2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[192] 2000年12月15日(金)
「貧乏脱出大作戦2」

毎週月曜日の夜に放映される番組「貧乏脱出大作戦」を観ていると、こちらもつい口を出したくなるような場面がよくある。

前にも書いたが、この番組は、赤字続きの飲食店を繁盛店で修行をさせ、店を立ち直らせようというもの。繁盛店の師匠のもとで厳しい修行をすることになる。

よくいるのが、脱サラでこの世界に入り、料理の基本も知らぬままやっていた者。それから、赤字ながらも長年やってきたというプライドのある者。そして、厳しい修行に耐えられずに妥協する者。

このような者は、師匠の与える課題を真剣に取り組もうとはしない。
基本を知らぬ者は、「なんでこんな面倒なことをやるのか」と思う。
プライドのある者は、「オレにはオレのやり方がある」と思う。
妥協する者は、「これだけ出来ればもういいよ」と思う。
これらの者は、師匠が見ていないところで自分のやり易い独自の方法でやり始める。

しかし師匠が教えることは、基本が出来ていないと難しい修行ではあるが、基本さえ出来ていれば難しいものではない(傍目からはそう思う)。
この番組に登場する修行者は、基本中の基本が出来ない者ばかり。中華料理屋が鍋振りも出来ない、寿司職人がシャリを切ることも出来ない、小料理屋が魚をさばくことも出来ない。

結局、師匠の教えることをやらない者たちは、「やらない」のではなく「出来ない」のである。修行者たちは自分の出来ないことを無意識に避け、自己流から抜け出そうとしない。それを本人たちが自覚していないため、修行がどんどん遅れて行くのである。これが、この番組のお決まりパターンだ。観ている側もハラハラする。

しかし、師匠はそんな甘えを鋭く指摘する。料理という結果だけを見て、修行者の心の中を見抜く。さすがだ。師匠はその長い経験の中で、修行する者たちが感じることも全て、過去に通過してきたのだろう。
師匠に突き放され、修行者たちは、自分たちが足りないものを気付かされる。そして本当の意味で、そこから修行が始まる・・・。

基本が出来ていないと何をやっても上手くいかないというのは、ごく当たり前の話だ。それは、未熟な者ほど理解していなければならぬ。そうでなければ、誰も上達することはないだろう。


写真の世界でも、やはり基本は大切だ。
「写真の基本」とは、露光とピント合わせだ。他にはマナーといったところか。

しかし、最初からそんな面倒なことには背を向け、感性だけで勝負しようとする者がいるらしい。それはデザイナー寄りの者だと思われる。
前にも書いたが、底の浅いデザイナーがやっていることは、結局何のイメージも持たない。

そんな前衛的な写真は、自由な発想から生まれたものであり、一律に否定されるべきものではないだろうが、「それしか出来ない」というのと「敢えてそれをやった」というのとでは全く意味が違う。

絵画をやっていて、たまたま写真の手法を取り入れたという者もいるかも知れない。しかし、他のものを取り入れるためには、その基本を理解する必要がある。
最近は勉強をするのが流行らないのか、別のものを取り入れるにしても、単純にうわべだけをつまみ食いしているようだ。

ベビースターラーメンを食べやすいように一口サイズに固めた開発者は、東京名物の「雷おこし」をヒントにした。しかし、固める技術というのは思ったほど簡単ではなく、雷おこしの製法の基本から学ばなければならなかったという。
これがもし、うわべだけのつまみ食いならば、斬新なアイデアも簡単にほぐれてバラバラになってしまっただろう。

結果だけをマネしてもダメなのだ。それを構成している単純な法則、「基本」がカギを握る。人の心を動かす要素となるものは、意外に単純で明快だろうと思う。それを「表現力」によって、意識させずに人の心の奥に送り込むのだ。送り込むものが無ければ、そもそも表現力があっても何の意味がある?

意図的にカラーバランスを崩す、意図的にピントをボカす、意図的に焼きムラを作る、意図的にスクラッチ(キズ)を入れてみる・・・。
そんなものは、一瞬の奇抜さに流れて消えて行く。同じ手法は二度と通用しないだろう。

当たり前の言葉だが、敢えてここに書く。
「基本は大事だ」。