2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
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5.カメラ雑文
6.写真置き場
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8.リンク
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カメラ雑文

[114] 2000年 8月13日(日)
「ハンマーフィニッシュF3」

実は金曜日の夜、F3リミテッドをペイントした。カメラをペイントするなど、単なる遊びに過ぎないが、今回あえて挑戦してみた。

通常、金属製カメラの塗装は、自動車のボディと同じように焼付塗装である。しかし焼付塗装は自家処理では行えないため、吹付塗料を実施する。

まず、今塗られている塗料を剥がす必要がある。その方法はいくつかあるようだが、我輩が選んだ方法は「火で炙る」ということだ。有機物を除去するには、高温で焼けば良い。
無機化学を専攻していた大学時代、実験で得られた無機化合物を正確に秤量するために、白金坩堝(はっきんるつぼ)に入れてバーナーで強熱して炭素を飛ばしたものだった。

ここでは、ガスコンロで熱する。チタンが真っ赤になるほど加熱すると塗料が燃えはじめ、煙になって飛んでいった。後には鈍く光る表面が顔を現す。FGやFAのようなプラスチック外装ではこうは行かぬ。

今回使用した塗料は、塗布するだけでハンマーで打った金属のような「ハンマーフィニッシュ」のような仕上げになるというものだ。いくつか色の種類があり、緑色を選んだ。説明書きには「アルキド系」とある。実はウレタン系の塗料を使うと強くて剥がれにくいらしいのだが、ウレタン系塗料の中で、我輩の気に入る色はなかなか見つからなかったのだ。
このハンマーフィニッシュ塗料、「塗ったあとは強度があり剥がれません」と書いてあるので、多少のことは大丈夫だろうと勝手に解釈した。

F3の分解は少し手間取った。インターネットのオークションで手に入れた「F3リペアマニュアル」やその他の資料を見ながら分解をした。
驚いたことに、F3のような電子カメラでも、かなり機械動作をする部分が多い。特に、Ai連動のメカニズムには、糸が結わえてあり、絞り環の動きと連動してその糸が引っ張られる。カメラ内部の露出計へ、糸の引っ張り具合が伝えられるのだ。かなり原始的で、まるで昔の船で使われていた伝令管のような印象を持った。

まず最初に、底ブタを塗装してみた。塗った直後、確かにハンマーフィニッシュの模様が湧き上がってきた。なかなか雰囲気が出ている。
完全硬化までの2〜3時間が過ぎ、底ブタを触ってみると・・・何だか表面が柔らかい。これで本当に、強度は十分なのか? この柔らかさが強さの秘密なのだろうか。いや、そうに違いない。爪を立てて試してみた。簡単に塗料がめくれ、爪の間に挟まった。

・・・どう考えても失敗だった。目立たない底ブタで試したのは正解だった。
とりあえず、この塗装は全て落とさねばならない。全部爪で引っ掻いて落とすのも大変であり、最初と同じく火で焼くことにした。

火で炙ると、まるで濡れたようにツヤが出てきた。そのうち、ビニールの燃えるような激烈な臭いがしはじめ、いったん作業を中断した。
換気を十分に行い、底ブタを十分に冷やして手に持ってみた。表面のツヤはそのままだ。まるで七宝焼きのような光沢で、先程とは見違えるほど硬くなっている。爪で剥がそうとしてみたが、今度は傷すら付かなかった。これはなかなか具合が良い。
そうか・・・、塗った後、焼けばいいのか。

しかし、先程爪で引っ掻いた跡が残っているので、あらためて塗り直す必要がある。焼いてもダメなので、結局、紙ヤスリでシコシコと落とした。かなり頑固で落ちにくかったため、逆にその分、耐久性は期待出来そうだ。

ただし、焼くと色が変わるようで、元々は銀色に近い緑だったのが、本格的に緑色になった。しかし、そこがいかにも産業機械にありがちな色のハンマーフィニッシュの印象になった。

F3は実験装置などのシステムの一部になることもある。数百万円もする研究施設向け顕微鏡システムの中では、F3は最も安い付属品の中に入るだろう。カメラ業界の中では高価なカメラであるF3も、研究設備の中では単なる付属品でしかない。厳格な「公務」を淡々とこなすF3の姿は、華やかな報道の世界で活躍するF3とはまた違った「重み」を感じるのだ。



ただし、今回の「火で炙った」という処理は、実は危険な行為かも知れぬ。この文章を参考にしてマネすることはお勧めしない。あらためて言うが、我輩は塗装に関しては全くシロウトである。




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