2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[153] 2000年10月03日(火)
「風を切るオイちゃん」

今回は、直接カメラに関係無い話かも知れないが、男の趣味として通じるものがある気がするので敢えて書いた。
そこから何を感じ取るのかは、個々人で異なるだろうと思う。


営団地下鉄町屋駅近くに、一軒の古びた青果物店がある。いかにも下町の店という感じで、店の床は土っぽい。
そこはオイちゃんとオバちゃんが2人でやっている。

よく見ると、店の奥のほうにボロ布や毛布に包まれた「何か」がある。ときにはミカン箱が上に乗っていたりする。
あまり清潔っぽいイメージがしない店内(実際には清潔なのだろうが)にあっては、その存在は周囲に溶け込んでいてあまり目立たない。事実、我輩もその存在を知ったのは、つい最近のことである。

ある日の事だった。我輩はその青果物店の前を通りかかると、「ドゥルルルン!」と爆音が轟いた。見ると、店内に大きなバイクの後ろ姿があり、オイちゃんがその横に立ってエンジンをフカしているのだ。
ボロ布や毛布に包まれていたのは、このバイクだった。店の雰囲気とは正反対に、そのボディは渋い光沢を放っている。

我輩はバイクに詳しくないのだが、あれは多分、「ハーレー・ダビッドソン」ではないかと思う。
オイちゃんは、仕事の合間に時々エンジンをかけて楽しんでいるのだろうか。

常に出し入れしやすい場所にはないため、恐らく外で乗ることは無いのだろう。大型バイクの免許すら持っているか怪しいもの。

乗るわけでもないバイクに金を使って、さぞかしオバちゃんは理解に苦しんだろう。配達にも使えるように、「ホンダ・カブ」でも買ったらどうかと説得されたかも知れない。
しかし、オイちゃんは「いつか免許を取ってやる、コイツがあれば必ず取れる」と言った。そして、男のロマンを語って聞かせた。そうでなければ、こんなところにこんなバイクが在ろうか。
それにしても大したもんだ。

「オイちゃん、やるなぁ。」
我輩は店の前を通り過ぎながら、オイちゃんのバイクのスロットルを握る後ろ姿を見ていた。

死ぬ前に1度コイツに乗ってやるんだ、それまでの動作確認なんだ、と思っているオイちゃん。
その心は、バイクに乗って風を切っていた。