意識しながら、如何に効果的で見易いレイアウトにするかを考え抜かねばならない。そうでなければ、写真を切り刻む必然性を失い、写真家からも反感を買うことになる。
恐らく経験の浅いデザイナーがDTPを用いて組版をやる際に、モニタ画面上で見る見開きページの迫力に影響され、その勢いで版を組んでいったのだろう。確かにモニタ画面上では、見開きの中心部へと目が行く。

だが実際に「本」という物理的な形が完成してみると、その見開きがことごとく裏目に出た。経験の浅さ故、モニタ画面上で全てのことが完結出来ると思い込み、製本のことまで想像が及ばなかった。
本人は大胆なレイアウトだと思っていただけに、虚しさはまた大きいと言わざるを得まい。

画面上でスマートにデザイン及びレイアウトしているつもりが、現実を無視したユーザー不在のレイアウトとなった。出版社側は単に売れれば良いと考えるかも知れないが、金を出してその本を買った消費者と、貴重な写真を提供した者の信頼を裏切る行為である。

デザイナーとしてのセンスを認めさせようとして出しゃばるのも理解出来ないわけじゃないが、あまりに視覚効果を無視した、フィーリングだけに頼ったデザインはやめてもらいたい。別に特別なことを要求しているわけではないんだ。これは消費者である読者の立場からの願いである。

貴重な写真を、切ることなくそのままの姿で伝えて欲しい。

(参考関連雑文