我輩は、基本的に見開きの写真は好きではない。もちろん、それは個人的な好みの問題も多分に含まれているだろう。しかし、それでも写真を見開きページの真ん中で分断するのはあまり見易いとは言えないと思う。いくら面積的に迫力があるように見せようとも、本の綴じ方によってはほとんど真ん中が見えなくなる。
手元に鉄道関係の写真集があったので、試しに見比べてみた。
こちらは意味の無い見開きレイアウトを多用せず、スッキリと見易い写真集であった。たまに見開き写真もあるのだが、それは問題無い写真で構成してあり、表現に無理が無く素直に観ることが出来る。
デザイナーは、本の綴じを意識しながら、如何に効果的で見易いレイアウトにするかを考え抜かねばならない。そうでなければ、写真を切り刻む必然性を失い、写真家からも反感を買うことになる。
恐らく経験の浅いデザイナーがDTPを用いて組版をやる際に、モニタ画面上で見る見開きページの迫力に影響され、その勢いで版を組んでいったのだろう。確かにモニタ画面上では、見開きの中心部へと目が行く。
だが実際に「本」という物理的な形が完成してみると、その見開きがことごとく裏目に出た。経験の浅さ故、モニタ画面上で全てのことが完結出来ると思い込み、製本のことまで想像が及ばなかった。
本人は大胆なレイアウトだと思っていただけに、虚しさはまた大きいと言わざるを得まい。
画面上でスマートにデザイン及びレイアウトしているつもりが、現実を無視したユーザー不在のレイアウトとなった。出版社側は単に売れれば良いと考えるかも知れないが、金を出してその本を買った消費者と、貴重な写真を提供した者の信頼を裏切る行為である。
デザイナーとしてのセンスを認めさせようとして出しゃばるのも理解出来ないわけじゃないが、あまりに視覚効果を無視した、フィーリングだけに頼ったデザインはやめてもらいたい。別に特別なことを要求しているわけではないんだ。これは消費者である読者の立場からの願いである。
貴重な写真を、切ることなくそのままの姿で伝えて欲しい。
(参考
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