「シティー・ハンター」というマンガで、主人公の冴羽リョウが、「One Of Thousand(ワン・オブ・サウザント)」とかいう拳銃を使って、精密射撃をするシーンがある。
うろ覚えの説明だが、「大量生産で生み出される拳銃の中には、千挺に1挺の確率(One Of Thousand)で、どんな銃職人でも作れないほどの精度を持った銃が偶然に生まれる。」のだという。
冴羽リョウは、この拳銃を使い、最初の1発目が作った穴めがけて2発目を撃ち込んだ。
銃のことを多少知っている者ならば、あり得ない話だとすぐに分かる。命中率は銃本体だけで決まるのではなく、「弾頭の形状・材質」、「火薬の燃焼速度(火薬の種類)」、「何発目に撃ったか(銃身の熱や汚れ具合が違う)」などによってかなり影響を受ける。
しかし、話としてはなかなか面白い。命中率はともかく、銃の機械製品としての精度がまさしく「One Of Thousand」のものもあるかも知れない。
さて、以前
営業課長に頼まれたF3/T(黒)の撮影について、昨日6×6判で撮影した。その際、久しぶりにガス充填ケースから出したF3/T(黒)を操作してみた。電池は抜いてあるので、緊急作動レバーでシャッターを切る。
「ん・・・?」
感触がいつもと違う。いや、正確に言えば、「今まで使ってきたF3と違う」のだ。
何が違うのかと言うと、巻上げの感触が異様に軽い。シャッターの音もまろやかに聞こえる。すぐに、F3HPやF3リミテッド、F3/T(白)に持ち替えて操作してみた。・・・これはいつもと変わりない。特に、F3HPは未使用のもので試したのだが、F3/T(黒)ほど軽くはない。
何故だ?
F3/T(黒)はそれ1台しか所有しておらず、全く同じものを比較出来ないが、少なくとも今まで触ってきたF3と比べると、そのF3/T(黒)だけは特別な感触なのだ。
・・・まさか、これは「F3版の One Of Thousand」なのか?
しかし、なぜ購入当初に気付かなかったのか、そこが解せぬ。
このF3/T(黒)を購入した当初は、F3経験も浅く、その軽さに気付かなかったのかも知れない。あるいは、フロンガス充填が影響し、何らかの変質が起きたのだろうか。まさか、故障する前兆現象ではあるまいな。
しかしまあ、敢えて本当のことを知らないほうがよい場合もある。
知人Bの親父さんは、大事な保存カメラを子供に(Bの弟)売り飛ばされたが気付かないままだという。きっと、その親父さんの心の中には、新品のカメラが今でも大切に保管されているだろうと思う。美しい話じゃないか。
何事も信じることが大切だ。自分のカメラであるから、自分が納得すればそれでいい。「One Of Thousand」かどうかというのは誰にも断定出来ないことだ。もしかしたらF3/T(黒)に限っては、他のものも同じく軽いのかも知れない。
しかし、自分の持っているF3/T(黒)が、「One Of Thousand」であると信じれば、それはその瞬間から「One Of Thousand」となるのだ。