2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
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カメラ雑文

[279] 2001年07月03日(火)
「自分の絵の具」

ある日、120フィルムからコダクロームが消えた。
それ以来数年間、我輩はコダクロームを使っていない・・・。


我輩が最初に使ったリバーサルフィルム、コダクローム。それは、我輩にとって大きな衝撃だった。深みのある色と緻密な描写。それは、現実の世界そのままを切り取ったかのような奥行きを感じさせた。
この場合の「深みのある色と緻密な描写」とは、コダクロームの特徴を見たという深い意味ではなく、それまで撮っていたプリント写真との比較の印象である。まさに「真実を写す」という意味の写真に思えた。
以降、我輩の常用フィルムがコダクロームとなった。
(厳密に言えば、最初に使ったのはフジクロームだったが、それは中学時代の文化祭で説明図のスライド上映をするために使ったものであり、単に「スライド映写用のフィルム」という認識でしかなかった。それ故、これは最初のリバーサルフィルムとしての想いは無い。)

中判カメラを使うようになったのは社会人になって経済的余裕が出来た時だった。
120サイズにコダクロームはラインナップされていなかったため、最初は中判だけはエクタクロームを使っていた。35mm判はコダクローム、中判はエクタクローム。かなり使いづらかったことを覚えている。
だがそのうちコダクロームが120サイズで登場した。なぜもっと早く発売してくれなかったのだろうかと思いながらも徐々に使い始めた。

35mm判と中判、同じ種類のフィルムを使うということは、我輩にとっては重要である。
常に同じ条件で撮影を行うことにより、人間に起因するもの以外のバラつきを最小限に抑える。これにより、自分の未熟さを浮き彫りにさせ、修行の必要性とその方向を示すのだ。言い訳の出来ない「結果」を突きつけられれば、我輩はそれを重く受け止めねばならぬ。フィルムのせいにすることは出来ないのだ。

「コダクロームはスミが汚い」と思うこともあったが、そんなことは最初から分かっていたことである。そのフィルムの良い部分を活かし、悪い部分を目立たせない使い方をしなければならないのは、他でもない自分の責任だ。
性能が良いと言われるフィルムが発売される度に乗り換えていくならば、自分の能力とフィルムの特性との境界線が曖昧になり、どちらが悪いのかが見えなくなる。そうなると、人はますますフィルムのせいにして自身の努力範囲を狭めてしまう。
我輩は、高性能なフィルムよりも、気心の知れた安定した付き合いを望む。だから、コダクロームを使い続けていた。

そんなコダクロームは、数年前に120フィルムの発売を中止した。

それ以降、我輩は35mm判もコダクロームを使っていない。
違うタイプのフィルムを併用することはそれほど難しくはないかも知れない。だがやはり、撮影前に自分が納得出来るようになるためには、1つの種類のフィルムを使い込む必要がある。そうでなくとも、乳剤番号の違いによって色がガラリと変わる。それが数種類のフィルムごとにまた違うのであるから、我輩には1つの種類だけで精一杯と感ずる。

我輩は現在、エクタクロームを使っている。もちろん、35mm判と中判の両方だ。まだまだそのフィルムに馴染んだようには思えないが、それも時間が解決してくれよう。永く使い続けているうちに、いやがおうにも見えてくるものがある。そういったものが少しずつ貯まっていき、だんだんとそのフィルムが自分にとって無くてはならぬものとなろう。
いくらキレイに写るフィルムがあろうとも、事前に予測のつかないフィルムなど使う気にはなれぬ。

頭の堅いヤツだと思われるのは仕方が無い。だが、我輩は写真を撮る動機として、「撮りたいものを、撮りたいふうに撮る」という原点を大切にしたい。それは、我輩が最初に使ったコダクロームで感じたことだ。自分の感じた現実映像を、写真の枠でそのまま切り取る。

画家は、昔から使い続けている絵の具や油のことをよく知っている。絵の具が固まった時、どんなふうな色やツヤになるのかを想像出来ている。それと同じように、我輩はコダクロームに代わるエクタクロームを早く自分の絵の具としたい。