[125] 2000年 8月26日(日)
「ミノルタα−7」
「ミノルタα−7」が登場したようなので、ミノルタのホームページからPDFカタログをダウンロードした。
個々の性能は西暦2000年相当だろうが、全体的な形態はかなりカメラらしくなってきた。「シンクロソケット」、「ダイヤル式操作部」、「ストラップ吊り金具」、「溶けかかったデザインの見直し」、「高ファインダー倍率」、「印刷表示から刻印表示への改め」・・・。まあ、確かに、AFカメラとしては新機能に違いないが、しかしこれらはAFカメラが自ら決別してきたことだろう? 何を今更、という感じがする。例えるならば、「東京で成功してやる!」と家を飛び出た若造が、スゴスゴと田舎に帰ってオヤジの後を継ぐようなものだ。
「シンプルなラインを基調とする洗練されたデザイン」などとぬかしやがって、今までの自分の行為を平気で否定するヤツは信用できん。
企業としての姿勢はともかく、とりあえずカメラ自体はソコソコ良いと思う。しかし、これは単にゼロ地点に戻っただけの話だ。今まではR2−D2のようなロボットを作ることを目指していたのだが、ここに来てやっとカメラを作る気になったらしい。
しかしまあ、ミノルタの思い込みの強さはかなりのものだ。きちんとしたマーケティングなどやってこなかったんだろうな。そうでないとすれば、社長や開発部長など、特定の人間がかき回しているのか。いわゆる「鶴の一声」で、全ての方針がガラリと変わることもあり得る。
しかし今回のα−7は、まだまだ信用できない面がある。その1つが、AFとMFを瞬時に切り替えるメカニズムの「フォーカスクラッチ機構」だ。これは、カタログのイラストを見ると、プーリーにゴムベルトを掛けてあるのが判る。何だこれは?
ビデオデッキが故障する場合、テープの巻き戻しが出来なくなったりすることが多い。これは、モーターの回転力を伝達するゴムベルトが劣化して緩み、プーリーから外れたり空回りしたりすることによる。
機械装置というのはアキレス腱が必ずある。たった数ミリの配線一つが切れただけで、全機能を停止する場合がある。例え他の機能に全く異状がなかったとしても、機械装置全体が使えなくなるのだ。
ビデオデッキのような安価なものならば、大抵の場合、新しい製品に買い換えることになる。しかし、故障の原因がたった1つのゴムベルトで、他の部分には全く異状が無いとするなら、これほど無駄なことは無い。
α−7のフォーカスクラッチに使われている機構では、カメラがビデオデッキ化することがあり得る。数年間の使用では問題なく素晴らしい性能を発揮するのだが、その後はどうなることやら。原因は、たった1つのゴムベルト。中古に落ちたものでは要注意だ。
カメラに起こる経年劣化では、よくモルトプレーンの劣化やシャッターの油切れの問題が今までにもあったが、それらはいずれもアキレス腱ではなかった。それが起こっても、ほとんどの場合は撮影に支障が無い。
α−7の場合、ゴムベルトの劣化は即、AF撮影不可能を意味する。いつまでたっても合焦しないため、AFモーターは際限無く回転を続け、MFに切り替える知恵が無いとシャッターも切れないだろう。
「このカメラに使われているゴムベルトは特別製ですから劣化はありません」とメーカーは言うかも知れない。しかし、プロ用としてデビューしたα−9000などは、グリップ部のラバーが数年で劣化し、滑りやすくなった。やはり、実際に年月が経ってからでないと信用は出来ぬ。
今度は、耐久性に優れたカメラが作れるよう、古きに学ぶことだな。耐久性とは言っても、短時間の衝撃に耐えることばかりでなく、永く使えるような経年変化に耐えるもののことを言っているのだから、ミノルタは誤解しないように。思い込みが激しいメーカーであるから、余計な心配をしてしまう・・・。
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