[150] 2000年 9月28日(木)
「ヘタウマ」
最近、イラストでは多い「ヘタウマ」。
言葉としては知らなくとも、その絵を見れば、「ああ、このことか」とすぐに分かるだろう。
「ヘタウマ」というのは、一見下手なのに作風に味があるというものを指す。漢字で書くと「下手上手」というところか。
一昔前は、ちょっとしたアクセントとして少数が存在していただけだった。しかし、最近はちょっと多すぎる。アクセントというよりも、ヘタウマが主流という感じになっている。
例えば、「TVブロス」という雑誌、安いのでいつも買っているのだが、これは雑誌全体がヘタウマ。そういう路線の雑誌だというのは分かる。けれどもメリハリなども無く、まるで大学の同人誌のようなノリで、内輪でしかウケないようなお粗末さ。安くなければ、こんな雑誌は買わぬ。
絵の上手い人間が、意図を持ってヘタウマしているうちは良かったのだが、最近のヘタウマは本当の下手が誤魔化す目的でやっているに過ぎない。あるいは単なる手抜き。
「それがボクの作風です」と言えば、それ以上はもう誰も突っ込まない。
最初に現れたヘタウマが何の作品だったのかは知らないが、それは独創的な発想だったと言える。しかし、一旦それがウケると分かるや、どこもかしこもヘタウマで溢れた。オリジナリティ溢れた作風だったものが、次の瞬間には、ありふれたつまらないものに変貌してしまう。
さて、カメラ業界では、今まで何度も言ったように、エルゴノミクスデザインが安易に多用されてきた。もちろん、そこにはコンセプトなど無い。
最近出たEOS7では、ダイヤル式の操作体系を多く取り入れたということが特長とされているが、その両肩にある2つのダイヤルが、妙に傾いているのが気になる。
操作しやすい傾きなのか、それとも偶然の産物なのか。出来上がった物だけを見て判断することは難しい。
「まっすぐ」というのは分かり易い。まっすぐであるべきところがまっすぐになっていないものは、誰の目から見てもおかしいと分かる。
しかし、最初から歪んでいるデザインでは、それが本当に歪んでしまっても、どれが本来の形だったのかなど、もはや分からない。
設計者がデザイナーの描いたデッサンを基にカメラの輪郭線を描く際、CADの操作ミスで線が多少ズレたとしても、そんなことは誰も気付かないだろう。「意図された歪み」と、「意図しない歪み」は、デザイナー以外は区別出来ないからだ。これはもう、デザインがヘタウマ化してしまったと言える。
メーカーが「これがウチの仕様なんです」と言われれば、それ以上はもう誰も突っ込まない。
本当は真っ直ぐな線も満足に引けないんじゃないのか? 線の修正が出来ないんじゃないのか? 二度と同じ形の線を引くことが出来ないんじゃないのか? クレイモデルを作る際、粘土の代わりにチョコレートを使い、半分融かしてデザインしてないか?
昔は、カメラの限られたスペースに如何にして機器を押し込むかに苦労していたそうだが、今では適当にボディを膨らませたりしてインチキやっていても誤魔化せる。
EOS7の妙な傾き、どこかインチキ臭いのは、精密感のカケラも無いデザインにある。
「ネクタイ曲がってるぞ」と指摘しても、本人はワザとやってるつもりでカッコ付けている・・・ちょうどそんな感じだ。
デザインに好き嫌いはあろうが、機能に裏打ちされないデザインであれば、時代の移り変わりを乗り越えることは不可能だ。白いギターのように、後で使うのが恥ずかしいというのはゴメンだ。
傾いたダイヤル、本当に使いやすいのであれば、電子ダイヤルの時のように他社もそれに追従することになろう。それが業界のスタンダードになるハズだ。果たして本当にそうなるかどうか、今から見守ることにする。
ヘタウマで終わるか、スタンダードとして定着するか・・・。
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