「カメラ雑文」一気読みテキストファイル[701]〜[750] テキスト形式のファイルのため、ブラウザで表示させると 改行されず、画像も表示されない。いったん自分のローカ ルディスクに保存(対象をファイルに保存)した後、あら ためて使い慣れているテキストエディタで開くとよい。 ちなみに、ウィンドウズ添付のメモ帳ごときでは、ファイ ルが大きすぎて開けないだろう。 ---------------------------------------------------- [701] 「2010年夏 九州帰省日記(事前計画)」 [702] 「2010年夏 九州帰省日記(1日目/2日目)」 [703] 「2010年夏 九州帰省日記(3日目)」 [704] 「2010年夏 九州帰省日記(4日目)」 [705] 「2010年夏 九州帰省日記(5日目/6日目)」 [706] 「RAW記録」 [707] 「イベントカメラマン物語」 [708] 「デブを見て安心するな」 [709] 報道統制 〜伝えられない出来事〜(1) [710] 報道統制 〜伝えられない出来事〜(2) [711] 「蔵王のお釜(9)-雨の蔵王」 [712] 「マイクロフォーサーズ、悩んだ末に」 [713] 「10倍ズームの威力」 [714] 「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その1)」 [715] 「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その2)」 [716] 「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その3)」 [717] 「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その4)」 [718] 「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その5)」 [719] 「PENTAXのデジタル一眼レフ導入記(その6)」 [720] 「カワセミ撮影 (想い出編)」 [721] 「カワセミ撮影 (デジタルカメラ編)」 [722] 「カワセミ撮影 (フィルムカメラ編)」 [723] 「メモ撮影にクオリティを求める真の理由」 [724] 「来るべき震災に備えて」 [725] 「震災は現実に起こったことなのか」 [726] 「生きたままでの埋葬」 [727] 「Nikon D700導入後1年の感想」 [728] 「2011年夏 九州帰省日記(事前計画)」 [729] 「2011年夏 九州帰省日記(1日目/2日目)」 [730] 「2011年夏 九州帰省日記(3日目)」 [731] 「2011年夏 九州帰省日記(4日目)」 [732] 「2011年夏 九州帰省日記(5日目)」 [733] 「2011年夏 九州帰省日記(6日目/7日目)」 [734] 「HDR画像の利用について(その1)」 [735] 「HDR画像の利用について(その2)」 [736] 「ビデオ編集が要求したパソコン性能」 [737] 「正月の買い物(準備)」 [738] 「正月の買い物(購入)」 [739] 「正月の買い物(テスト撮影と実戦投入)」 [740] 「納得出来ぬ例え話」 [741] 「D700からD800への乗り換えについて」 [742] 「カメラ写真映像ショー2012(CP+)」 [743] 「ジオフォト伊豆の旅(その1)」 [744] 「ジオフォト伊豆の旅(その2)」 [745] 「発売前のカメラを予約購入するなど・・・」 [746] 「マイクロフォーサーズでシステムを拡充(超広角レンズ編)」 [747] 「マイクロフォーサーズでシステムを拡充(超望遠レンズ編)」 [748] 「画像盗用にバルサンを焚く」 [749] 「わらしべ長者」 [750] 「人は骨を遺すために生まれて来る」 ---------------------------------------------------- [700] 2010年07月28日(水) 「Nikon D700を機軸とした再編(後編)」 我輩はクルマを運転するにあたり、燃費計算や区間走行距離、そして所要時間の把握のため、メーターパネルの撮影を都度行なう。 所有車だけでなく、運転するクルマは社有車であろうとレンタカーであろうと、とにかく写真記録を残す。給油を行えば、その伝票もその場で撮影しておく。 最初のうちは「場所」、「時間」、「ODOメーターの数値」の3つをメモ書きしていたのだが、乗車降車の度に書くのが煩わしい。時にはペンや紙片が見当たらず、なかなか発車出来ないこともあった。またメモをパソコンに入力するのを少しでも怠ると収拾がつかなくなる。 ところがこれをデジタルカメラでメモ撮影するようになると、その問題が完全に解決した。カメラでメーターパネルを撮るだけで済む。 時計や距離数値はもちろん、外の景色も写り込むことで場所の記録も出来る。それだけでなく、燃料計や外気温数値も参考になる。 撮影したものはデジタルデータであるから、とりあえずパソコンに転送しておけば紛失することも無く、撮影時間でソートすれば順番に並んでくれる。気が向いた時にテキスト集計すれば良い。 しかしながらこの撮影では、画像のクオリティはそれほど高いものを要求しないにも関わらず、カメラの動作にはデジタル一眼レフ並のレスポンスが必要となる。 コンパクトデジタルカメラを使った場合、スイッチを入れてからウィーンと電動レンズが繰り出して撮影可能状態になるまで少々時間がかかるし、シャッターが切れるタイミングもまた遅い。結果的にそれが手ブレに繋がり、何度か撮り直しとなってしまうのだ。 だから我輩は、メーターパネルのメモ撮影にもデジタル一眼レフ「D200」を使う。 クルマに乗り込んでサッとカメラを構えてサッと撮り、そしてサッと出発する。図体の大きい点を除けば、デジタル一眼レフのレスポンスの速さは、メモ用途に最適と言える。 だが今回、「D200」を売却することになった。そうなると、代わりは「D700」となる。さすがに撮影能力は高いだろうが、あの図体と重さをメモ用途に使うのは現実的ではない。 そこで新たに、軽量なデジタル一眼レフカメラが必要になった。 我輩としては、中古カメラ検索の価格順表示で筆頭に現れる「Canon EOS-Kiss Digital」の値段は魅力だった。1万5千円で800万画素のレンズキットが手に入る。 いや、どうせならば2万5千円の1,000万画素にすべきか。 待て、そこまで行くならNikonにしたほうがマウントも統一されて良かろう。 確かに理想はそうだが、肝心の金が・・・。 我輩はこの思考状態を2週間ほど延々と繰り返し、色々と思い付いてはその度に検索を続けた。 「金さえあれば、こんな問題、すぐに解決するんだろうが・・・。」 その時思い付いたのが、通勤カバンに常備している「SIGMA DP2」の売却だった。 「DP2ならば3〜4万円で売れるのではないか? そうすれば金額の縛りも緩和され、自由な発想で機種選びの幅が広がることになる。 ところがこれは、新たな問題を生み出した。 DP2を手放すことになれば、その用途も同時にカバーするよう、携帯性をより一層追求せねばならぬ。 ・・・それはつまり、「Nikon D200」と「SIGMA DP2」2つの位置付けを兼ねるカメラが必要ということだ。 これは難題でもあったが、取り組む価値のある問題とも感じた。と言うのも、フルサイズ一眼レフが加わることにより、「ハイエンド撮影」、「メモ撮影(常用)」、「携帯性」と3台体制にならざるを得なくなってしまった現状について、ここで改めて「D700」を機軸として考え直し、それ以下のカメラをゼロベースで選び直すことで最適化が実現出来る。 そういうわけで、では改めて、必要とされるカメラの検討に入ろう。 「D200」の場合、速写性が求められるメモ用途、そしてレンズ交換によるオールマイティな撮影が求められていた。 そして「DP2」の場合、常に持ち歩ける携帯性と、APSサイズのイメージセンサーによるデジタル一眼レフに負けない画質が求められていた。 これらを兼ね備えたカメラとは? 金の問題がクリアされれば、導かれる答は早かった。 ミラーレス一眼カメラの「マイクロ・フォーサーズ」がそれだ。フォーサーズ規格の派生で、ミラーが無い分、フランジバックが短くなり、カメラがより小型に出来る。 店頭で実際に手に取ってみたところ、Panasonicの「LUMIX DMC-GF1」というカメラが好印象だったのだが、"LUMIX"に対する我輩の抱くブランドイメージは最悪。 とにかく浜崎あゆみのCMのイメージが強いし、ミーハーでシロウト騙しのカメラという印象しか無い。一眼レフでもないのに擬似的なペンタ頭をデザインしたエセ一眼レフの称号が"LUMIX"である。 だが、この「LUMIX DMC-GF1」はシロウト騙しの余計な造形は無く、起動も素早い。そしてシャッターも通常のスクェア型フォーカルプレンシャッターでシャキシャキと小気味良く切れ、その感触はまさに「カメラ」と呼ぶにふさわしい。 おまけにレンズ交換式であるからオールマイティな撮影にも使えるし、パンケーキレンズを選べば携帯性にも優れる。もちろん「DP2」より大きいのは仕方ないが、カバンに常備可能な範囲である。 心配なのはAPSサイズよりも一回り小さなイメージセンサーであるが、コンパクトデジタルカメラの1/1.8インチセンサーなどと比べれば十分に大きいと言えよう。また1,200万画素のため、「D700」との足並みは揃う。 まいったな・・・これは。 ちなみに、同じ位置付けのカメラにSONYの「NEXシリーズ」もあったが、あれは何をするにもメニューから選ばなければならず、カメラとして使うには難があり過ぎる。あれこそシロウト騙しではないか。 確かに従来の概念・常識を打ち破ったという意味では評価出来ようが、あのスタイリングは一目見て気持ち悪さを感じた。これは理屈ではなく我輩の直感である。どこかヤセ我慢をしてこのような形を保っているかのようで、非常に気持ちが悪い。 我輩は結局、この「DMC-GF1」を導入することを決定した。 新品での最安値は4万円前後。さらにキャッシュバックキャンペーン中のため、結果的に3万5千円になる。 中古も探してみると、マイクロフォーサーズ自体新しい規格なため、中古品の出物があまり無い。あっても3万円台と割安感はそれほど無い。買うなら新品か。 ところがネットオークションで探したところ、レンズキットからレンズを除いた未使用ボディのみが即決価格2万5千円で出品されているではないか。ボディカラーは赤だったが、元々赤やベージュなどの暖色系が好きなため、抵抗無くそれを落札した。 DMC-GF1レッドボディ <<画像ファイルあり>> 一方、レンズは2種類必要と思われた。 「D200」の用途で使う際には標準ズームレンズ、そして「DP2」の用途で使う際には薄いパンケーキレンズ、とレンズで用途を使い分けることにする。 最初は純正のPanasonic製レンズから選ぼうと思ったが、同タイプのレンズであればOLYMPUS製レンズのほうがコンパクトだと判り、2種類ともOLYMPUS製を選んだ。同じマイクロフォーサーズ規格のレンズであるから、メーカーの異なる組合せでも使用可能なのが大きなメリット。 OLYMPUS製標準ズームレンズとパンケーキレンズ <<画像ファイルあり>> ズームレンズは「14-42mm F3.5-5.6」の中古をマップカメラで1万円ほどで購入。35mmカメラ換算24-84mmで実用に十分。 このレンズは金属マウント(単品販売用)とプラスチックマウント(レンズキット用)の2種類があるが、当然ながら中古ではプラスチックマウントのほうが安く、我輩が購入したのもプラスチックのほう。 沈胴レンズのため収納時は小さくまとまり、しかもコンパクトカメラのような電動収納ではないため、スイッチの入り切りに連動してレンズが出たり入ったりすることも無い。手でズームリングを捻らないかぎり、ビクとも動きはせぬ。これは素晴らしい。 試しにレンズが沈胴状態のままカメラのスイッチを入れてみると、「レンズを確認してください」とメッセージが出る。 (※余談ではあるが、コンパクトカメラが使いにくい理由の一つは、ズームや沈胴機構が電動だということである。手動ズームよりも動作が遅いくせに、微調整が難しい操作性の悪さ。しかも貴重な電力を消耗させ、ケースの中で誤ってスイッチが入ると無理矢理レンズを繰り出そうとしてバキバキ音を立てるのでタチが悪い。さらにはこのメカニズムが非常に華奢で壊れ易く、カメラ全体の寿命を決めてしまうアキレス腱となっている点も問題だ。) 撮影状態と沈胴状態 <<画像ファイルあり>> パンケーキレンズのほうは「17mm F2.8」の中古をネットオークションにて2万円で購入。厚さ22mmでかなり薄い。 片手でスッポリ入るのだから、携帯性は「D700」とは比べようも無い。もっとも、我輩の手の大きさは野茂投手とほぼ同じ大さではあるが。 パンケーキレンズを装着した状態ではかなりコンパクト <<画像ファイルあり>> 内蔵ストロボはやはりメモ用途には重要となる。しかもこのストロボは割と高い位置にポップアップするので、何気にマジメによく考えられている。これがあのLUMIXブランドのカメラとは驚かされる。技術云々というよりも、カメラ的思想が入っていることを感ずるのだ。我輩は業界の詳しい事情など知らぬが、どこかのカメラメーカーとの提携があるのか、あるいはカメラメーカーの設計者を引き抜いたか。 ストロボ内蔵でポップアップ位置も高い <<画像ファイルあり>> さて、ここで「D700」と並べてみたのだが、さすがにかなりの違いがある。ここまで大きさが違うと、迷い無く明確な使い分けが可能となろう。 ボディ色の違いも、キャラクターの違いが反映されているように感じられてなかなか良い。 そういうわけで、これからは、デジタルカメラはこの2台体制で行うことにする。 D700とDMC-GF1、互いに標準ズームを付けた状態の比較 <<画像ファイルあり>> なお、バッテリーについては、充電中に使えないというのは困るので、予備バッテリーを7千円で追加購入した。 いつもならば中国ROWAの互換バッテリーを買うところだが、Panasonicが最新ファームウェアで互換バッテリーを使えないよう対策してあるのでダメらしい。もし使えれば2千円だったのだが・・・。 まったく、こういう純正囲い込み商法は何とかしてもらいたい。バッテリーの安全性を保証するためであろうが、いくらなんでも7千円(これでも最安値)は高過ぎる。 まあともかく、改めて「DMC-GF1」を手に取ってみると、コンパクトなボディでもズシリと重い。電子的なカメラであることは間違いないが、なにかこう、メカニカルなものが詰まっているという印象があって写真を撮りたいと思わせるのが面白い。 近いうちに「D700」と共に試し撮りをしてみたいと思う。 ---------------------------------------------------- [702] 2010年10月06日(水) 「2010年夏 九州帰省日記(1日目)」−8月6日(金) <はじめに> これまでの帰省と同様、我輩自身が後日参考になるようにという配慮から、撮影とは直接関係無い細かいことまで記述するつもりである。そのためかなり冗長な文章で読みづらくなっているが、飛ばし読み出来るよう撮影に関する記述には黄色で着色した。 今回は新幹線での帰省のため、荷物はある区間では人力で運ばねばならない。 その負担を軽くするために、荷物の一部は宅配便で送っておこうかという話が出たのだが、荷物の収まりが悪いために発送用の箱が大きくなり過ぎ、持ち込み発送は困難となった。集配を頼もうにも、不在時に来られても困る。集配の時間指定は可能であっても時間帯に幅があり、分単位、秒単位での指定は出来ない。 あれこれ悩んでいたら結局時間切れとなったため、荷物は全て人力で運ぶしかなくなってしまった。 区間別に考えると、「自宅から最寄り駅まで」、「乗換駅でのホームの移動」、「小倉駅からレンタカー屋まで」、この3区間にて、人力での荷物移動をせねばならない。 新幹線に乗るまで3度乗り換えねばならないが、比較的歩く距離も短く、列車に乗ってしまえばその都度荷物を下ろせるのでまあ大丈夫だろう。 新幹線を降りた後は、我輩の母親が改札で待っているので多少の荷物を持ってもらえる。 問題は、自宅から最寄り駅までの区間をどうするか。 猛暑のせいで、最寄り駅までを荷物を抱えて歩くのはかなり大変であろう。最初の時点で疲れると、その後が続くまい。 そこで、駅までクルマで行くことにした。ただし我輩自身は、豚児とヘナチョコ妻と荷物を駅で降ろした後、また自宅まで戻り、クルマを置いてから駅まで歩いて行くことになる。その点は面倒だが、荷物を背負わずに歩けるのでかなりマシ。 新幹線は、東京駅10:10発の「のぞみ」に乗車予定。 余裕を見て、2時間前の8時に家を出た。クルマを駅前の脇に一時的に置き、ハザードランプを点けたまま荷物を駅まで運んで豚児とヘナチョコにはそこで待機するよう指示した。そしてクルマで家まで戻り、今度は自分の足で歩いて駅に向かう。日差しが強かったが、手ブラで歩くのは非常に楽だ。 その後、ヘナチョコたちと駅で合流し、電車に乗った。普通に歩くよりも10分くらい余計にかかったが、疲労がほとんど無いのは助かった。 行程記録としてデジタルカメラで要所要所を撮り始めたが、こういう撮影では、コンパクトで起動の早い「LUMIX GF1」は重宝する。 乗り換えも順調で、最後の東京駅では、新幹線車内で食べる駅弁を買うことにした。 しかしあらためて見ると、駅弁というのは結構高い。1,200円というビックリ価格の弁当が並んでおり困ってしまった。 駅弁の売り場は構内の幾つかの場所に分散しているので、各所廻ってみたところ、ようやく安いものを見付けた。とは言っても800円を下らないが・・・。 東京駅の駅弁売り場 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/06 09:32 駅弁購入後、新幹線改札から入ってホームへ上がった。ホームは結構暑い。 東京駅の時点から「GF1」ではなく「Nikon D700」で撮影を始めたのだが、シャッターを切った後にカードエラーが出てデータの記録が出来ないことが頻発した。 実は、「D700」の使い始めから16GBのコンパクトフラッシュメモリが不調で、フォーマットをしても度々エラーが出る。そういう時は何度もカードを入れ直すと復帰するのだが、その後はしばらく撮影可能な時もあったり、また逆にエラーが頻発する時もある。4GBのカードに替えるとエラーは出なくなるためカードの問題か? しかしその16GBのメモリカードは「Canon EOS5D Mk2」で使っていた一番新しいもので、それまで何も問題は無かったのだが・・・。 とりあえずは騙し騙し使うしかない。 新幹線車内では、少々冷房が効きすぎているように感じた。 暑いところから入ったので最初は涼しくて気持ちが良かったものの、小倉まで5時間、ジッと動かずに過ごすには少々寒い。 豚児を見ると、最初は新幹線の速さで気持ちが悪くなったのかグッタリしていたのだが、名古屋あたりで不調を乗り越えたようで、それ以降はヘラヘラ笑い出したり絡んできたりした。まあ、こういう状態は自宅ではいつものことなのだが。 新幹線車内 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/06 10:09 小倉へは14:56着。 余裕を見てレンタカーは15:30から借りることにしてある。 小倉駅の改札では我輩の母親が待っており、荷物を分けてトヨタレンタリースまで歩いて行った。歩くには少々遠いが、そこからクルマに乗れると思えば気が楽。 時間的に少々早かったが、クルマが店舗前に用意されており、事務所内に入って手続きを行なった。 手続きとは言っても、事前にウェブ上から必要項目は入力してあるので、この場ではクレジットカードと免許証の提示くらいである。 6日間の利用額が約3万8千円(ジュニアシート込み)を確認し、用紙に署名した。 用意された「トヨタ・ベルタ」は、シルバー色であった。カーナビゲーションとETCが付いているが、高速道路には乗らないのでETCは使わない予定。 乗り出しはスムーズだった。2月に「ラクティス」で慣れたせいか。 しかしブレーキの効きは自然なフィーリングに思えたし、ステアリング操作も思い通りのラインで走れるように思う。なかなか良い。 今回借りたトヨタ・ベルタ <<画像ファイルあり>> クルマで母親のマンションまで行き、近くの駐車場に停めてマンションに入った。 ここで2泊するので、荷物はとりあえず部屋に運び込んだ。 それにしても、明日から始まる「わっしょい百万夏祭り」のせいで付近のコインパーキングが満車にならないか心配になる。 そもそも、祭り当日はマンション周辺道路が車両通行禁止となるらしいので、一旦停めてしまったら今度は出られなくなってしまう。 そういうわけで、少し離れたところのコインパーキングの中から、1日最大料金の安いところをウェブで探し、今日から停めることにした。 夜、近所のマンションに温泉銭湯があるというので、行ってみることにした。近所とは言っても紫川を渡って行くのでクルマに乗った。 なかなか洒落た銭湯で、そこのマンション住人はタダで入れるという。 それにしても、皆の中で男は我輩1人なので銭湯に入ると寂しくなる。 銭湯から出た後は、またマンションに戻り、母親の作った夕食を皆で食べ、1部屋しかない狭い場所で4人で寝た。 「2010年夏 九州帰省日記(2日目)」−8月7日(土) この日の予定としては、日中は「いのちの旅博物館」と「スペースワールド」のプールへ行くことになっている。 そして夕方から夜にかけて、「わっしょい百万夏祭り」を見に行く。 位置関係 <<画像ファイルあり>> 10時少し前、我輩の母親を含め4人でクルマに乗り博物館を目指す。カメラ機材として、クルマには「New MAMIYA-6」、「Nikon D700」、「LUMIX GF1」を積んでおいた。 昼食や食料品の買出しもあるので、近くのショッピングモール「イオン」にクルマを停めた。「博物館」、「スペースワールド」、「イオン」それぞれが近くにあり、わざわざクルマで移動する距離ではない。それに、「イオン」の駐車場のほうが無料で停められる。 クルマを停めた後、まず博物館のほうに4人で歩いて行った。 去年は我輩1人で行ったこの博物館、今年も1人で行くつもりだったが、今回は他の3人も行くと言って付いて来た。 当初の予定通り、博物館展示物撮影用として、「Nikon D700」に高性能超広角ズームレンズ「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」を装着。少々重いが、荷物はこのカメラ1台だけなので身軽ではある。 天気が良く、博物館の建物自体がとても絵になる。早速、この高性能レンズで撮影してみた。 撮影した時点では確認することは出来なかったが、後日自宅で画像を確認したところ、画面の隅々までクッキリとしっかり写っていたのには感心させられた。 いのちの旅博物館 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/07 10:12 館内は常設展示と期間限定の特別展示があり、それぞれに入場料がかかる。両方入る場合はセット券を買うと割安となる。 特別展のほうは、去年は「恐竜展」だったが、今年は「昆虫展」だった。 昆虫展のほうは、日本人収集家が持っていたという昆虫標本が壁にズラリと展示されており壮観であった。 そして会場中央部には、生きているクワガタムシやコノハムシ、巨大ナナフシなどが入れられたケージが置かれており、その様子を見ることが出来る。 展示物を見たり撮影したりしていると、1人のオバさんがコノハムシのケージの前で携帯電話でなにやらピコピコやっている。最初は携帯電話で写真を撮っているのかと思ったが、何か入力をしているように見えた。ずっとそこで場所を占有しているので、我輩がそのケージを覗き込むことができない。結局、そのコノハムシは後で見ることにした。 それにしても最近はこのように周囲に配慮しない輩(やから)が目に付くようになったものだ。我輩などは、撮影中にフィルムが終わって入れ替える際には、速やかに戦線を離脱し邪魔にならぬ場所で行なっているが、そういった配慮が出来なければ、もはや人間として終わっている(意図があって敢えて他者をブロックしているのならば話は別)。 さて、撮影に関してはなかなか難易度が高い。 まず、「D700」に装着した14-24mmは焦点距離が短すぎた。いくら超高性能レンズとはいえ、昆虫標本を撮ろうと思うとかなり接近せねばならず、そうすると自分自身の影(カメラの影)が被ってくる。 そもそも、身長よりもはるかに高いところまで標本箱が掲げられているので、それらの標本では、撮影はもちろん肉眼で見ることすら難しい。 困った展示方法だな・・・。 いずれにせよ、標本の数が多いので、全てを真面目に見て行くと大変な時間がかかるし、どんな見方をすれば良いのか分らない。例えばチョウなどは似ているグループが多く集まっているが、予備知識無しに見てもその差異が分らないのだ。 というわけで、この展示は適当に流すしか無い。 ペースが合わないので、我輩は3人とは別行動とすることにした。先に特別展を出て、常設展のほうに行く。 常設展は当然ながら内容は去年と同じ。しかし今回は撮影カメラとレンズが違う。 全体の様子を撮るにはこの14-24mmは最強であるが、個別の展示物を撮るにはかなり接近せねばならない。魚や昆虫などの化石であれば、ガラスケースにレンズ先端をピッタリくっつけて撮ることになる。上から撮影する場合では、ガラスケースにカメラを下向きに置いた状態となるので非常に安定する。これは、ブレ防止として役立つばかりでなく、ガラス面反射光を排除することにも有効。 ちなみに、レンズ先端は固定フードがあるので、レンズ前玉がガラスケースに当たることは無い。 ガラス載せ撮影 <<画像ファイルあり>>※トリミング [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/07 12:04 ただし今回のデジタルカメラは、1,200万画素と去年よりも画素数が少ない。その代わりに「D700」のノイズの少なさと高性能超広角ズームレンズの描写力への期待が大きい。 しかもこのレンズは開放F値が2.8と明るく、暗い条件には強いはず。 さて、博物館を出たのは12時40分頃。 特別展を先に出た我輩であったが、最終的には我輩が3人を追う形となった。 そろそろ昼食タイム。しばらくデジタルカメラに頼ってばかりなので、昼食時には豚児写真を撮ろうと思う。そのためには制式フォーマットである66判の「New MAMIYA6」を使う必要がある。 我輩は、クルマに戻って「D700」をトランクに置き、代わりに「New MAMIYA6」とストロボを手に取った。 ところがスペアのフィルムを持ってくるのを忘れたため、このカメラに装填しているフィルムが撮り終わればもう撮影不可能。 残り枚数を見ると・・・3枚。 まあ、食事風景など、3枚もあれば十分。 昼食 <<画像ファイルあり>> [New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/07 13:00 食後、我輩1人で駐車場に戻って再びデジタルカメラ「D700」に持ち替え、スペースワールド近くで皆と合流。14時半頃スペースワールド入場口に着いた。 フリーパスチケットが大人4,200円、小学生3,150円とかなり高い。 去年は、「トワイライトパス」という16時以降入場タイプで大人3,360円、小学生2,520円で済んだのだが、今回は時間が合わないので「親子パス」と「シニアパス」というものを組み合わせて出来るだけ安くなるようにした。 それでも4人で約13,000円もした。プールに入るだけでこれだけかかるということを考えると頭がクラクラする。少しでも元を取るため、どこかのアトラクションに入りたい。 食後すぐにプールに入るのも避けたいということもあり、プールの前にアトラクションに行こうと思う。色々迷うのも面倒だったので、今回も去年と同じ3Dシアターのアトラクションに入ることにした。 とは言っても、投影内容は更新されていたので、とりあえずは楽しめた。 その後、プールのほうへ向かい、更衣室で着替えた。泳ぎ始める頃にはもう15時45分になっていた。 プール入口 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/07 15:30 プールは17時終了なので、楽しめるのは1時間半しか無いことになる。1時間半で13,000円か・・・。 もし来年プールに行く時は、少し離れるが「アドベンチャープール」のほうに行くことにしたい。そこならフリーパスでも大人1,000円、小学生700円で済む。 さて、豚児は流れるプールがお気に入りだったが、そこは去年は目が痛くて涙が止まらなかったプール(参考:雑文675)だった。その時の記憶が残っているので、水中で目を開けるのが非常に怖かったが、今年は目が痛くなるようなことは無かった。去年、あるいはたまたまその日が特別だったのだろうか。 最近になって「死ぬかと思った2」という本を読んだところ、プールに排泄物があった際に強烈な塩素殺菌をしたという事例を見付けた。まさかとは思うが・・・?  17時近くになり、プールはそろそろ閑散としてきた。しかし豚児が何度も「もうひとまわりしたい」と言うので、それに付き合っていたら本当にギリギリになってしまった。 プールから上がると、身体が重くてだるい。しかし幸いなことに、プールから上がった後も目の痛みは無い。 しかしスペースワールド自体は夏期は21時まで開園しているものの、「わっしょい百万夏祭り」を観に行きたいので、あまりノンビリも出来ない。 18時近くになり、「さてそろそろ帰るか」という雰囲気となり、クルマを停めてある「イオン」へ向かうことになった。 そう言えば、「イオン」で食料品を買うことになっていた。ならば少々時間の猶予があるだろうと考え、我輩は皆と別れて、以前から行ってみたいと思っていたスペースワールド施設内にある「宇宙博物館」に寄ることにした。 そこには幾つか宇宙機が展示してあり、まるで今年のゴールデンウィークで訪れた石川県の「コスモアイル羽咋」のようだった。 時間が遅いせいかほとんど入館者はおらず、我輩はゆっくりと見ることが出来た・・・と言いたいところだが、皆が駐車場に戻る時間を考えると、とりあえずデジタルカメラで撮ってから、後でジックリと眺めるしか無い。 宇宙博物館 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/07 18:03-18:07 撮影後、急いで駐車場に向かうのだが、園内が広いので大変。しかも出口方向がイオン側とは逆である。 それでも何とか約束の時間までには辿り着いたのだが、なかなか皆は現れない。電話したところ、クルマがどこにあるのか分らなくなったとのこと。携帯電話のバッテリーが切れそうなのであまり長く話していられず、断続的に誘導することになったが、皆と合流してそこを出たのは19時近くであった。 この日は祭り当日のため、祭り会場近くの母親のマンションへ向かう道は混雑が予想された。コインパーキングも満車になっていないか心配だ。 しかしそのような心配は杞憂に終わり、すんなりと到着、すんなりと駐車出来た。 ただ、やはりクルマを降りてマンションに近付いていくと、人の流れが祭り会場に向かっているのが良く分かる。 マンションの部屋から見ると、会場にはたくさんの人がおり、出店なども明かりを灯していた。 我輩は人混みを見ると気が滅入るのだが、祭り気分がそれを上回っているので早く行ってみたい。 マンションに戻って荷物を置き、ベランダから祭り会場のほうを見てみた。望遠レンズで覗いてみると、もうかなり盛り上がっているように見える。 マンションから祭り会場を見る <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/07 19:25 祭り会場へ向かって歩いていくと、だんだん気持ちが高ぶるのを感ずる。いわゆる"お祭り気分"というところか。 この辺りの様子は数年前とはガラリと変わってしまい、だだっ広い殺風景な公園となってしまったが、祭りの日には多くの観客を受け入れるのに都合が良い。出店もズラリと並んでいる。 例年どおり、市庁舎の部屋の明かりで「祭」の文字が現れていた。そしてその奥には小倉城。 今では想像もつかないことだが、その昔、我輩が中学生の頃までは小倉城の屋上はゲームセンターになっていた。今ではそのことを知る者は少ない。 祭り会場へ向かう <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/07 19:30 中心の大通りでは、北九州各地の祭りの山車が次々に現れた。沿道では人垣が出来ているので、我輩は豚児をおんぶして祭りの様子を見せた。もっと小さい頃ならば肩車でもしたろうが、もうさすがにそれはツライ。 こんな大規模な祭りは、九州の中でも北九州市のような都会でないとお目にはかかれない。豚児にはこんな祭りの雰囲気を感じて、夏休みの想い出の一つとしてしてもらいたい。 各地の祭りが集う <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/07 19:45-20:08 20時を過ぎて、さすがに子供の寝る時間も迫ってきたので、そろそろ夕食を食べて帰ろうと思う。 豚児に何が食べたいかを訊くと、「寿司が食べたい」と言う。エビが食べたいらしい。 そこで、近くにある回転寿司に行ってエビばかりを注文。我輩もエビ好きであるが、ここまでエビ好きとは・・・。 回転寿司 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/07 20:50 店を出た時には21時。時間が経つのが早い。 人混みの中、祭り会場を横切り、マンションに戻ってシャワーを浴び、そして狭い部屋で4人で寝た。 ---------------------------------------------------- [703] 2010年10月06日(水) 「2010年夏 九州帰省日記(3日目)」−8月8日(日) 「自然を大切に」 例えばこのような言葉を聞いた時、真っ先に思い浮かぶのが"緑"である。つまり、樹木のような植生を中心とした生態系のことである。 だが、自然というのは多様な形態があることを忘れてはならぬ。 雨が1滴も降らぬ砂漠にも、地下数百メートルもの岩盤の中にも、数百気圧もの深海底にも、それぞれに立派な生態系が形成されている。 (※特に地下岩盤中の生命圏は、過去の隕石衝突によって地上が高温の岩石蒸気で包まれた時にも、命の糸を現代まで繋ぐ重要な役割を果たした。) もちろん、自然というものは生物の営みだけの話ではない。 無生物の世界でも、その営みはとても興味深い。見えない風を風紋を通して見るかの如く、見えない自然法則をそこに見ることは重要となる。 我輩は、豚児には自然について深く考えるための素材に多く触れさせたいと思っている。 山(里山)・川・海に近い環境で育った我輩とは違い、豚児は都会暮らしである。「自然とはこういうものだ」と一方的に話しても、それを実感し納得すること出来まい。まずは、自然の様々な形態(パターン)を多く見せることで、自然について考えるための素材を持たせておくのだ。 自然地形を見せることは同時に、自然のスケール(縮尺率)を補正するための材料にもなる。 テレビや本、そしてインターネットなどのメディアからの知識は、それぞれのメディアの表現サイズに収まるようデフォルメされる。 例えば、広角レンズで広い場所を1枚の写真に収めることは、ともすればスケール感を失わせ箱庭のように見せてしまう。テレビ番組にしても、限られた放映時間の中でテンポ良く見せる編集によって気軽に秘境へ行けそうな気分にさせる。 実際にその場に行って見たり触れたりすることは、そういうデフォルメをデフォルメとして認識し、補正するための定規を作ることに役立つのだ。 今回我輩は、自然の1つの形態として石灰岩台地「平尾台」を選び、豚児を連れて行くことにした。 ここは、去年行きそびれた地でもある。 位置関係 <<画像ファイルあり>> 平尾台は、祖母の住む京都郡(みやこぐん)の実家に近い。 だから、京都郡の実家を拠点にして平尾台へ行けば一番良いのだろうが、この日は「わっしょい百万夏祭り」の2日目があるため、小倉に戻る必要がある。 だが、小倉の1DKの狭いマンションで3連泊するのも大変だと思ったので、祭の花火を観た後は、少々遅くなるものの京都郡の実家に行って泊まる予定。 それにしても、快晴続きで暑さが心配になる。前回も暑さで断念した平尾台行きだっただけに、あまり無理な行程は避けねばならぬ。 この日は、9時過ぎにヘナチョコ妻と豚児と我輩の3人で出発。 小倉から南下し、九十九折りの山道を登り、1時間弱で吹上峠駐車場に到着。 いつもならば道向かいにある「大平山(おおへらやま)」まで登って平尾台全体を見渡すのだが、子供連れでは大変であろうと考え、駐車場脇にある低い「馬ノ背台」のほうに登ることにした。この山の向こうには石灰石を採掘する鉱山があり、山を登る途中で立入り禁止のフェンスに行き当たるのだが、そこからでも大平山の眺めだけでなく麓の町が見下ろせるので景色は悪くない。 麓の町を見下ろす <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:01 一般観光客は来ないような場所だが、ノンビリと草や虫を観察するための手始めとしてはちょうど良い。 我輩は豚児に、植物の葉の裏に何かの虫の卵が無数に産み付けられているのを示し、「注意深く見ることで、同じ景色でも世界が変わる」ということを体験させてみた。 馬ノ背台への道 <<画像ファイルあり>> [New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/08 09:58 立入り禁止フェンスまで到達し一息ついたところで、今度は地面の話をしよう。 赤土の間から顔を覗かせている白い岩石を指差し、ここら一帯がこのような白い石で形成されていることを豚児に説明した。周囲の赤土は、白い石が溶けたり崩れたりして作られたということも。 豚児は「ふーん」という感じで明らかに興味が無さそうだったが、それはそれで良い。 馬ノ背台 <<画像ファイルあり>> [New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/08 10:09 豚児に、「洞窟に行ってみるか?」と訊いてみたところ、「行きたい!」と言ったので、鍾乳洞に連れて行くことにした。 だが、どこに連れて行こう? 「千仏鍾乳洞(せんぶつしょうにゅうどう)」は、我輩だけでも大変だったことを思うと、とても今回連れて行く気にはなれない(参考:雑文294)。 あそこは距離が長いだけでなく、入場者が多いせいで気が休まらない。後ろからはせっつかれるし、狭い場所ではスレ違いもつらい。場合によっては対向の相手を待たせて歩くこともあり、とても自分のペースで歩くのは不可能(たまたまその時その時間そうだっただけという可能性もあるが)。 そもそも、夏休みはクルマの列が出来ているほどであるから、鍾乳洞に入る前から気が滅入るだろう。 「目白洞」というのもあったが、入り口脇に展示してある鉱山ダンプカーのタイヤが物々しく、千仏鍾乳洞ほどではないにせよ、何か大変そうな印象を受ける。 しかしこれはあくまでも印象の問題であるから、思い切って行ってみるか。 クルマに乗って目白洞を目指すが、ちょっと行くと「牡鹿洞(おじかどう)」の看板が見えた。 「そういえばそういう洞窟もあったな、少々マイナーな存在だと思ったが・・・。」 クルマの速度を少し落としてちょっと考えたが、方向を変えて牡鹿洞のほうに行くことに決めた。マイナーな洞窟のほうが、狭い空間で他者に惑わされることなくマイペースに満喫出来よう。 駐車場と思われる原っぱには、何台かクルマが停まっている。それなりに入洞者が来ているものと思った。 しかしどうも変だ。クルマを停めてよく見ると、いわゆるノスタルジックカー(レトロカーとまでは言えない微妙な年代のクルマ)に分類されるものばかり。入洞者のクルマではないのだろうか。 クルマを降りて、入り口と思われる建物のほうへ向かう。 洞窟の中はストロボ無しでは撮影不可能であるし、ストロボを使ったとしてもフィルム撮影は露出設定が面倒。ここはフィルム撮影はスッパリと諦め、フルオートで撮れるデジタル撮影1本で臨むことにした。光の届かぬ奥のほうでも、パソコンレタッチでどうにでもなろう。 歩いて行くと建物の端のほうに入洞券売り場があり、そこで券を買って下り階段を降りて行く。 最初は分らなかったが、周囲の景色を見ているとどうやら大きなドリーネの中に入って行くらしい。 牡鹿洞入口 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:32 しばらく下ると、ドリーネの底と思われる場所に行き着いた。 そこから上を見上げると、まさにスリ鉢状になっているのが分った。 近くに、ポッカリと口を開けた洞窟入り口が見えている。覗き込むと、穴は垂直に開いており、底のほうまでビルの非常階段のような簡易な鉄階段が伸びていた。 高さで少々身がすくむが、階段の手摺りが高いので、どう間違っても転落することはあるまい。 階段を降り始めるとすぐに肌寒くなり、豚児とヘナチョコ妻は急いで上着を着た。まだ陽の差す場所なのにこの冷たい空気には驚いた。縦穴洞窟の特徴なのだろうか。 この時点でもう空気が冷たい <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:38 下に降りる途中で1組の入洞者と擦れ違ったが、穴の底には誰もいなかった。 底から見上げると、見事な縦穴であることが分る。 底から見上げる <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:41 見回すと、そこから小さな洞窟が斜め下に続いている。足元は階段が作られており上り下りし易くなっていた。 しばらく階段を下りていったが、あまり変化が無い。水流でもあれば面白いのだが、まあ、途中で引き返すか。 しかしなかなか引き返そうと思うきっかけが掴めず、「あと少し、もうちょっと先」と進んで行くうちに、水の流れる音が聞こえてきたので、さらに降りていくと、ついに水流に行き当たった。 ただし水流とは言っても、千仏鍾乳洞のように通路全体が水に浸っているのではなく、道の脇に用水路が通っているかのようになっていた。 豚児には、「このような水流が洞窟を作ったんだ」というもっともらしい説明をしておいた。 それにしても、誰も人がいないな・・・。 水流が脇を流れる <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:53 さて、水流に行き当たったことにより、これまでの単調さに変化が加わり、もう少し先へ行ってみる気になった。 しばらく行くと、急な下り階段に行き当たった。どこまで下るのか分らないので、もうここら辺で引き返そうかと思っていると、1組の中年夫婦らしき入洞者が上がってきた。どうやら何かを見てきたようだったので、我々も降りてみることにした。 急な下り階段 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:54 降りていくと、間もなく別の比較的大きな水流に行き当たった。 その様子は、ちょっとした探検隊気分が味わえる雰囲気。その先はまだ続いているように見えるが、もはや人間が入れる坑ではない。 ここで行き止まり <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 10:57 その後は来た道を引き返し、途中にあった分岐点を行ってみたり、動物の骨が見付かったと言われる窪みにも行ったりして、最初に降りた縦穴の鉄階段を上った。 階段を上がって行くと、ムッとした蒸し暑い重い空気に触れた。見ると、カメラのレンズが思いきり曇っていた。これでは撮影出来ないので、ティッシュペーパーで拭いてみたが、すぐまた曇る。レンズの温度が低いから、湿った空気が触れると結露するのだ。 ならば、レンズの温度を上げるしかない。 我輩はティッシュペーパーをレンズに当てたまま、手の温度をレンズに伝えてみた。確かに、レンズがヒンヤリ冷たい。しばらく暖めてみたが、撮影に支障無いくらいになるまでにはしばらくかかった。 駐車場に戻ったのは11時半頃。 そろそろ食事するところを探そうと思い、クルマに乗ってカーナビゲーションシステムの検索機能から付近のレストランを探してみた。すると意外にもすぐ近くにあるようだったが、そこまでクルマを出してみると、普通の住居のような、しかしメニューの看板は出ているし、どうしたものかと判断を迷い、結局は通り過ぎてしまった。 まあ、食事するところがどこにも無ければ、最近出来た「平尾台自然の郷」という観光施設のレストランへ行けば良かろう。ただ、この施設はイナカにあるくせに駐車場が有料なのが唯一の難点・・・。 我輩の頼りない記憶では、確か、「平尾台自然観察センター」のそばに大衆食堂があったように思う。その店のチェックを兼ねて、センターのほうへ行ってみることにした。 駐車場はクルマで満杯状態だったが、1台分の空きを見付けて素早く停めた。クルマを降りてみると、奥のほうにも広い駐車場があったのが見えた。そう言えば、以前1人で来た時はそっちのほうにクルマを停めたことを思い出した。 平尾台自然観察センター <<画像ファイルあり>>(※出てきた時に撮影) [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 12:53 さて、センター近くの店だが、見ると食堂ではなくただの商店だった。我輩の記憶違いのようだ。 仕方無いので、センターへ入ってトイレ休憩。ここは小ぢんまりとした中庭があって面白い。 トイレに行った後、平尾台に関する展示ルームへ行った。ここは観覧無料なので気楽に入れる。もっとも、展示物は小規模ではある。 ちなみに、入り口近くにはキノコに関する写真がたくさん展示されていた。以前来た時は昆虫の写真だったような気がする。これは企画展示のようなものか。 その後、中庭の見えるところに戻り、自然に関する図書コーナーで本を読んでしばらく過ごした。 自然に関する図書コーナー <<画像ファイルあり>>(※トリミング) [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 12:47 そろそろ腹も減ったので、「平尾台自然の郷」へ行こうということになった。 そこはクルマで5分程度の場所。最初に訪れた「馬ノ背台」の方向で、近くには石灰石の鉱山がある。少々坂を登ったところにあり、平尾台一帯が見渡せる眺めの良い立地である。駐車場代は1回300円のようだ。 この施設内へ入る際には回転式ゲートがあり、脇にはチケット販売所のようなところも見えたが、入場無料という貼り紙があった。もしかしたら、開設当初は有料だったのかも知れない。 見取り図からレストランの位置を確認。こういう観光地的な施設のレストランは、恐らく値段ばかり高くて美味くないはず。やはり先ほどの普通の住居のレストランにすれば良かったかと少し思った。 平尾台自然の郷 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 13:08 レストランは、好きなものを取って盛るという、いわゆるバイキング形式となっていた。1グラム1.5円の量り売りなっているのが面白い。 問題は料理の内容だが、これがまた、素朴で堅実な料理が多く、見るからに美味そう。この文章を書いている今でも、思い出すだけで唾液が出てくるほど。あれもこれも食べたい。しかし一度に喰える量は限られているので、なるべく少量多品種になるよう盛りつけた。 そして、レジで電子計量器に載せて重さを量ってもらい、重さが金額に変換される。当然ではあるが、トレーの重さは除外されるようになっているとのこと。 派手なメニューは無いが味は格別 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 13:13 派手なメニューは無いが味は格別 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 13:23 食後、満腹にはなったが、それでもまだまだ食べたい気持ちが治まらない。派手なメニューが無いのにこれほどまで美味いバイキングも初めて。好みの問題もあろうが、我輩はこの料理のためだけに次の帰省時にもまた平尾台へ来ても良いと思った。 次に来る時、今回と同じレベルの料理が出ることを願うばかり。 14時前、レストランを出て辺りを見渡すと、「キタポッポ」という汽車に似せた連結車両がやってきた。 歩く速度と大差無いので、別に乗る必要など無いと思ったのだが、豚児が妙に乗りたがったので、仕方無く乗ることにした。運賃は1人100円。まあ、それくらいの値段なら、一回りして戻って来るには良いか。 キタポッポ <<画像ファイルあり>>(※帰り際に撮影) [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 15:02 直射日光が暑いので、そういう意味では日よけ代わりにこの乗り物は良い。 しばらく乗って折り返し地点に到着した時、豚児が「ここで降りたい」と言い出した。見ると、先のほうにアスレチック的な遊び場が見えた。そこに行きたいとのこと。 ここで降りてしまうと、帰りに「キタポッポ」に乗る時にまた1人100円かかってしまう。それだけあればソフトクリームが買えてしまう。 どうせヘナチョコだからアスレチック的な遊び場など無理だろうと思ったのだが、豚児はどうしてもアスレチックに行きたいようで、結局そこで途中下車することになった。 この暑い中、豚児は走って遊び場へ行く。 子供が元気なのはあるべき姿だとは思うが、やはり夏の暑さは殺人的で少々心配になる。 ちなみに、今年の夏は例年を越える異常な暑さだというが、我輩の感覚では例年の夏でも暑さの限界を越えているため、その違いを認識出来ない。 アスレチックの近くには、平尾台を一望出来る展望所があったので、我輩はそこからパノラマ的にデジタル写真を撮ってみた。大平山も良く見える。麓から見るとすぐに登れそうな山だが、横から見るとピークまでの距離が意外に長く感ずる。 (下に掲載した写真では、左側が吹上峠駐車場の方角となる。吹上峠から見ると手前側のふくらみしか見えない。) 展望所から望む大平山(おおへらやま) <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 14:22 見ると、千仏鍾乳洞へ続く道にクルマが列をなしているのが見えた。2001年に千仏鍾乳洞に行った時にもあのような状態だったが、いまだにその人気は衰えていないようだ。 しかしこんな田舎でこれほど渋滞となるのは信じられん。 何にせよ、千仏鍾乳洞ではなく牡鹿洞のほうにしておいて良かった。 千仏鍾乳洞へ続く道 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 14:23 また東側に目を移すと、山の間に市街地が見えたので、120mm側目一杯に拡大して撮影した。 景観案内掲示によれば、そこは行橋市街らしい。思ったよりも間近に見えるのが驚く。 行橋市街が見えた <<画像ファイルあり>>(※トリミング) [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 14:23 後日、写真を拡大して見ていったところ、3年前に祖父が入院していた病院(参考:雑文608)や、航空自衛隊築城基地の滑走路や格納庫なども確認出来た。ちなみに、ここからは見えないが基地滑走路の延長線上には実家があるはず。そして海の向こうに見えるのは、大分県の国東半島の根本部分だと判った。 全てが近くに見えることに、あらためて驚かされた。 これは、遠景ほど圧縮して見える、いわゆる"圧縮効果"と呼ばれる遠近感の成せる業。 遠近感というものは、相対的な距離の関係で表現されるものであるから、レンズの焦点距離で変わることは無い(参考:雑文267「年の差」)。その証拠に、トリミングをすれば、120mmで撮ったものでも上に掲載した写真のように超望遠レンズの圧縮効果が得られる。 15時半、暑さで疲れたこともあり、もうそろそろクルマに戻っても良い頃だと思った。 豚児は結構元気に遊びまわっていたが、「小倉んばあちゃんちに戻って祭と花火を見らんとな」と説得した。 「キタポッポ」はまだ来ていなかったし、金ももったいないので、歩いて戻ることにした。浮いた金でソフトクリームを食べたいということもある。ソフトクリームの一般的な相場は250円くらいか。 アスレチック近くの売店に行ってみるとソフトクリームの看板があったが、値段が300円なので諦めた。レストラン近くに戻れば、250円くらいのものがあるはず。もしそこでも同じように300円ならばジュースにしよう。 我々はテクテクと歩いて戻った。日差しが強いので、それほど距離が離れていないにも関わらず疲れた。 果たして我輩の予想通り、そこには250円のソフトクリームがあったので、さっそくそれを買って休憩所で食べた。 その後駐車場に戻り、「平尾台自然の郷」を後にした。 本来ならば、行橋方面へ出て、距離の近い祖母のいる京都郡の実家へ戻りたいところ。しかし小倉の「わっしょい百万夏祭り」は夏のイベントとしては大きなもの。豚児の夏の想い出に、「九州に来たんだぞ」という強い体験をさせる意味では極めて重要。 小倉の母親のマンション近くのコインパーキングへ到着したのは、およそ1時間後の16時半。 振り返ると、ちょうど平尾台の採石場が見えていた。左は住友セメントの採掘場、そして右は三菱マテリアル採掘場となっている(参考:雑文293)。 これも、遠景の圧縮効果が効いている。 小倉から見る平尾台の採石場 <<画像ファイルあり>> (※トリミング) [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 16:30 ちなみに、この写真の左端から撮った写真が、本雑文の1枚目に掲載した写真ということになる。 また逆に、その1枚目の写真を見れば、地平線の右端のほうに小倉市街地が写っている。 さて、まだ花火大会には間があるが、マンションに戻って食事をし、テレビを観ながら花火が打ち上がるのを待っていた。 花火の打ち上げはマンションに隣接する勝山公園で行なわれるため、この一帯は人の出入りが出来なくなる。まさに戒厳令が布(し)かれた状態になるのだ。 だから我々は、マンションのベランダから花火を眺めることとした。 20時半頃、花火の炸裂音が聞こえ始めたのでベランダに出た。 せっかくなので、花火を写真に撮っておこう。あまり花火を撮る機会も無いのでどのように撮れば良いか分からないが、普通に考えればスローシャッターというところだろう。デジタルカメラでは、画面を見ながら露出の微調整をすれば失敗せずに撮れるのが良い。 ベランダからは、花火が打ち上がる公園も見えるので、スローシャッターで撮影すると、光跡の一部始終が1フレーム中に写り込むのが面白い。 マンションのベランダから見る花火 <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/08 20:55 ただ、三脚が無いのでカメラの固定には難儀した。とは言っても、もし三脚があったとしても手スリから離れてしまうので使い所は無かったろう。手スリや天井が写り込まないようにするには、手スリの上に乗せるようにして撮らねばならない。ただ、手スリ部分はコンクリートなのでカメラにキズが付かないかが気になる。 当初は「Nikon D700」で撮影していたのだが、数枚撮っていたらバッテリーが切れてしまった。スペアバッテリーはクルマのトランクに置いてきていたのでどうにもならぬ。 急いで「Panasonic DMC-GF1」に替え、撮影を続行した。 最近の花火はコンピュータ制御で打ち上げをコントロールしていると聞くが、確かにそれくらいでなければこれほど立て続けに打ち上げも難しかろう。 確かに、ここから見ると打ち上げの現場には人影が全く確認出来ない。安全な場所に退避しているのだろうか。 花火が派手に打ち上がる時には、観客のいる方向から歓声が上がるのが聞こえる。下界からだと、ビルの合間やその上に花火が上がっているのが見えていることだろう。祭の雰囲気の中、大勢で観る花火もまた趣があろうが、ゆったりと間近で見上げる花火は、優越感があってそれはそれでまた良い。 ただしこの優越感も、今回が最後。来年にはマンションが取り壊されることが決まっている。 ふと見れば、眼下のビル屋上には、ワイシャツ姿の会社員と見られる者が数人出てきて花火を見物していた。他のマンションを見れば、それぞれにベランダから花火を観ていた。 花火を鑑賞する近隣住民 <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/08 20:33-20:38 こういう風景を写真に撮れれば面白いだろう。出来るならば見物人と花火とを同フレームで撮りたいものだが、「GF1」の広角では入りきれないので撮りようが無い。 花火は、21時頃に終了した。30分間というところ。 こうやってみると時間は短いようにも思うが、連続打ち上げや同時打ち上げの迫力で時間を忘れさせられ、体感的には1時間くらい観ていたような気持ちだった。 さて、これから京都郡の実家へ帰る予定なのだが、やはり時間も遅いし、祭が終わった後の混雑も予想されるので、ここはもう1泊、小倉に泊まることとした。 ---------------------------------------------------- [704] 2010年10月06日(水) 「2010年夏 九州帰省日記(4日目)」−8月9日(月) この日は主に、「叔母さんとの昼食会」と「源じいの森温泉」の2つが予定に入っている。 祖父が亡くなった後なので、祖母の気分転換のためにも、近場ではあるが一緒に温泉に行くのも旅行気分で良いのではないかと考えた。 <位置関係> <<画像ファイルあり>> 9時頃、母親を含めた4人で小倉のマンションを出発。京都郡(みやこぐん)へ向けて南下する。 途中、ショッピングモール「ゆめタウン」で食料品を買い、実家に到着したのは11時過ぎだった。 今年2月に他界した祖父の遺影に線香をあげ、皆で手を合わせて無事に着いたことを報告。 祖父の死については、豚児はあまり実感が無いようであった。葬儀に出席していないので当然と言えば当然。 くつろいだのは、最近リフォームした応接室。エアコンも新しいものが付いている。 ここは戦闘機が真上を飛び爆音が轟く地域のため、防衛省からの補助金が出るはず・・・なのだが、リフォームの際にうっかり防音材を撤去してしまったため、補助金支給の条件を満たさなくなってしまい、自腹でエアコンを取り付けたという。 <実家に到着> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/09 11:31 最近、沖縄の普天間米軍基地を築城へ移すかどうかというバカげた話があるだけに、防音材を撤去して大丈夫なのかとその点が心配になる。年寄りは爆音など大丈夫なのか? もっとも、小さい頃からそういう爆音には慣れていると、ほとんどセミの鳴き声程度にしか気にならなくなるものだが、ただそうは言っても、音が響いている間は会話が出来なくなってしまうのは不便。 さて、叔母さんが食事に招待してくれているので、実家に着いたばかりだったが12時頃にまた出た。 叔母さんの家に寄って叔母さんをクルマに乗せ、叔母さんの道案内でクルマを進めた。八景山という小さな丘を切り崩して作られたニュータウンの中にあるらしい。 目的の店には、12時半に到着。 小ぢんまりとして落ち着いた雰囲気のあるところだ。田舎なので静かということもあるが。 <店に到着> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/09 12:29 毎度の事ながら、叔母さんの招待してくれる店はこじゃれた感じで、恐らくこういう機会が無ければほとんど縁の無いような料理が出てくる。 値段も相当なものかと思うのだが、金の話をするのも野暮であろうし、そもそも聞くのが怖い。 我輩がいつも会社に持っていく弁当の原価がおよそ150円なだけに、その落差たるや凄かろう。 <料理> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/09 12:30-14:03 ちなみに、「Panasonic DMC-GF1」を持ってきたので、それを使って料理を一つ一つ撮影した。 このカメラは外見上はコンパクトカメラそのものなので、周囲に威圧感を与えないのが良い。しかも赤色ボディ。 もしこれが黒ボディの一眼レフカメラならば、いくら小さくとも、その場にそぐわない存在となったであろう。 一眼レフカメラを持ち込むことが躊躇される場面では、GF1のようなカメラは重宝する。 レンズを選べば呆れるほどの接写が可能となるので、撮影の自由度は一眼レフカメラと変わらないのが嬉しい。 ただ、GF1はフォーカルプレーンシャッターの音が「シャキン!」と甲高いので、外見とのギャップが大きい気がする。また、コンパクトデジタルカメラよりも画質が良いとは言うものの、やはりAPSサイズのイメージセンサー以上の画質があればなあと思うこともしばしば。 まあ、上級と比較すればキリが無く、並のコンパクトカメラの画質と比べればマシだと割り切るしか無かろう。 さて食事中、突然の豪雨で周囲が「ドォー!」という音に襲われた。まるで滝のよう。 夏に良くある"夕立ち"の風景のようにも見えるが、昼間に降るとなれば"夕立ち"という感じもしない。最近は少々気候が変化し"南国のスコール"に近くなってきたのだろうか。 しかし食事時間が長かったこともあり、店を出る14時半頃には雨はすっかりやんでいた。 駐車場に戻ってみると、クルマの上に数多くの竹の葉が散っている。見上げると、クルマに覆いかぶさるように背後の竹林から枝が伸びていた。恐らく、先ほどの豪雨で竹の葉が叩きつけられたのだろう。クルマのボディに竹の葉が雨で張り付いていて、取るのに難儀した。 叔母さんの家に寄ってしばらく談笑。 その際、祖母を「源じいの森温泉」に誘う計画を話をしてみたところ、「どうやかね、ばあちゃんっち温泉好かんやろうけんねぇ〜(訳:どうだろうね、ばあちゃんって温泉は好きじゃないだろうからねぇ〜)」という反応が返ってきた。 年寄りというのは温泉が好きなものだと思っていたが・・・。 そして15時半ごろ実家に戻った。 戻ってすぐまた空が暗くなったかと思うと、また激しい雨が降り出しカミナリが鳴った。これくらいの時間になれば、立派な"夕立ち"と言える。 それにしてもこういう風景は印象に残るものであるから、子供時代の夏休みの風景と重なって懐かしく思い、思わず写真を撮ってしまった。雨の激しさを表現するためにシャッタースピードを調節するのだが、デジタルカメラのモニタ画面を見ながら調節するクセが付いてしまい、経験による一発決めをしなくなったのは良くない傾向。 次はなるべく、自分の意思で1つのシャッタースピードを選択したい。 <夕立ち> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/09 15:50 夕方は、「源じいの森」へ行って温泉に入る予定。 一緒に温泉に行こうかと祖母に提案してみたが、即座に「温泉っち好かんっちゃ〜!(訳:温泉って好きじゃないわ〜!)」と否定。まあ、ハッキリしていて分り易いと言えば分り易い。 仕方無いので、母親を含めた4人でクルマに乗り、17時頃出発した。 「源じいの森」へは30分で到着。 しばらく休憩室で涼んだ後、温泉に行ったのだが、男は我輩一人なので寂しい。 <温泉> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/09 17:22 風呂から上がった後、食事をするためにレストランへ。時間は19時半になっていた。 食べたいメニューは色々あり、「とんかつ定食」にするか、あるいは「ちゃんぽん」にするかを迷ったが、結局後者にした。 <ちゃんぽん> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/09 19:50 家路についたのは20時過ぎ。 温泉と食事で気持ちが緩やかになったものの、我輩はこれから運転せねばならないので、最後に気を引き締めてハンドルを握る。 <夜の運転> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/09 20:44 夜の田舎道は本当に暗い。T字路では、道を知らなければそのまま突っ込んでもおかしくないほど。当然ながら、ヘッドライトは上向きがデフォルトである。この時間になると、対向車すら1台も無い。 行きと同じように、帰りも30分後に家へ着いた。 ---------------------------------------------------- [705] 2010年10月06日(水) 「2010年夏 九州帰省日記(5日目)」−8月10日(火) 中学時代の夏休み、当時入っていた科学部のメンバーでキャンプへ行くことになった。 聞けば、そのキャンプ場は川沿いにあり、そこに小さな滝もあるらしい。 引率として、科学部の顧問教師と生活指導の教師の2人が同行し、科学部の5人のメンバーと合わせて計7人。西鉄バス終点のまだ先のほうの山奥なので、2台の乗用車に分乗して行った(顧問教師はスズキ・フロンテ、生活指導教師は日産・バイオレット)。 テントで一泊するということで、我輩は寝袋を買ってキャンプ場へ持ち込んだ。 キャンプ場の近くの川は、見たところ巨大な一枚岩の上を流れているように思った。ちょうど、岩に溝が掘られてそこを流れているかのよう。不思議な川だ。 この日は川で遊んだ後、飯ごうで自炊して夕食の支度をする予定であった。 川遊びの途中、我輩は休憩のために河原に張ったテントの中に入って「Canon AE-1プログラム」のカタログを眺めていた。 近くにいた生活指導の教師が「なん、おまえカメラ好きなんか。」と聞いた。 その時、川のほうから悲鳴が聞こえた。 急いで行ってみると、科学部メンバーの1人が尻モチをついて苦しんでいた。今となっては誰だったか覚えていないが、確か、この春に入学した新入生だったかと記憶している。 一緒にいた者によれば、岩で足を滑らせ転んでしまったとのこと。一枚岩のような地面ゆえに足を強打してしまい、どうにも立てないようだ。外傷は無いので出血していないのが救いか。 いくら川遊びに慣れた田舎の中学生でも、川床(かわどこ)が一枚岩というのは不慣れであったのかも知れぬ。 その痛がりかたが尋常ではないことから、生活指導の教師が「これからふもとに下りて病院へ連れて行く」と言った。 メンバーが1人減ってしまうが、しょうがない。 ところが生活指導の教師は、新入生を抱えながら周りを見渡し、そして我輩と目が合った。 「おい、一緒に来い。」 そう言うと、我輩も一緒にクルマに乗せられてしまった。この中で我輩が一番体格が良かったため補助として任命されたようだ。 3人を乗せたバイオレットは猛スピードで山を下り始めた。エンジンが唸っている。 助手席からメーターをチラリと見ると、瞬間的ではあるが100km/hくらい出しているようだ。山道のため見通しが悪く、ちょっとスピードを出すだけでも怖いのに、この教師は何を考えているんだ。激しい痛みがあるとはいえ、単に足の怪我であるし、出血しているわけでもない。一刻を争わねばならぬようには思えない。対向車が急に現れて正面衝突したり、谷底へ落ちたりなどすれば、それこそ命も危ないぞ・・・。 しかし幸運にも事故に遭わず、信じられないほどの短時間でふもとに達した。 病院へは、我輩の家の前を通り過ぎて隣町へ行く必要があるのだが、どうしたことか「家に帰ってろ」と家の前で降ろされ、バイオレットはそのまま隣町へ走り去った。 我輩はポカーンとしていたが、ふと気付くと自分が体操服でハダシのままであることに気付いた。 結局、我輩は何のために同乗したのだ? どうしようもないので家に戻ったのだが、今そこにいるはずのない我輩がハダシで帰ってきたものだから家族も驚いた。 後日聞いたところでは、新入生は足の骨にヒビが入っていたとのこと。 そして残りのメンバーは、あの後キャンプを楽しんだという。 結局使うことの無かった真新しい寝袋が家に届けられたのだが、いつか別の機会に使おうと思いつつ、社会人になる頃にはもはやそれはどこかに消えていた・・・。 <忌まわしき日産・バイオレット> <<画像ファイルあり>> [Canon AE-1/100-300mm] 1982? 以上、長い想い出話だったが、夏が来ればいつも想い出すエピソードなので、いつかは文章にまとめておきたいと思っていたことである。 さて、この日はまず父方の祖母に会いに行こうと思っていた。 近所で暮らしている父親に連絡を取ると、この日はデイサービスに行っているはずなので、クルマで一緒にその病院に行くことになった。 また午後からは、豚児に夏休みの自然を感じさせるために蛇渕(じゃぶち)キャンプ場へ行くことにしている。このキャンプ場こそ、冒頭に書いたエピソードのキャンプ場に他ならない。 <位置関係> <<画像ファイルあり>> 9時半の約束で父親のマンションへ行き、そこから父親をピックアップして病院へ向かう。 途中、知り合いの童話書店に寄り、父親が豚児に本を買ってやった。豚児は、今小学生の間で流行っている「怪談レストラン」というのも欲しいようだったので、それも追加した。 <童話書店> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/10 10:02 病院へは10時半頃に到着。 病院の介護室へ行くと、祖母がいて我々の突然の訪問に驚いていた。 祖母は周りの老人たちに我々を紹介した。 「こっちが息子、そんでこっちが孫、んでこれが曾孫やわ。ようー来たっちゃー。」 「息子」とは、つまり我輩の父親のことだが、ここで紹介しているということは、地元にいてもあまりここに顔を出していないのだろうか? さもありなん。 談話コーナーに腰掛けて話をして過ごしたのだが、やはり豚児の成長に驚いている様子だった。 それにしても、先日他界した母方の祖父(参考:雑文687)と同い年であるから93歳か。足腰は弱っているものの、ボケも無くとても元気で気力が強い。昔の閉鎖的な田舎でありながらも、女手一つで6人もの子供を育て上げたのだから、強い心は持っているのだろう。 帰り際、息子以外の皆と握手をした。その手に、強い力を感じた。そしてエレベータの窓越しに、感極まった表情で我々に手を合わせて「ありがとなぁ〜。」と言って見送ってくれた。 病院を出たのは11時15分。 <別れ際の握手> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/10 11:15 もうそろそろ昼食の時間か。 母方の祖父の他界時に帰省した折、母親と叔母さんと行ったうどん屋が近くにあるので、そこにするかと提案してみたところ、父親は「そこのうどんは固くてマズイ」と言う。 確かに、讃岐うどんのようにコシの強い印象があった。 あらためて考えると、我輩も、小さい頃は柔らかいうどんしか食べたことが無い。 九州全体の傾向なのかは知らないが、少なくとも北九州近辺の人間は、固いうどんは好まないようだ。ほとんど噛まずにツユと一緒に飲み込む。だから、コシのあるうどんを食べると「腹ン中でゴロゴロして好かんっちゃ」ということになる。 この柔らかさは、割り箸でちょっと混ぜただけでうどんの欠片がツユの中に舞うほど。それがまた、うどんらしくて好きなのだ。 讃岐うどんがダメならば・・・ということで、近くの「ゆめタウン」というショッピングモールのレストラン街へ。 我輩の父親は豚児に「好きなもん選べ」と言っていたが、豚児が「寿司食べたい」と言うと少し動揺して「他にも色々あるぞ」と他に目を向けさせようとした。 そこにあった回転寿司店を見ると、「1皿90円キャンペーン」をやっていたので結局寿司を食べることにした。 父親はどう見てもそわそわしている。そして「1皿90円か・・・高いのう・・・。」と言っている。普通は100円はするぞ。相場を知らないところを見ると、回転寿司は初めてなのか? この店は、回転しているベルトコンベアとは別に、注文したものを直行で送り届けてくれるミニレールもあった。父親はそれを見て、「ほーお・・・。」と目をパチクリしていた。 反応があまりに田舎者過ぎる・・・。 慣れていないのなら普通の食堂のように注文しようかと思って皆にメニューを渡した。父親は「お・・・、おお。」と我に返ってメニューを受け取ったものの、ジーっとメニューを睨んだ挙句、寿司とは関係ないものを2品くらい言っただけで、結局あまり食べなかった。 <回転寿司> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/10 12:03 食後、父親を家まで送り届けて別れ、近くにある町役場へ向かい、駐車場に停めてトイレ休憩を取った。 我輩は、豚児とヘナチョコ妻を待ちながら父親のことを少し考えていた。 まだ両親が離婚していない時代、つまり我輩が幼かった頃は、父親は厳しく怖い存在だった。ちょっとでも意気地が無いとすぐにハタかれて泣いたものだ。たくましく育てようとする意味での愛情があったのだろうが、我輩にとってはただ怖いだけであった。 また、父親の所属する政党の選挙運動に同行した記憶もあるのだが、そういう活動に接して、幼心に「父親というのは難しいことを考え、難しいことを実行しているのだなぁ」と思ったものだ。 幼児の頃だけに反抗・反論したとしても勝てるはずもなく、なるべく父親と接しないようにしていたわけだが、そういうわけで別居後も会いたいという気持ちなどは無かった。 だが今は、そんな感覚は全く無い。 相対的に、父親の位置が下がっているように感ずるのだ。それが少し、寂しくも思う。 さて、トイレ休憩も終わり、これからどうするか。 キャンプ場へ行こうと思っていたのだが、空を見上げると少し雲が多くなり遠くでゴロゴロ鳴っている音がする。 我輩自身、中学生の時のあのキャンプはまだ完結していない。意に反して「ハイ、ここで終わり」と一方的に遮断されたのだから、気持ちとして納得出来ないのだ。だからこれからそこへ行き、あの時のキャンプをキチンと終わらせたい。 それにしても、近いとは言ってもそれなりに距離はあるので、現地では天気も良いかも知れない。考えている間に時間も過ぎてしまうので、とりあえずキャンプ場のほうへ向けてクルマを発車させた。 元々田舎の土地で、そこからさらに山間に向かって行くのだから道はどんどん細く寂しくなっていく。 道は川沿いに延びており、途中、川で泳いでいる子供たちがチラホラと見えたりして「もうこの辺でいいか」と思いかけたのだが、駐車する場所も無いのでそのまま進んだ。 それにしても、道が狭い。10年くらい前までフルサイズのバスが走っていたことが信じられない。 場所によっては、山に囲まれた見通しの悪い蛇行道も多く、中学時代の生活指導教師はよくこんな道で100km/hも出したものだと今さらながら感心する。 所々で道幅を拡張する工事をやっているようなのだが、道幅を広げようにも土地が無いので待避所を作る程度しかやりようが無かろう。 <田舎道> (※帰りに撮影) <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/10 16:16 30分ほど走っていると、カーナビゲーション画面で目標が近くに表示されているのに気が付いた。 もうそろそろ着くようだが、山里の見通しが利かない道のため、本当にキャンプ場が近くにあるのかが疑わしく思える。 しかし、最後のカーブを曲がった時にキャンプ場の看板が目に入り、駐車場に入ることが出来た。 今考えるとたったの30分だが、体感的には時間も距離も長く感じた。 クルマを降りると、自然の空気が出迎えた。まさに、夏休みという感じがする。 それにしても、記憶していた風景と合致するところが無い。川のほうへ行けば何かあろうかと思い、豚児とヘナチョコを急かして川へ急いだ。 <蛇渕キャンプ場> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/10 13:33 途中、滝があるという案内板があり、そこへ降りてみた。 そこには小さな滝があったが、それはともかく、川が大きな一枚岩の岩盤の上を流れているように見えたのが、まさに当時の記憶そのまま。 しかも、周囲は木が茂っており、薄暗くてコケが生えている。これなら、ちょっとした不注意で足を滑らせてしまいかねない。 事件現場はここか・・・? <事件現場か?> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/10 13:40 さて、豚児を水遊びさせるには、ここは適当でないので、もう少し上流側へ歩いてみることにした。 すると、川幅が少し広い場所に出た。陽が当たっているせいか、コケはほとんど無い。ここならば少し安全かも知れない。 ちなみにここも、川床全体が一枚の岩盤になっている。 <一枚岩の川床> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/10 14:16 見ると他にも家族連れがおり、子供が水着姿で遊んでいる。それを見て豚児も、「水着で川に入りたい」と言う。 仕方無いので水着に着替えさせたが、足を滑らせないよう厳重に注意したのは言うまでもない。 あの山道を猛スピードで飛ばしたくはないからな。 ただ、川自体は非常に浅く、泳ぐようなことはまず出来ない。せいぜい水遊びをする程度。 もし泳ぐことが目的ならば、上流ではなく中流のほうが良かろう。それは他でもなく実家近辺がそれに該当する。大小の礫(れき)がゴロゴロ積み重なり、巨岩の間に水流の緩やかな深い場所がある。 <水遊び> <<画像ファイルあり>> [New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/10 13:58 豚児は小魚を見つけてそれを捕まえようとしたがなかなか捕まらない。 「おまえに捕まる魚がおるもんか」と言ってやったが、それでも捕まえたいようだったので、ビニール袋を使って捕まえてやった。これも豚児にとっての夏休みの想い出になろう。 別に食べるわけでも飼うわけでもないので、少々観察した後にすぐ逃がしてやった。 <小魚の観察> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/10 14:41 2人で川を遡上して1つの堰(せき)を越えてみると、水流緩やかな広いところに出た。なかなか涼しげな風景である。 <水流緩やか> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/10 15:32 ここは小石がゴロゴロあるので、上流から流れてきたものが堰で止められ溜まったものであろうか。せっかくなので、小石の中から平たい石を選び、水面を飛ばして水切りを豚児に見せてやった。 豚児も挑戦したが、やはり失敗。コツを教えても実践出来ないのは我輩の子供の頃も同じ。 いつかまた川に来た時にでも挑戦してくれ。成功するようになってそこから自分の成長を感じるのもまた良かろう。 <水切りに挑戦> <<画像ファイルあり>> [New MAMIYA-6/50mm/Kodak E100G] 2010/08/10 15:17 川べりを見ると、上から眺めていたヘナチョコが居ない。上がってみると休憩所で休んでいた。 時間はもう16時。そろそろ帰ることにした。 危ぶまれた天気も特に悪くなることも無くて良かった。 帰りは、実家を通り過ぎて隣町の駅まで行って母親をピックアップし、買い物に寄って実家に戻った。豚児は花火を買ってもらったようだが、もう明日は千葉に帰る日なので、やるとすれば今夜しかないぞ。 空を見上げると、台風が近付いているとのことで、確かに空がどことなく騒々しく見える。もし今回フェリーで来ていたならば、欠航になっていたのであろうか・・・? <台風の近付いた空> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/10 17:23 実家で夕食を食べ、風呂に入り、さっそく花火をしようと思ったわけだが、近付いている台風の影響なのか風が強くなり、1つも着火できずに撤退。 花火はそのまま千葉に持って帰ることになってしまった。 <買ってきた花火> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/10 18:43 我輩が高校生まで自分の部屋だったところで九州最後の夜を過ごす。 一日一日が早く、もう明日は帰る日を迎えることとなった。今回は新幹線なので、午後にはもう千葉か。 <寝床> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/10 19:13 「2010年夏 九州帰省日記(6日目)」−8月11日(水) この日、新幹線は小倉を8時過ぎに出るので、早起きして身支度をする。 窓からは、高校生の頃に夜明けの写真を撮ろうとした懐かしい景色が広がっていた。あの頃と全く変わらない風景に、時間の経過を忘れるような気持ちになる。 <夜明け> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 05:37 朝食を食べ、床の間の祖父の遺影に手を合わせ、帰りの挨拶をした。 実は、66判の「New MAMIYA6」にて、セルフタイマーを使った記念撮影もしたのだが、三脚が無いせいで多少傾き、またアングルも低く、そして遺影が背後に隠れてしまったのは残念であった。 <祖父の遺影に挨拶> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 06:02 新幹線に乗る前に、レンタカーを返却せねばならない。 母親も乗せて実家を6時10分に出発し、小倉駅前のトヨタレンタリースを目指すが、ガソリン満タンにする必要があるので、途中のガソリンスタンドで給油しようと思う。しかし、朝早くから開いている店があるかどうか。 そういう心配があったので、まだ少々距離を残しているがセルフ式ガソリンスタンドに入った。 <給油> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 06:31 ところが給油口を開けてキャップを外そうとしたが、なかなかキャップが外れない。 「ガコン!」と、なかば強引に外したものの、給油後にキャップをハメようとしたら、今度はどうやってもハマらなくなってしまった。体重をかけてグッと入れようとしてもダメ。 困った・・・。 <ハマらないキャップ> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 06:34 あらためて、キャップをジイーっと見てみると、緩いネジが切ってあるように見えたので、クルクルまわして入れてみたら、見事にハマった。 なんだ、スクリューマウントだったか・・・。 我輩はこれまで、自分で給油した車種では全てがバヨネットマウントであったし、それが当然だと思っていた。まさか、旧式のスクリューマウントのキャップがあるとは夢にも思わなかった。 もしAF化することになれば、このマウントでは対応出来んぞ。まあ、給油キャップにAF化は関係無いがな・・・。 途中、母親のマンションに寄って幾つかの荷物を降ろした後、トヨタレンタリースへ到着。 車体のチェックを受けて、返却完了となった。 駅へ向かう前に、皆でクルマを振り返って後ろ姿を見た。この旅を支えてくれた「トヨタ・ベルタ」。非力ながらも運転し易さはなかなかで、良いクルマだった。今となっては家族のような気持ちがする。その別れは少し寂しい。 <今回の旅を支えてくれたベルタ> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 07:39 小倉駅へ行き、まだ新幹線の発車まで時間があるので、土産物売り場へ行ってみる。 そこには、懐かしい土産物が多くあった。その中でも、「にわかせんぺい」は、子供の頃によくCMで見て馴染み深い。今でも放映しているのだろうか? ちなみに、我輩が好きなのは「博多の女(ひと)」という菓子。当然、それを買う。 また、車中で昼食を摂るので、駅弁も買っておく。 <にわかせんぺい> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 07:59 指定席を取っているので焦って並ぶ必要は無いが、小倉駅は始発駅ではないので停車時間が短く、時間は気になる。 ホームへ上がり、見送りの我輩の母親との別れがやってきた。 <別れ> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 08:15 ホームに入線してきた新幹線に乗り込み、荷物を置いたりして座席に座ると、もう出発。窓から手を振ると、あっと言う間に景色は変わった。 さあ、あとは5時間座っているだけ。大阪から16時間運転した去年に比べると、目をつぶっていても良いというのが嬉しい。 新幹線建設が計画された当初は、貨物専用車両、そしてその中に自動車運送の構想もあったというのを本で読んだことがある。もし実現されていれば、マイカーでの帰省でも時間をかけずに済んだのかも知れぬ。 それにしても、朝が早かっただけに腹が減ってしまい、10時になる前に弁当を開けてしまった。 <武蔵小次郎弁当> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 09:47 東京駅に着いたのは、13時15分。 何もしないでただ座っているだけというのも疲れるが、それでもやはり、去年の16時間と比べると全く違う。 上野駅まで出ると、我輩の通勤経路に入るので、帰ってきたという意識が強くなってきた。 <上野駅> <<画像ファイルあり>> [Panasonic DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/11 13:30 自宅最寄り駅まで着いた後、荷物があるので我輩がひとまず手ブラで家に帰り、そこからクルマに乗って駅まで迎えに行く。出発時と同じ。 いやはや、久しぶりに乗る自分のクルマが嬉しい。もちろん、普段も土日に乗る程度なので、久しぶりに乗るとは言っても実はいつもの頻度からは外れていないはず。だが、数日間「トヨタ・ベルタ」に乗った後では、気分的には久しぶりという気になる。 今回はデジタルカメラはJPEG撮影ではなくRAWデータのみということで、これから現像処理が待っているのが頭の痛いところ。 今回の帰省のまとめは下記の通り。 ●期間 2010年8月6日〜8月11日(6日間) ●デジタル撮影総枚数 約1,300枚 D700の内蔵ストロボはかなり有用であった。 ●120フィルム撮影本数 7本 ●走行距離 237km レンタカー「トヨタ・ベルタ」の走行距離。遠出しなかったためこの値。 ●燃料消費量 約16L ●平均燃費 14.8km/L 一般道のみであることを考えると上出来。 ●旅行費用 161,283円 <内訳> ・新幹線料金(指定) :103,860円(往復割引) ・レンタカー代 :37,721円 ・ガソリン代 :2,066円 ・食費 :5,690円 ・宿泊費 :なし ・入館・駐車代 :4,300円 (うち、小倉のコインパーキング代:2,700円) ・土産その他 :7,646円 ---------------------------------------------------- [706] 2010年08月31日(火) 「RAW記録」 <RAW記録についての確認> デジタルカメラで撮影する場合、主にJPEG記録とRAW記録の2種類の選択肢がある。 しかし2種類の選択肢とは言うものの、JPEGのほうは"画像ファイル"と言えるが、RAWのほうは素直に"画像ファイル"とは言いにくい。と言うのも、RAWは「現像」と呼ばれる処理によってJPEG(あるいはTIFF)などの画像ファイルに書き出され、そのJPEGが画像として利用されるからだ。 さて、RAWで記録することのメリットは2つあるかと思う。 まず1つ目のメリットとして、RAWは画像を構成する色の記録ビット数が多く、レタッチ耐性が高いこと。 そして2つ目のメリットとして、JPEG圧縮のようなデータ圧縮劣化の影響が少ないということである。 RAWデータの場合、"レタッチ"というのは、実際にはRAWデータそのものを改変させるというものではなく、調整したパラメータの内容を予約しておき、RAWから画像ファイルへ書き出すタイミングで初めてパラメータを調整した内容が反映されるというもの。調整が固定化されるのは、書き出されたJPEGファイルなどの画像ファイルのほうで、ソースファイルとしてのRAWデータは改変されない。だから、レタッチの試行錯誤で無駄な行き戻りがあってもレタッチ劣化は最小限で済むし、そのつど新規にJPEGへ書き出すため圧縮劣化も蓄積しない(※)。やろうと思えば、レタッチ情報は簡単にリセット出来る。 いずれにせよ、デジタルカメラ撮影時にRAW記録を選択しようがJPEG記録を選択しようが、どちらも最終的にはJPEG画像で利用することになるのは変わりない。 ただその過程において、RAWデータというのは、レタッチ作業とそれに伴う保存について劣化無く作業するために役立つものと言えよう。 (※)画像の主な劣化について 「レタッチ劣化」 例えば色調整などでいったん色を抜いてしまえばもう色は戻せない。これは、情報を失うという意味では劣化と言える。拡大縮小処理も同様。逆に、色反転や縦横変換は情報を失うものではないため劣化とはならない。 「圧縮劣化」 不可逆データ圧縮保存による「圧縮劣化」である。この場合、JPEG保存を何度も繰り返すと圧縮劣化がそのつど蓄積していくのだが、圧縮率が高ければ劣化の蓄積度合いが大きく、圧縮率が低ければ蓄積度合いは小さい。ただし、いずれも最初のJPEG化の段階である程度の劣化が出る。 <我輩にとってのRAW> 我輩は当初、デジタルカメラでの撮影ではRAW記録を避けてきた。 RAW記録であってもJPEG記録であっても、日常撮影ではその違いがほとんど判らない。特に、1,000万画素未満の低画素時代には、RAWで撮るメリットがほとんど感じられなかった。 ならば、わざわざ容量が大きく、そのままでは画像が開けないRAWで撮る意味は無い。 ところが、2,000万画素の「Canon EOS5D Mk2」を使い始めるようになってから、細かい描写が気になるようになってきた。 その頃はクルマを撮る機会も増え、金属のエッジや塗装の滑らかさなど、ちょっとした画質の違いが際立つようになってきたのである。そういう場面では、RAWとJPEG同時記録の画像を比較してみると、RAWではエッジの甘さが見事に消え、金属らしいシャープな質感が再現されていた。 さらに、クルマの写真はどうしても屋外の直射日光の下で撮ることが多く、発色は素晴らしいもののデジタルカメラで撮るとコントラストが強くなり過ぎる(特に濃色ボディのクルマの場合)。 日常撮影では考えられないような大胆なトーンカーブ調整を強いられることも多く、RAWでなければとてもレタッチに耐えられない。 それからしばらくして「SIGMA DP2」を購入したのだが、このカメラのJPEG画質はとても我輩には馴染めないもので、こちらはこちらでRAW記録は必須となってしまった。 以上のことから、我輩は現在、デジタルカメラ撮影ではRAW記録を基本とするようになった。 <RAWで撮ることの手間> RAWデータは、そのままでは画像として利用出来ない。だから、JPEGなどの画像ファイルへと書き出さねばならぬ。 しかし、撮影枚数が多い時には、1枚1枚調整する手間がかかりすぎる。 もちろん普通は、RAWデータから丁寧な調整を施すものは渾身の一枚というような選び抜いたもの・・・という使い方をするであろう。 しかし、例えば博物館写真のような、全てを採用カットとするような写真の場合、全カットを調整せざるを得ない。共通の照明の下で写された複数の展示物ならば一括で調整可能ではあるが、意外に適用可能な枚数は少なかったりする。 もちろん、それはJPEG画像で撮っても同じ問題を孕んでいる。RAW特有の問題というわけではない。 しかし、JPEG画像で撮った場合は未レタッチ状態であっても、とりあえずの画像利用は可能である。閲覧も支障は無い。しかしRAWデータはいったんJPEGに書き出すプロセスが必要となる。そしてそのせいで、「どうせJPEGに書き出すのであれば、その前のRAWの段階で調整しておきたい」という心理が働く。それが我輩の性格である。 その場合、早く画像として利用したいということもあり、眠い目をこすりながらというように、やや無理を強いられることになる。 特にクルマ撮影の場合などは「Adobe PhotoShop」などで切り貼り加工する機会が多いため、後からソースのRAWから立ち返って再び調整してしまうと、またそれをJPEGに書き出して最初から切り貼りせねばならなくなる。 だからRAWの調整というのは、出来るだけ最初の段階でやり尽くしておかねばならない。 <RAWデータを原版と位置付けた作業の流れ> <<画像ファイルあり>> 結局、RAW記録は我輩に大きな労力を科すことになってしまった。 デジタル一眼レフ導入当初、RAW記録を避けてきた我輩の直感的判断の正しさが、今改めて解る気がする。 <我輩の現在の状況> 一般的には、カメラメーカーごとにRAWデータの仕様が異なるため、それぞれに専用の現像ソフトを必要とする。 我輩の場合、「Nikon D200/D700」、「Canon EOS5D Mk2」、「SIGMA DP2」、「Panasonic LUMIX DMC-GF1」と4種類のRAWデータがあり、そのせいで現像ソフトも4メーカー分がインストールされており煩わしいことこの上無い。当然ながらそれぞれに操作感が異なるため、統一した仕上げを得るのが難しい。 カメラを手放したとしても、そのカメラで撮ったRAWデータも消滅するわけではない。画像が必要になれば、カメラ亡き現像ソフトを使ったりもするだろう。 もしこの先、メーカーに拘らずにカメラを買い換えていったとしたら、メーカーの数だけ現像ソフトをインストールしておかなくてはならなくなる。いやそもそも、手放したデジタルカメラの付属ソフトをそのまま使い続けるのもライセンス上問題があろう。 頭が痛い・・・。 だがよく考えてみると、「LUMIX DMC-GF1」に付属していた現像ソフトは「SILKYPIX」であった。これは汎用の現像ソフトのはず。だとしたら、他のメーカーのカメラで撮ったRAWデータもこのソフト1本で取り扱えるのではないか? これは、名案だ。 しかしすぐに、それは甘い考えだということが判った。 このソフトはバンドル版ということで、Panasonic製のデジタルカメラのRAWデータしか受け付けないよう制限されていたのである。 意地が悪いな・・・。 せっかくの名案が潰れるのも惜しいので、結局、製品版「SILKYPIX」を購入することにした。 ダウンロード価格16,000円は安くはない・・・。 だがちょうどこの頃、義母の自作DOS/Vパソコンを組み直す時に手間賃を頂いたため、ソフト購入費用に充てることが出来たのは幸運と言うほか無い。 <SILKYPIX Developer Studio 4.0> <<画像ファイルあり>> それにしても、これまではデジタルカメラに付属していた現像ソフトを使っていたため調整出来る項目が少なかったが、「SILKYPIX」を使うことによってかなり大胆な調整が出来るようになった。最終調整は「Adobe PhotoShop」でやっていたところを、かなりの部分までこの「SILKYPIX」でやれるようになったのだ。 そうなると、RAWの調整でやれたほうが画質的には有利なのだから、ますますRAW調整の工程で頑張らざるを得ない。 やればやるだけ期待に応えてくれるRAWデータ。 だが我輩にとっては、時間泥棒でもあるRAWデータ。 やはり、我輩のような性格の人間は、RAWに関わるべきではなかったか・・・? ---------------------------------------------------- [707] 2010年09月09日(木) 「イベントカメラマン物語」 ※今回、企業の機密情報に触れる撮影があったため、膨大な写真を撮りながらも公開出来ない写真があることをご了承願いたい。よって、ここでは一般者が撮影可能な範囲での写真掲載にとどめる。 <はじめに> 「プロカメラマン」とは自称である。 ゴルファーのような、プロテストがあるわけではない。写真のレベルが基準以上ということでもない。ましてや、どこかの写真協会に入っているということでもない。 「プロ」と自称することは、撮影した写真が売り物であると主張することに他ならぬ。 だから、プロというのは他者に認められるかどうかということではなく、自分が主張することであり、自分自身のスタンスを示したものと言える。 <撮影の経緯> 先日、某自動車会社の走行実験所にてイベントが行なわれた。 高速周回路での試乗会や、試験棟での各種技術見学会、地元バンドによるコンサート、模擬店出展、その他様々な催しがあった。 我輩の勤務先は、このイベント設営について仕事を請け負っているのだが、我輩自身は担当ではないために本来であれば関わりは無いはずであった。 ところが、イベント用のサインボードや試乗会整理券などの版下データを外注すると利益が少なくなるということで、自社内で製作することになり、我輩がそれを1人で作ることになった。 <サインボード (3D-CGイメージ)> <<画像ファイルあり>> サインボードというのはパソコンで言うところの"アイコン"であり、パッと見て認識出来るものが好ましい。 例えば、トイレのサインなどは「男性は青のズボン姿、女性は赤のスカート姿」というふうに全世界的な共通認識がある。それを変えてしまうと、男女共同参画に熱心で男女に同じサインを使った大阪府豊中市のように、無用な混乱を招くことになろう。サインボードの意味を否定するようなサインボードは作ってはならない。 そういう意味で、サインボードのデザインとしては、「トイレ」や「喫煙所」、「駐車場」などについては、これまで広く認知されているデザインを踏襲することになる。 しかしながら、トイレを例にとっても「男・女」、「男のみ」、「女のみ」の種類があり、それぞれにA3サイズとA4サイズがある。必要枚数も異なる。そういったコマゴマとした種類を管理して作っていくのは意外に手間である。途中から客先の要望が変わり、せっかく作ったものが不要になったり、逆に他のものが必要になったりもして大変だった。 さて、サインボードや整理券の製作が一段落した頃、「実際にサインボードが設置されている様子を見てみたいなぁ」と、ふと思った。 すると、その思念波が上司に伝わってしまったのか、「イベント当日の様子を写真撮影してこい」と指令が下った。 実は、そのイベントに便乗して我が社からは、某メーカーから買った「牛若丸(仮名)」というロボットを展示することになっているのだが、その展示の様子を写真に撮り、「牛若丸(仮名)」の営業パンフレットに使いたいとのことだった。 用意する機材の問題もあることから、どれくらいの写真クオリティを欲しているのかを尋ねたところ、「だいたいで良い」との答え。 こんな漠然とした要求が一番困る・・・。 だいたいで良いのなら、別に我輩でなくとも良さそうだが・・・。まあ、遊び半分で行ってくるか。 想定機材は、先日導入した「Panasonic GF-1」。 イベント前日と当日で1泊出張になるから、なるべく荷物は軽いほうが良い。 自動車メーカーの走行実験所は、通常は入場チェックが厳しく撮影も禁止であるが、イベント当日は一般人が自由に出入りし、写真も自由に撮られることになる。だから、我輩も特に心配はしていなかった。 しかし上司は、無用なトラブルを避けるために「撮影腕章」を用意してくれるという。それさえあれば、イベント中でも撮影禁止区域になっている場所ですら自由に撮影可能とのこと。 まあ、そこまでしなくとも「牛若丸(仮名)」を撮る程度なのだから問題無いとは思うが、イベント前日に「牛若丸(仮名)」が搬入される様子も写真に撮ることになったため、それならばやはり撮影腕章は必要だろうと納得した。 ところが上司が客先に撮影腕章の手配を頼んだところ、「どうせならイベント全体を一通り撮って、その写真を使わせてくれ」と頼まれてしまったようだ。 一気に撮影範囲が広がってしまった。 もちろん、必ず全てを撮れという話ではなく、出来れば多く撮って欲しいという要望である。また、クオリティもプロカメラマンレベルを要求しているわけではない。 しかし客先要望となれば、内容も、そしてクオリティも下げたくない。 使える写真だと思われれば次の仕事にも繋がろう。 機材は「Nikon D700」と、高性能超広角ズームレンズ「14-24mm」を投入せねばなるまい。この組み合わせだけで、シロウトとは違うと感じさせる写真が撮れるからだ。収差の少ない14mmの異様な広大感のある写真は、何か特別な機材を使っているというオーラがあって良かろう。 待てよ、高速周回路を疾走するクルマも撮ることになるのか? 上司に確認すると、「高速周回路を撮れる場所があるかどうか分らないが、当日確認してみよう」ということになった。 もし撮るとなれば、望遠ズーム「70-300mm」も必要か。 それから、ストロボも必要だろう。室内撮影ではストロボは必須であるし、バウンス撮影など内蔵ストロボでは不可能な場面もある。 また、通常撮影用として標準ズーム「24-120mm」も無いと困ろう。 そして、予備バッテリー、充電器、メモリカードなども用意せねば。 「Panasonic GF-1」のほうは、メモカメラとして持って行くことにしよう。ゾウの重量にネズミの重量・・・である。 <イベント前日> イベント前日は土曜日。休日出勤の出張となる。 荷物にはカメラ機材が多く入っており、大小2つのカバンを用意した。大きなカバンはともかく、小さいカバンのほうは、撮影時に交換レンズを携行するために使うのに必要。 主な荷物がカメラ、しかも必要と思われる機材を全て詰め込んだということもあり、結構な重さとなった。 朝8時、上司がレンタカーの日産キューブを借りて、我輩の近所でピックアップしてもらう。そしてさらに2人をピックアップし、計4人で現地へ向かった。 <レンタカー> <<画像ファイルあり>> [Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/28 09:20 高速道路は、夏休み最後の土日ということもあってかかなり渋滞していた。13時頃現地入りするということを客先に言っていたようだが、この分では昼食時間を入れると少々時間オーバーするかも知れぬ。 途中、我輩が運転を代わったのだが、このクルマはハンドルが少々固く違和感がある。重いのではなく、固いのだ。スムーズさが無い。 またブレーキペダルも妙な重さがある。まるで固い板バネを踏んでいるかのようだ。 昼食はパーキングエリアの食堂で済ませたが、タイミングが悪く昼時より少し早かった。これでは夕方に腹が減るかも知れない。 パーキングエリアを出ても渋滞は断続的に発生し、ノロノロ運転があったのだが、我輩は無理な追い越しなどせず、とにかくマイペースで走った。 現地近くのインターチェンジを降り、田舎道を走る。以前、JAFの運転トレーニングで行った日本自動車研究所テストコースの時にも思ったことだが、こういう田舎でなければ広いテストコースのある施設は造れないのだろう。 高速道路を降りた後は信号もほとんど無く、スムーズにクルマは到着した。 時計を見ると、13時05分。ほぼ、予定時刻どおりだった。 入館手続きをして駐車場にクルマを停めると、強烈な日差しと熱気でめまいがする。 重い荷物を抱えて関係者控え室に持ち込み、早速、会場設営を始める。 我輩は撮影要員として来たのだが、設営もせねばならないのがツライ。かと言って、我輩だけが特別扱いで何もせぬわけにもいくまい。 1個20kgのウェイトを両手に持って運び回ったり、パラソル付きテーブルの組み立てやゴミ箱設置などをやっていった。 それから、忘れてはならないのが「牛若丸(仮名)」の撮影。神戸の営業所から「牛若丸(仮名)」担当が来て、会場で設置を始めていた。 我輩はその様子を逐一撮影し、どのように設営するのかを記録した。 この日、設営作業を終えたのが19時頃。 場内警備員がクルマで見回りしているのでもう時間切れ。まだ残りがあるので、続きは明日の朝一番でやることになった。 クルマで宿泊ホテルに戻ったところ、今回のプロジェクトリーダーの部長殿が到着しており、部長殿の奢りでホテル内居酒屋にて夕食を摂った。金の心配無く飲み食い出来るというのは格別。 (※ちなみにこの部長殿というのは、雑文123と雑文282に登場した当時の課長殿のことである。) 部屋に戻ると、もう23時を越えていた。 酒を飲むと熟睡出来ないのでウーロン茶程度で抑えていたが、朝は6時過ぎに起きることになっており睡眠が十分に取れるか心配だ。 しかしこんなこともあろうかと、自宅から枕を持ってきていたのはここだけの秘密。枕は荷物の中でかなりの割合を占めていたが、おかげで入眠はスムーズだった・・・。 <イベント当日> イベント当日は快晴で、朝から気温がグングン上昇していた。 我輩は、枕のおかげでグッスリ眠れた気がする。いつもの車中泊と同じような感覚だ。 一方、他のメンバーは少し眠そう。 「やっぱ枕が変わると熟睡出来ないっスよねー。」などと言っているのが笑える。 クルマに乗って会場へ行くと、イベント当日ということで入場門はフリーで通過出来るようになっていた。 8時に到着し、前日にやり残した作業を分担してやっていく。 <サインボードの設置作業> <<画像ファイルあり>> [Panasonic LUMIX DMC-GF1/14-42mm] 2010/08/29 09:10 開場は10時の予定なので、時間的には問題無いと思われたのだが、9時過ぎあたりで一般入場者と見られる人々が目立つようになってきた。 「まだ開場してないハズだが・・・?」 後で聞いたのだが、時間前にも関わらず入場者が早くからやってきたため、予定時間よりも早く開場したのだそうだ。 そのせいで、試乗整理券が開場時間前に品切れになってしまったという。時間通りに来た来場者が困るのではないか・・・? さて、このイベントの運営は自動車メーカーの方々であり、我が社はサポートの役を担う。主に事前準備が7割くらいである。他の者は、準備が終了したので気楽になったようだが、我輩はこれからが本番なのだ。 片腕には標準ズームを装着した「Nikon D700」、小さなカバンにはデカい超広角ズームと望遠ズーム、ベルトには2つのポーチを付けてそこにメモリカードや予備バッテリー、そして予備カメラ「GF-1」とストロボを入れておいた。 自動車メーカー支給のTシャツを着て、左腕には「撮影」の腕章を付けると、オフィシャルカメラマンとしてサマになった。 手持ちのコンパクトフラッシュメモリは16GBのものが最大容量なのだが、これは「D700」ではエラーが頻発するので出来れば使いたくない。エラーは撮影してから数秒経って判明するのでタチが悪い。 そういうわけで、2番目の容量となる4GBのコンパクトフラッシュを最初に使い始めた。 出来れば、イベント全ての出し物を撮影したいのだが、イベントのスケジュール表を見ながら撮りこぼしの無いように動くのは難しい。気を抜くと、目立たないスケジュールを見落としそうになる。 そう言えば、上司は「撮影の合間をみて牛若丸(仮名)の対応もしてくれ」とも言っていたことを思い出した。神戸営業所の担当1人だけでは、食事やトイレの不在時に対応出来ないということで、我輩が補佐を頼まれたのである。 撮影しながらそんなことが出来るのか・・・? とりあえず、写真だけは撮っておこうと、「牛若丸(仮名)」のコーナーへ寄って子供たちと交流している様子を撮った。 <子供たちと記念撮影中の「牛若丸(仮名)」> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/29 10:58 まあ、撮影が早く終われば「牛若丸(仮名)」の手伝いに戻ろうとは思うが、まず無理だろう。 神戸営業所の担当1人だけだったが、こちらの撮影も1人だからな。 しばらく撮っていると、急にシャッターが切れなくなった。見ると、撮影残数がゼロになっている。 手持ちのコンパクトフラッシュメモリカードは、今使っている4GBの他に16GBと256MBの2枚がある。さすがに256MBの低容量は緊急用でしか使えない。他には4GBのSDメモリカード(SDHC)が潤沢にあるので、いざという時はアダプタ経由でSDカードを使うことにする。 とりあえず今は、エラーがよく出る16GBのカードを早めに使い切ってしまおう。時間が早いうちならば、エラーが出ても撮り直せる確率も高いはず。夕方になってイベント終盤にエラーが出るほうが困る。 そういうわけで、SDカードを肝心な時の"押さえ"としてとっておくことにする。 そういえば、高速周回路を疾走するクルマが撮影出来る場所について、客先へ確認するとのことだったが・・・確認は取れていない。 上司に訊いてもらうことになっていたが、この日は上司も急がしそうに動き回っていたので聞きそびれたのだ。 とりあえず、試乗案内所まで行ってみようと思い歩いて行くと、その途中に車両展示のコーナーが見えてきた。そこには、警察ブースのフェアレディZパトカーの展示、懐かしい昭和時代のトラックのレストア(復元)展示、そしてメルセデスベンツの展示があった。 パトカーは撮影リクエストに入っていたのでまずそれを撮影。そして、昭和レトロファンとしてレストア車両を撮影。最後にメルセデスベンツ展示については、車種が多いので、馴染みの1台を写すにとどめた。 <車両展示> フェアレディZパトカー レストア車両 W204 <<画像ファイルあり>><<画像ファイルあり>><<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/29 11:09-11:17 さて、車両展示の撮影もそこそこに先を急ぐと、周回路の脇で2人ほどカメラを構えているのが見えた。 我輩もその近くまで行ってみると、なるほど、周回路の直線部分を疾走するクルマが何台も見える。レーンが幾つもあるので、同時に4〜5台くらいは走っているようだった。 我輩は「D700」に「70-300mm」を装着し、ファインダーを覗いてみた。 さすがに遠くのほうは望遠が足りないが、クルマが目前に迫ってくるにつれフレーム一杯になり迫力が増す。 ここではもちろん、一番シロウト受けする流し撮りに挑戦せねばなるまい。 シャッタースピードを遅くするためにISO感度を落としたが、「D700」はISO200までしか下げられない。「D700」は拡張機能でISO100相当の減感も可能だそうが、描写に影響が出ても困るので避けておく(事前に検証もしていないことをやるのは怖い)。 連写に任せて撮ってはいるが、メモリカードへの書き込み速度の問題なのか、あるいはカメラ本体のバッファ容量の問題か、ある程度の枚数を連写すると途中でシャッターが切れなくなる。だから、いくら連写モードであっても、タイミングを図らねば肝心なカットでシャッターチャンスを逃す。 またコース脇の間近から撮っていることもあり、カメラを構えた上半身の回転角も大きく、高速で通過するクルマをフォローする際には終わりのほうで無理な体勢となり、撮影中でも「これはブレたな」と思うことは多かった。 「それにしても、手ブレ防止機能の付いたレンズで良かった。少なくとも上下方向の動きが抑えられれば、流し撮りの成功率も上がるだろう・・・ん? ちょっと待て・・・。」 我輩はハッとして、あらためてレンズ70-300mmレンズの鏡胴部分を見てみた。 そこには、手ブレ機能のスイッチの他に「NORMAL/ACTIVE」のスイッチがあった。 <70-300mmレンズのスイッチ部> <<画像ファイルあり>> 確か、流し撮りではどちらかにしないといけなかったはず・・・。「ACTIVE」か? それとも「NORMAL」か・・・? 70-300mmレンズなどあまり使う機会も無く、そういうスイッチを切り替えたことが無いのでどちらにすれば良いのか分らない。 何となく、「NORMAL」のほうではないかと思ったが、通常撮影が「NORMAL」で、流し撮りが「ACTIVE」というような解釈も出来よう。 ちなみに現状は「ACTIVE」のほうになっていた。 結局、手ブレ防止機能そのものをOFFにして撮影を続行することにした。 誤った使い方をして逆効果となり全てを失敗させてしまうよりも、自分の腕を信じて、まぐれの成功カットが得られるほうを期待した。 ただそれにしても、我輩は流し撮りをするような撮影対象をこれまでほとんど撮ったことが無かった。 それは不安材料ではあるが、しかし失敗の確率が高ければ、その分多く撮れば良いのだ。要するに、「数撃ちゃ当たる」の理屈。 こういう時、ランニングコストの低いデジタルカメラの利点が活きる。 カメラの背面液晶画面では、何となくうまく撮れているように見えるが、次々に現れる車両を撮っている最中ではジックリと確認するヒマは無い。 <手ブレ防止機能OFFで撮った流し撮り (成功例)> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/24-120mm] 2010/08/29 11:43 メモリカードはまだまだ多くあるし、時間さえ許せば16GBメモリカードが一杯になるまで撮っても良かったのだが、さすがにそうもいかない。撮らねばならぬものがまだ他にもある。特に、技術見学会などはツアーとして時間帯が決まっており、それに間に合わねば撮るチャンスが無くなる。 我輩は30分で流し撮りを切り上げ、見学コースの撮影に移ることにした。 技術見学コースは5つあり、それらすべてが屋内で行なわれる。パンフレットに記載されたタイムテーブルを確認し、直近の見学コースに行ってみた。 屋内はクーラーが効いて涼しく、汗を拭いてホッと一息ついた。 技術に関する内容だけに、見学コースは撮影禁止エリアになっている。しかし我輩の左腕に付けている「撮影」の腕章により、撮影が許可された。 我輩が撮らねばならないのは技術的な内容ではなく、見学会の様子である。 どのような雰囲気で行なわれているのかが一目で分るような写真とするには、我輩自慢の14-24mmレンズを投入する絶好の機会であろう。またそれでこそ、フルサイズカメラの威力が発揮される。 撮影の趣旨を見学コースのスタッフに説明したところ、「じゃあ、こちらから撮られてはどうでしょう。」と奥の試験施設に通された。 そこは関係者以外立入禁止区域内。見学者を対面で見ることが出来る絶好のポジションである。 見学者は事前説明を受けているところで、まだ我輩の居る試験施設までは入っていない。その間に、我輩はレンズを14-24mmに換え、ストロボも装着した。天井はかなり高いようだが、感度が高いカメラなのでバウンス撮影は大丈夫だろう。色温度を整えるためにはぜひストロボを使いたい。 バウンス撮影であればマニュアル露出で撮影することになる。ストロボ光と定常光とのバランスを、ストロボ発光量と絞り値とで微調整して、自分自身のイメージに合うようにせねばならないからだ。 数枚撮影してちょうど良い設定値を見付けたので、あとは見学者がこの試験施設に入ってくるのを待つのみ。 ところがふと見ると、「D700」の軍艦部の液晶表示に"CHA"という文字が点滅していた。16GBのメモリカードでたまに出ていたメモリエラーが、今出てしまった。 「・・・クッ!こんな肝心な時にっ・・・。」 あまりのタイミングの悪さに焦った。 高速周回路での撮影は300枚近く連写してもエラーが出なかったのに、なぜ、今出るんだ。 メモリカードを何度も入れ直してシャッターを切ってみたのだが、画像が記録されずに再び"CHA"の文字が点滅する。 <タイミングの悪いメモリエラー> <<画像ファイルあり>> 「もう間もなく見学者が入りまーす。」 スタッフが我輩に声をかけた。 「まずい、早くしないと・・・。」 16GBカードは諦め、SDカードをアダプタ経由で使うことにした。この時のためにSDカードがあって助かった。 ところが焦っているせいか、なかなかカメラにカードが入らない。そこで、ゆっくりと確かめるようにして入れようとしたが、やはり入らない。 良く見てみると、「D700」のスロットが狭く、メモリカードの厚みのせいで物理的に入りようが無い。これはどういうことだ? 実は、「D700」はTYPE-1のコンパクトフラッシュしか使えない仕様で、少々厚みのあるTYPE-2のSDカードアダプタには対応していなかったのだ。 「ちょ、ちょっと待てっ!D200で支障無く使えていたアダプタが、なんでD700で使えんのだっ!? なんでTYPE-1専用なんだっ!?」 事前確認しなかった我輩の責任であるが、それでも、これまで当たり前のように「D200」で使ってきたアダプタだっただけに、まさに青天の霹靂。これが使えなければ、手持ちのメモリカードのほとんどが使えないことになる。 あらためて、コンパクトフラッシュを探してみる。最初に使って残り容量ゼロの「4GB」、エラー状態の「16GB」、そして予備の「256MB」の3枚のみ。 仕方無い、ここは低容量「256MB」で急場をしのごう。 256MBのメモリカードをカメラに装着すると、撮影可能枚数が表示された。その残数は、「6」。 「ろ、6枚か・・・、RAWで撮ると256MBはかなり少ないんだな・・・。」 (※帰宅後に判明したのだが、このメモリカードには音楽MP3ファイルが何曲も入っており容量を喰っていたのである。もし知っていればそのメモリカードをフォーマットして容量を確保したのだろうが、しかしその時は知る由も無かった。) その時、見学者が試験施設内に入り始めたので、そのまま数枚を撮ってみた。だが残り6枚ではどうにもならぬ。 もう一度、「16GB」に換えてみたが、撮影するとやはりエラーが出る。 バッファからの書き込み時にエラーとなるためか、撮影してしばらく見ていないとエラー表示が出ない。だからシャッターを切った後、液晶表示を見ながら「撮れたか・・・? 撮れたか・・・?」と気を揉むのだ。 幸い、メモリカードを何度か入れ直していると、ようやく正常に書き込みが終わり、何とかピンチを脱することが出来た。 その後、他の見学コースを回っていったのだが、疲労と暑さのためにペットボトルの水分をガブ飲みする状況。熱中症の危険性を意識して過剰に飲んでいる面もあろうかと思う。 そのせいで水腹となり、昼を過ぎても腹が減らない。 控え室には我輩の弁当だけが手付かずで残っていたようで、それを心配した上司から携帯電話に連絡が度々入った。まあ心配も分るが、見学コース中に携帯電話を鳴らされて少々ウンザリした。 我輩としては、写真撮影を頼まれた以上は我輩の判断で動きたい。 プロ品質を要求されているわけではないが、我輩が頼まれた以上は我輩品質は貫きたい。そのためには、写真的画質はもとより、こまめに歩き回って様々な視点から撮影をする。高速周回路での撮影以外は、ジッと同じ場所で撮影することは無く、常に歩き、時には小走りしていた。恐らく、スタッフの中で我輩が最も長距離歩いたに違いない。 疲労についても、これまでの登山の経験から、自分の限界点まであとどれくらいかということが分っているつもりだ。 そんな時、携帯電話にスタッフの1人から連絡が入った。 客先からの要望で、高速周回路を走るバスに乗って、車内から撮影してくれとのこと。 何だ、この指示は・・・? 明確に撮影業務を請け負っているわけではないのに、明確な撮影指示があるというのはどういうことだ・・・? スタッフのこの気軽な依頼電話といい、どうも写真撮影というものが軽く見られているように思える。 しかし断るわけにもいかないし、自分でも周回路を走る車両に同乗してみたかったので、了承して現場まで小走りした。 小走りした理由は、これは予定外の依頼であるから、他の撮影スケジュールを圧迫すると思ったからだ。そうでなくば、こんなに日差しの強い暑い中に小走りなどするはずもない。 試乗受付で撮影の旨を告げると、フリーパス状態ですぐに乗車出来た。もしこんなところで待ち状態になると後が大変だ。撮影腕章の威力に感謝した。 もっともその時は知らなかったが、試乗希望が多かったために車両が増発され、我輩でなくとも誰でもフリーパス状態で乗れたらしい。 間もなくバスは発車し、周回路に入って速度を上げ始めた。 ちなみに我輩は、以前JAFの運転講習にて日本自動車研究所(JARI)の高速周回路を走るマイクロバスに同乗したことがある。45度バンクはかなりのもので、マイクロバスが横転するのではないかと冷や汗が出るほどだった。 しかし今回は大型バスということで、体感スピードは比較的低く、何より撮影に忙しかったこともありバンクもあまり印象に残っていない。 ともかく、車内での撮影は忙しかった。 というのも、高速周回路を走っている状況が分るよう外の景色に露出を合わせると、車内が真っ暗に写ってしまう。逆に車内に露出を合わせると、外の景色は真っ白に飛ぶ。 だからストロボを使わざるを得ないのだが、高速走行の状況が写るよう、シャッタースピードの調整が必要になる。それに対し、ストロボ光は絞り値にのみ影響を受ける。さりげないバウンス撮影のため、オートではまず無理。 周回路を回ったのは2〜3周程度で、高速走行なだけにすぐに終わってしまい、ジックリ撮れなかったのは残念。 しかしまあ、それなりに見せられる写真は撮れたとは思う。 とにかくこういう場面では、高性能広角ズーム「14-24mm」は重宝する。周辺部までしっかり写っていると確証が持てるところが心強い。 <高速周回路を走行中> <<画像ファイルあり>> [Nikon D700/14-24mm] 2010/08/29 13:17 その後、関係者控え室に戻ってみた。 ビン入りのリンゴジュースをガブ飲みし、イスに座り込む。 テーブルの上に弁当が1つ残されていたので、これが我輩の分だろう。それを食べながら、これまで撮った写真をカメラの背面液晶画面でチェックしてみた。 画面が小さいので大きなことは言えないが、それでもなかなか良い具合に撮れているように思う。これならば、仮に今、我輩が倒れてここで撮影不可能になったとしても、ミッションは達成されたと認められよう。 まあ、倒れることは無いだろうが。 それにしても、弁当がほとんど腹に入らない。やはり水腹のせいか。 少し時間をかければ食べられるかも知れないが、時間を見るとイベントステージの後半が始まる15時が迫っていた。休む間が無い・・・。 イベントステージへ行くと、勝ち抜きゲーム大会が始まった。勝ち抜くと商品がもらえるようだ。 我輩は右に左に歩き回り、単調にならぬよう、そして様々な写真利用に適うよう、色々とパターンを変えて撮影した。当然ながら、全体が分るカットや、人物のアップなども押さえておく。 ただ、終盤での勝ち抜きゲーム大会は、参加者が次々に落伍して会場を去って行くので、最後は寂しい状態だった。 「まあ、この寂しさを写すのも、写真撮影のうち。」 我輩は、この様子を記録撮影することで次のイベントに活かされることを祈った。 イベントは、予定より30分早く15時半に終了した。 撮影もそれと同時に終了。 たすきがけしたカメラバッグの紐が肩に痛かった。襟をめくってみると肩が赤くなっていた。 カバンにはレンズ2本とストロボくらいしか入っていないが、14-24mmレンズは意外に重いし、何よりも一日中肩に掛けていたことで、ちょっとした重さでもここまで負担になったのだろう。 その後すぐに撤収作業に入り、疲れた身体のまま力仕事に移行。だがどうにも体が動かなくなる場面があったので、力作業の時はさりげなく別の現場に移動してやり過ごした。それくらいの自衛は許されよう。 ただそれにしても、我輩の作ったサインボードが足で踏まれヘシ折られて山積みにされるのを見るといたたまれなくなる。 「愛が無いぞ・・・、愛が・・・。」 イベントが終了すれば捨てられるのは当たり前だが、目の前でやられると力が抜ける。 大まかな撤収作業は2時間くらいで終了。 控え室には差し入れられた飲み物が幾つかあり、飲み残したものはスタッフで分けることになった。我輩は、山のように積んであるビン入りの100%リンゴジュースがうまそうに思い、荷物になるとは思ったが2本入りケースで持ち帰ることにした。恐らく、疲労で糖分を欲していたのだろう。 我輩その他3名はこの日のうちに帰宅するため、来た時とは別のクルマに便乗し、関東へ向けて3時間ほど高速道路を走った。 ただし我輩は亀有駅で降ろされたため、そこから電車と徒歩でさらに時間がかかった。重い荷物が肩に食い込む。 「ビン入りジュースは予定外だったな・・・。」 途中、脚がつったりしたが何とか持ち直し、ようやく自宅へ戻ったのは21時を少し回ったところだった。 自宅では、もう何もヤル気が起きなかった。立ち上がるのもしんどい。 写真の出来は気になったが、とりあえずデータをパソコンにコピーするにとどめた。翌月曜日は代休を取っているので、調整作業はその時にやろうと思う。 それにしても、メモリカードは「4GB」と「16GB」の2枚で何とか足りたので良かった。 撮影総数1,200枚、全てがRAW記録。半数近くが高速周回路の撮影のため、失敗写真を選り分けると意外に少なくなるかも知れぬ。 <イベント翌日> この日は代休を取っていたので、家でノンビリしていられる・・・と思ったが、1,200枚もの写真を整理・レタッチせねばならない。 何しろ、RAW現像ソフトは我輩の自宅パソコンにしか入っていないし、大量の写真の色調整をするにはキャリブレーションをしてある自宅のパソコンディスプレイでなければ難しい。もし誤った色調整をしてしまうと、画像の数が多いだけにやり直しが大変になる。 午前中のうちは、気になる流し撮りの写真を整理する。 採用率は3割くらいか。 不思議なことに、車両の前面はピタリとブレ無く写っているのに、車両後部だけが上下にブレているという写真が幾つもある。失敗写真とすべきか迷ったが、全体の印象から判断して採用カットとしたものが多い。 もしかしたら、これは手ブレ防止機能の「ACTIVEモード」が関係しているのだろうか? ちなみに、「NORMAL/ACTIVE」スイッチの件は、流し撮りの場合は「NORMAL」にするのが正しいようだ。 午後は残りの写真を調整した。 しかし、やはり写真の数が多いせいで、レタッチ以前の取捨選択作業でかなりの時間を費やした。そして、この日のうちに作業を終えることは出来なかった。 そうなると、次の土日まで作業が中断してしまう。平日の夜の帰宅後に作業すれば良いかも知れぬが、毎日の通勤時間4時間弱に加えてさらに自宅作業というのもバカらしくやっていられない。それに、撮影というものが現像処理を含めた一連の作業が済むまで完結しないということを職場にアピールする意味でもそれくらい待たせても良かろう。 ちなみに、全撮影枚数は約1,200枚。取捨選択作業によりほぼ半分の640枚を採用とした。 流し撮りの採用率が低いせいで全体の採用率が下がっていることになるが、流し撮り以外での採用率は撮影ポジションも良かったことからそれほど悪くない。RAWのレタッチ耐性の良さもあり、本来ならば捨てていたカットも救済されたように思う。ただ、さすがにブレやピンボケ、タイミングの悪さだけはRAWでの救済は無理だが。 我輩は、今回の戦利品である冷えたリンゴジュースをゆっくり飲んだ。 「なかなか美味い。これは高級品だな。」 イベント当日に飲んだ時は、あまり冷えてなかったし、ノドの乾きのせいで流し込むように飲んだのでジックリと味わえずもったいなかった。 どうせなら2箱持って帰れば良かったかと思ったが、当日の疲労状態に戻ったとして考えると、そんな気持ちも消えるに違いない。 <戦利品の高級リンゴジュース> <<画像ファイルあり>> <写真提出> 1週間後、もったいぶっていた写真を職場に持参し上司に提出。その他スタッフにも写真を見せた。 スタッフの1人が、「これはプロ並だな」と言った。 我輩は、「プロのつもりだが」と返した。 我輩は業務で撮影しているのだから、プロには違いなかろう。 しかし、そういう言葉の定義よりも、どんなに頑張ったところで"アマチュア"という社内評価を越えられないのが悲しいところ。 今回は成り行き上、客先に対してはイベントの付随サービスとして無償の撮影作業となったが、次回も撮影要請があった時はどうするつもりか? 「ウチのプロが撮った写真です」と客先に言うことが出来れば、それが社としてのスタンスとなり、写真が商品に変わる。 それが出来ねば、それを商売とすることはとても出来まい。 <後日談> 撮影写真を提供した際、技術見学会の撮影に関し、客先より感謝の言葉が伝えられた。 客先でもイベントの撮影はしていたものの、見学会の撮影は不完全だったため、我輩が丹念に撮ったものが役立つとのこと。 当初は「出来る範囲で撮って欲しい」という要望だったが、見学会に関しては、諦めずに全てのコースを網羅しておいた甲斐があった。 ---------------------------------------------------- ---------------------------------------------------- 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