2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[688] 2010年03月27日(土)
「フルオート中判一眼レフカメラ」


先日の忌引帰省にて、フルオート645判中判カメラの機動性の高さについて再認識させられた。
改めて、AE(自動露出制御)やAW(自動巻上げ)、そしてAF(自動焦点調節)のあるカメラに魅力を感じたのである。
このことは、雑文045「やってみなければ分からない」でも書いたように、「MINOLTA α7000」で初めてAFに触れた時のことを想い出させた。
「中判の一眼レフでも、フルオートで撮れるといいのだが・・・。」


我輩は、雑文454「MF派でない宣言」で宣言しているとおり、MF派ではない。メインと位置付けたフォーマット66判にはAFカメラが存在しないため、仕方無くMFカメラを使っているのである。
(※ローライには66判AFカメラがあるが、システムがあまりに不十分で用を為さぬ)

元々、我輩が66判をメインに位置付けた理由は、「縦横の区別が無い」ということに尽きる。

中判カメラをメインとするには、当然ながら一眼レフでなければ用を為さぬ。そのことは雑文230「無くてはならぬ一眼レフカメラ」にも書いた。
撮影レンズを通した映像を、そのまま目で見る形式の「一眼レフ」は、応用に富み如何なる撮影にも対応出来る。なぜなら、ファインダーで見たそのままがフィルムに映る(投影される)からだ。

そういうわけで、中判カメラを導入するにあたり、まず、一眼レフカメラの大きさや重さがネックになった。
ボディはペンタプリズムも大きく、交換レンズは35mmカメラのそれよりも大きく重い。そんな大きく重いカメラを、35mmカメラのように自在に振り回して使えるだろうか。

我輩が最も心配だったのは、縦位置撮影だった。
当時は就職で上京してそれほど経っていないこともあり、田舎ではあまり無いようなモデル撮影会などに参加することが多かった。当然、モデル撮影では縦位置が多くなる。だから、縦位置で構えるのが大変そうな中判カメラでは、恐らく手ブレなども頻発するに違いない。
それに、縦位置か横位置かを迷った際に両方撮ることも考えると、中判フィルムでの撮影枚数の少なさが心許なかった。

そこで、いっそのこと正方形の66判フォーマットを使うことで、縦横の区別を無くすことを考えた。
これならば縦横を撮り分けることも無く、またボディもプリズムファインダーを使わずウェストレベルファインダーで軽量化出来る。嬉しいことに、ウェストレベルファインダーならば、ルーペ拡大率が大きいのでピント合わせの精度も向上する。

そうやって選んだ66判カメラは、ロシア製ルビテル二眼レフから始まり、ブロニカ一眼レフ、マミヤレンジファインダー、ロシア製キエフと続いた。
確かに、正方形の合理性はとても優れ、特に魚眼レンズでは正方形ならではの独特な世界を表現することが可能であった。

しかしながら、中判では645判(セミ判)のほうが圧倒的にユーザーが多く、メーカーも645判のほうに技術を投入し、ズームレンズもシフトレンズなど豊富で、ついには35mm一眼レフカメラと同等な性能を持つAF一眼レフが各社から登場するに至った。

それに対してほとんど進化が進まない66判カメラ。
時間差はあるにせよ、いずれは66判も同様にAF化されるものと信じていたのだが、結局、我輩が使っていた66判一眼レフカメラが後継機を残さず消滅したことにより、その希望も絶たれた。

645判のAFフルオートカメラは、我輩にとって非常に魅力を感ずるものだったが、66判ではないということと、何よりその値段があまりにも高く、購入を考えることなど一度も無かった。
カメラボディが30万円を超えるのは、何とか努力すれば買えなくもないが、それで終わりではないのが困る。レンズが20万円、30万円もするのだから追い付いていけない。

だがそのうち時代も変わり、デジタルカメラがフィルムカメラを次々に駆逐して行き、今では中判カメラはもちろんのこと35mmカメラさえカメラ店から姿を消してしまった・・・。


さて、先日の帰省でフルオート645判の機動性を認識したわけだが、そのせいで中判一眼レフに興味が移った。
35mm判の位置付けを645判にシフトするならば、66判との棲み分けも出来るだろう。そういう意味で、645判がフルオートであることの意味がある。

デジタルカメラ全盛の今なら、需要の少ないフィルム中判カメラもかなり安くなっているに違いない。・・・とは言っても、例えば「PENTAX 645N」ではボディのみの新品定価が30万円を超えるのだから、中古でも20万円くらいはするだろう。やはり考えるだけ無駄か。

ところが試しに中古カメラの検索サイトで調べてみたところ、なんと「PENTAX 645N」が4万円弱。程度の悪いものでは3万円台からあるのだ。信じられないほど安い。
いや、ボディが安くともレンズが高ければ手は出せない。

ところが調べてみるとレンズも同様に安く、定価26万円ほどのAF標準ズームレンズ45-85mmで、中古では4万円弱だった。これならボディと合計で8万円。家計への借金が増えるが、借りられない額ではない。

そういうわけで、標準ズーム付きのフルオート中判一眼レフカメラが8万円で手に入った。

<PENTAX 645Nと45-85mmズームレンズ>
PENTAX 645Nと45-85mmズームレンズ

ズームレンズは、複数のレンズを持ち運び交換する手間を省いてくれるばかりでなく、最適なフレーミングを微調整出来るという大きなメリットがある。単焦点レンズでは、固定された画角に縛られているため、前後に撮影位置を変えるなどしてフレーミングを調整するしかない。そうなると、遠近感のコントロールがデタラメになってしまう。ズームレンズは強力なアイテムなのだ。
(参考:雑文267「年の差」

特に望遠になると、少々前後に動いたところで変化はあまり無い。ズームでフレーミングを調整する意味は特に大きい。
金銭的な面で少し迷ったが、結局、追加で80-160mmレンズを5万円弱で買い足した。

また、フィルム装填は軸の回転が渋いせいか意外に手間取ることが判明した。このままではフィルム切れのタイミングで撮影テンポが途切れてしまうので、予備のフィルムバックを買い揃えた。

ついでに、AF機ではあまり関係無いがフォーカシングスクリーンをマイクロプリズムタイプに変えてみた。これはこれで、ピントが合っているかが判り易くなって良い。

<買い揃えたPENTAX 645Nのシステム>
買い揃えたPENTAX 645Nのシステム

手頃な値段のAF中判一眼レフカメラは、PENTAXの他にMAMIYAもあった。
しかしこの「PENTAX 645N」を選んだのは、「NikonF3」を思わせるシャッターダイヤルがあったからに他ならない。

フルオートで撮るという位置付けのカメラだけに、使うはプログラムオートのみ、マニュアル露出に用は無い。しかし、ダイヤルに刻まれたシャッタースピードのそれぞれの値が、我輩にこのカメラの可能性を感じさせる。いざという時に、迅速かつ確実に(強制的に)シャッタースピードを設定出来るというのは大きな意味がある。

<素晴らしきダイヤルの機能美>
素晴らしきダイヤルの機能美

レンズの絞り環にも「Aマーク」があり、絞り環とシャッターダイヤル両方とも「Aマーク」に合わせればプログラムオートになる。
また、どちらかを任意の数値に合わせればその値が優先され、他方がそれに合わせて自動調整される。いわゆる「絞り優先AE」と「シャッター優先AE」となる。

測光方式は、分割測光が使えるため、それなりに正確であろうと予想する。
それを確かめるために、試し撮りを是非行いたい。
だがフィルムで撮るにも費用はかかるので、せっかく撮るならば意味の無いものを撮るよりも、本番を兼ねた撮影としたい。つまり、巧く撮れればその写真を採用し、失敗すればまた次の機会に撮り直す。
そうなると、撮り直しが利く範囲の近さで、かつ、我輩にとって興味深い被写体を選ぶことになる。

色々と吟味した結果、千葉房総半島の中央に通っているローカル鉄道線「小湊鉄道」を撮ってみることにした。
ここならば、クルマで一般道を走って2時間くらいで行けるし、車両そのものも味があって写真に撮る意味もある。

撮影当日はあいにくの雨だったが、撮影地点が限定される鉄道撮影ではズームレンズが効力を発揮した。もちろん、AFは非常に役立つ。
また、AEB撮影(自動段階露出)も行えるので、絶対に失敗したくないカットではこれを使えば安心出来る。

ただ、やはりフィルム装填はなかなか手間取り、今回は使わなかったが予備のフィルムバックの重要性を強く感じた。
そして肝心の露出についてだが、やはりズームで画角を変えると明るいエリアの面積が変わるせいか露出も微妙に変化してしまう。ズーミングを多用する際には注意が必要かと思われる。

<試し撮りの結果>
試し撮りの結果

今回、まだ十分にこのカメラの特性を理解したとは言えないが、そこそこ我輩の期待に応えるものであることを確認した。

いずれにせよ、このカメラは我輩にとっては35mm判の延長。66判とは異なる位置付けであることを常に意識し、迷い無く使い分けることに務めたい。
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イラスト提供:シェト・プロダクション