2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
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カメラ雑文

[103] 2000年 8月 2日(水)
「墜落しないカメラ」

エールフランスのコンコルドの墜落事故から1週間経ったが、そのコンコルドが炎を上げて離陸する瞬間を日本人が撮影し、それを約440万円で写真の出版権を売ったという。その写真はレンズ付きフィルムで撮られたらしい。
・・・今回はこんな話をするつもりは無く、あくまで情報として書いた。


さて、例によって、長い前振りから始まる。

我輩は、コンコルドの事故が起きてから、色々な航空機事故の資料を読み返してみた。その中でも目を引いたのは、1994年4月26日、名古屋空港で起きた「中華航空墜落事故」だった。
事故を起こした機体は「エアバス社製A300−600」。操縦を全面的に自動化したハイテク旅客機である。

事故当日、中華航空140便はとても穏やかな気象のもと、名古屋空港に着陸するためにエンジン出力を順調に絞っていた。
ところが空港の直前でいきなりエンジンスロットルが全開になり、高度がグングン上がっていった。その原因は、コパイ(副操縦士)が誤って「着陸やり直しモード(GO AROUND MODE)」のスイッチを入れてしまったことによる。このスイッチを入れると、設定されたモードに従ってコンピュータが機体を上昇させ、着陸のやり直しを行うことになる。
パイロットとコパイは、上昇する機体を抑えるために操縦桿を押した。しかし、コンピュータがその操作に逆らって水平安定板を動かしたため、機体の上昇を抑えることが出来なかった。
そこでコパイは、モードを切り替えて「着陸モード」に戻そうとしたが、パネルに表示された「GO AROUND MODE」という文字をどうしても消すことが出来なかった。
仕方なく、パイロットは着陸を諦め、上昇の操作を行った。すると、機体は予想以上に機首を上に向け、高度520mという低空で制御不能に陥った。それは、「失速」したことを意味した。あまりに機首が上がりすぎたため、気流が翼を支えることが出来なくなったのだ。
「終わりだ、終わりだ(ボイスレコーダーより)」
急に無重力になるような感覚の中で、パイロットは自分たちの運命を悟った。

264名もの人命はこうして失われた。

この事故は、モードの切り替えが出来なくなり、人間がコンピュータの制御に逆らった操作をしたために起こった。
通常、「着陸やり直しモード」から直接「着陸モード」へ切り替えることはあり得ないため、そのようなモード切替は無効となる。正しい手順は、通常の飛行手順に沿って「機首方位モード」、「高度維持モード」を経由し、「着陸モード」を選ばなくてはならない。
もしこのことをパイロットたちが知っていれば、墜落事故は起こらなかった。

しかし、パイロットたちは、コンピュータが今何をしているのかが理解できず、翻弄され続けた。操縦桿を押しても、機首はどんどん上を向いてゆく。モードを切り替えようと思っても、どうしても切り替わらない。モード選択の迷路に迷い込み、なすすべを失った。

ヨーロッパのエアバス社は「自動化こそ事故を防ぐ」と主張する。それゆえ、容易に自動操縦が解除されないように設計している。それに対しアメリカの航空機メーカーでは、操縦桿を動かせば直ちに自動操縦が解除されるように設計している。コンピュータが何をやっているかが分からない以上、人間に素早くバトンタッチさせることが安全に繋がると考えている。

最終的な判断をコンピュータに任せるのか、人間に任せるのか、航空業界ではまだ結論は出ていない。


カメラの分野では、人命に関わるということがないため、人間とコンピュータとのコミュニケーションは問題にされない。パイロットのようなプロフェッショナルを相手にする航空機ならともかく、明確な目的も持たない一般コンシューマ向けの商品では、コンピュータが何をやっているかなど、人間に知らせる必要などないのだ。

その結果、フィルム感度は自動的に設定されて容易に解除出来ず、カメラに触ってもいないのにレンズが動き、思わぬ場面で自動的にストロボが光り、シャッタースピードを変えようとしても決して変わらない。いくらカメラが良い仕事をしていても、カメラが何を考えているかが分からず、つい余計なことをやって混乱に陥ってしまう。

別に自動化が悪いとは言わぬ。使い方を熟知しない人間のほうが悪いのだ。ただ、コンピュータがどういう判断のもとに行動しているのかを、人間に全く知らせてこないのは納得しかねる。もしそれがエアバスのコックピットだったら、まず間違いなく墜落となろう。
何が気にくわずに言うことを聞かないのか、万能なその液晶表示パネルでなぜ説明しない? 「カメラは墜落などしないから」と軽く考えているのか。

どのような形態になれば一番いいのか。それはまだ、無理に結論付ける段階にない。ただ、コンピュータがいまだ発展途上であることは、否定出来ない事実だ。

現代のコンピュータは、人間が完璧な存在であるということを前提にしている。