我輩が中判カメラを始めたのは、10年近く前のことだった。
説明の必要は無いと思うが、中判カメラはブローニーサイズの「120ロールフィルム」を使うカメラの総称である。同じフィルムを使っても、縦6センチに対し、横4.5センチ、6センチ、7センチ・・・と色々な画面サイズのカメラがある。当然、サイズが大きくなれば、撮影枚数が少なくなる。
ちょうどニコンF3の新品を購入し、そのカメラの外観写真を撮っていた時期だった。
最初は、35mmカメラである「キヤノンEOS630」で撮影していたのだが、やはり35mmでは出来上がった写真が小さすぎる。ルーペで拡大しても細かいディテールがハッキリしない。
ブツ撮りの本を見てみると、そこに登場する写真家の使うカメラに、35mmカメラなどほとんど出てこない。一番多いのが、大判カメラ、次いでハッセルブラッド(66サイズ)あたりの中判カメラが使われているようだ。
では、我輩も中判カメラか。
もしそうなれば、35mmなどもはや必要無い。新品のニコンF3以外は全て売り払い、中判カメラ購入資金に充てようと考えた。
しかし、いくらなんでもハッセルブラッドなどは買えない。レンズやフィルムバックなどシステムを揃えると、数百万円が必要となる。我輩にはまず無理だ。
それならば、同じ66サイズでも「ゼンザブロニカSQ−Ai」ならかなり安い。レンズシャッターであり、ブツ撮りでは必須のストロボ撮影には最適だ。これなら、最高速500分の1秒でもストロボが使える。
とりあえず、試しということで中古の「ゼンザブロニカSQ」を手に入れ、続いて新品の「ゼンザブロニカSQ−Ai」を導入した。レンズは、ブツ撮りがメインということもあり、マクロ望遠レンズを最初に購入した。その後、風景用にと広角レンズを買い足す。
実際に撮ってみた感じは、撮影枚数が少ないということが気になる点だが、66サイズは縦と横が同じ長さの正方形画面であり、なんとなく不思議な空間を写し込める。
また、縦横を気にしなくても良いということは、ウェストレベルファインダー(カメラ上部より覗き込む形式のファインダー)が使えることを意味する。大きなペンタプリズムが必要ない。ルーペの倍率も高いため、ファインダー倍率は高い。特に広角レンズを装着した場合には、そのダイナミックな映像がそのまま確認できる。
人物を撮影した場合、ウェストレベルファインダーというのは威圧感を与えないらしい。上から覗いているスタイルが、カメラを自分に向けているという印象を与えないのだろう。
F3の交換ファインダーでウェストレベルファインダーを使った者ならば理解できると思うが、ウェストレベルファインダーを使って縦位置のフレーミングはかなり困難である。縦横を気にする状況では、ウェストレベルファインダーは使えないと思ったほうが良い。
それにしても、中判カメラというのはレンズが大きく重い。カメラ自体は35mmとさほど変わらないが、やはりガラスと金属の塊であるレンズが重いのは仕方がないのだろう。イメージサークルが大きい分、レンズも大きくならざるを得ない。
中判の他のサイズもそれぞれに利点があり、特に645ではAF機が選択肢にもなる。しかし我輩は、中判では66サイズ1本だ。あまり他のサイズに浮気すると収拾がつかなくなることが目に見えている。我輩のような面倒臭がりの完璧主義は、余計なモノに手を出さぬことが肝要。
まあ、とにかく、我輩にとって一番バランスの良い中判サイズが66というわけだ。
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ウェストレベルファインダーは、ローアングルがやりやすい。
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