2000/04/05
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カメラ雑文

[682] 2009年11月23日(月)
「SIGMA DP2の画質を見極めたい」


●経緯
最近、「SIGMA DP2」を買った。
もちろん、金に余裕があって買ったわけではない。家計に借金をして、中古品をようやく手に入れた。
それほどまでに無理して買った理由は、「DP2」の特長にある。

まず第一に、コンパクトカメラサイズながらもAPSサイズの大型イメージセンサーを搭載しているから。
普段から通勤カバンにメモ用途としてのコンパクトデジタルカメラを常備しているが、その画質の悪さに辟易としていたのだ。メモ用途とは言っても、普段持ち歩いているのだから、ちょっとした記念撮影や日常風景を写す機会もある。そういう場面で、APSサイズのイメージセンサーを積んだカメラを用い、デジタル一眼レフカメラと同等な画質を得たいと思う。

そして第二に、R・G・Bのデータを1ピクセルエリアで垂直に感受出来る「Foveon(フォベオン)」という3層構造のイメージセンサーを採用しているから。
その性能が本当だとすれば、デジタル一眼レフカメラの画質さえも越えるだろう。もちろん、「DP2」のレンズは非交換式の単焦点であるからオールマイティとは言えないわけだが、撮影条件を限定すれば、デジタル一眼レフカメラではなく敢えて「DP2」を使うことになるかも知れぬ。

第三として、1,400万画素の画像が得られるから。
デジタルカメラである限り、画素数は多くなくてはならぬ。なぜなら、色深度が浅くトランスパレンシー媒体を遺さぬデジタルカメラが、フィルムカメラを駆逐してまでのさばろうとしているのである。少なくとも、圧倒的な画素数でフィルムを凌駕することは、フィルムに対する礼儀でもあろう。もし1,000万画素以下のデジタルカメラに駆逐されるのであれば、フィルムは泣くに泣けないし、我輩はそのことを一生涯許さぬ。

<SIGMA DP2>
SIGMA DP2

ところが、品物が手元に届いてすぐさま後悔した。
カタログでは1,400万画素とされていたイメージセンサーだったが、それが吐き出す画像データは460万画素(2,640x1,760ドット)でしかなかったのだ。
パソコンのディスプレイ(1,920x1,200ドット)上で表示するとやけに画像が小さい。特に、縦位置写真だと等倍表示でも左右が足りぬ。

これはつまり、イメージセンサー「Foveon」がR・G・Bの3層であるため、各層それぞれの画素を合計した総数として1,400万画素という表記がされていたのである。
実際のところ、R・G・Bの3つのピクセルから1ピクセルの色を作るため、アウトプットされるデータはイメージセンサー総画素数の三分の一、460万画素ということになる。

<我輩所有デジタルカメラの画像サイズ比較>
我輩所有デジタルカメラの画像サイズ比較

もちろん、「Foveon」ではない一般的なイメージセンサーでも、R・G・Bのセルが平面上に交互に並んでいるためにR・G・B各色では画素数が少ない。つまり、R・G・B各色の画像はメッシュの目が詰まっていない。だから、目を詰めるためにカメラ側で補間処理が行われており、それをしないと実質的な画素数が1/3となってしまう。当然ながら、それをやると画質は劣化する。

そういった事情を考えると、「Foveon」が1,400万画素と表記することは、他社のデジタルカメラとの比較では正当かも知れない。逆に言うと、「Foveon」では1,400万画素の画像を縮小して目の詰まった460万画素の画像を得ていると言えよう。

だがそうなると、「Foveon」であることの特長が相殺されてしまうのではないか?
補間処理の行われた一般デジタルカメラの画像であっても、それが高画素データならば縮小処理すれば目が詰まる。つまり、「Foveon」の画質と同等になろう。
確かに「Foveon」は3層構造ということで素子1セルあたりの受光面積が広いわけだが、それが本当に画質となって現れるのだろうか? 他メーカーのデジタル一眼レフカメラの画質を越えるのだろうか?

我輩としては、「DP2」の画質を早急に見極めたい。
「DP2」を購入したことへの後悔を確定してしまうのか、あるいは、新たな認識を持ってこのカメラを活用することが出来るのか・・・。

今回のテストでは、その見極めをすることが動機となっている。面白半分で性能テストをやっているわけではなく、「DP2」を手放すかどうかという判断をするための重要な見極めとなる。
そのため、我輩の使用目的に適うかどうかということが重要であり、それが今回のテスト基準となる。

●テストについて
我輩が、コンパクトサイズのデジタルカメラ、特に「DP2」に求めることについて以下に項目を挙げる。
これらの項目が満たされねば、わざわざ苦労して「DP2」を導入した意義が失われてしまう。今回それを判定する。

(1)資料撮影
いわゆるメモカメラとしての利用となる。1枚モノの資料やメモは散逸し易いため、とりあえず撮影することは多い。また我輩は一時記憶能力に欠けるため、外出先でも注意書きなど何らかのメモ撮りは頻繁に行う。必然的に、常に持ち歩けるコンパクトサイズのカメラがその役を担うことになる。
判定基準は、「細かい文字が判別可能かどうか」。

(2)日常撮影
メモカメラ用途と同じく、撮影を目的としていない場面でいざ撮影しようとすると、手元のコンパクトサイズのデジタルカメラしか無い。例えば、少人数の飲み会でのスナップ撮影などはほとんどがそのような撮影となる。飲み会ではほとんどが暗いシチュエーションであるから、ノイズの多い写真が大半である。こういった撮影でノイズの少ない高画質な写真が撮れれば、素直に嬉しい。
判定基準は、「暗いシチュエーションでのノイズの出方」

(3)一般撮影
これまでは、デジタル一眼レフカメラの画質が必要となれば、どんなに単純な撮影であってもデジタル一眼レフカメラを持ち出すしか無かった。しかしコンパクトサイズのカメラで同様な画質が得られるのであれば、撮影レスポンスや交換レンズ等を必要としない撮影ではダウンサイジングが可能となる。つまり、デジタル一眼レフカメラの代用が可能かどうか。
判定基準は、「解像感と、ノイズの出方や背景のボケ具合」。

●テスト1 <細かい文字を読む>
文字情報がどれくらい細かいところまで読めるかということについて比べてみた。
これは、メモ用途として主に用いるコンパクトタイプのデジタルカメラ「Nikon P5100」との比較となる。

どちらもISO100で撮影した写真について、ディスプレイ上でピクセルが見えるよう、ブラウザで2倍引伸ばし表示をしている(データは等倍のまま)。
なお公平を期すため、切出し再保存時には同じ圧縮率のJPEG画像とした。そのため、両画像とも最終保存時のJPEG圧縮ノイズの上乗せが若干ある。
また、色はそれぞれ調整を施しているため、固有の色味を現しているわけではない。

「Nikon P5100」と「DP2」の等倍画像比較
<両機共通撮影エリアと、比較切り出しの位置>
両機共通撮影エリアと、比較切り出しの位置
<Nikon P5100 (2倍引伸ばし表示)>
Nikon P5100
SIGMA DP2
Nikon P5100
SIGMA DP2
Nikon P5100
<SIGMA DP2 (2倍引伸ばし表示)>
SIGMA DP2
SIGMA DP2
SIGMA DP2
SIGMA DP2
SIGMA DP2

これを見ると、個々の対象物に割り当てられたピクセル数は、当然ながら460万画素の「SIGMA DP2」よりも1,200万画素の「Nikon P5100」のほうが多い、つまり大きく写っていることが解る。

だが、費やしたピクセル数に応じた情報が読み取れるかどうかということになると、必ずしもそうなっていない。よく見れば、「P5100」では画面の場所によって文字の見え方が違う。
これは恐らく、レンズの収差に起因するものではないかと思う。
それに加えて、画面に一様に発生するノイズが加わり、そして最後にJPEGの圧縮ノイズが画像を荒らすのだろう。JPEGは、ノイズのような細かいパターンを表現するのが苦手である。

一方、「DP2」では出力画素数が小さいながらもノイズが少ないためにメリハリが利いて文字が読み易い(もちろん、RAWデータからTIFF画像に変換すればJPEGに見られるモスキートノイズも無くなる)。
また、画面の場所による違いも認められない。これはつまり、レンズの収差の影響が少ないということを意味する。

この撮影条件では「DP2」の圧勝となるが、「P5100」ではズームによる引き寄せが出来るということは重要である。肉眼では読めない遠くにある看板を、デジタルカメラのズームで引き寄せて撮り、確認することはよくある。そういう場面では、「DP2」では少し不便かと思う。

●テスト2 <解像感>
さて次の「テスト2」及び「テスト3」では、デジタル一眼レフカメラ「Canon EOS-5D Mark2」を参加させ、「DP2」がデジタル一眼レフカメラの代替となり得るのかということを見極めたい。
そのために、画像の解像感やノイズの出方を見ることにする。

撮影対象としては、比較的近距離で被写界深度が浅くなる1/18スケールのミニチュアカーとした。そして、撮影エリアや感度、露出設定も同条件にしてある。
また、各カメラの持つ最高画質が得られるよう、光量が充分に確保出来るストロボを光源とした。このことにより、ブレの抑制にも役立つ。

<共通撮影エリア>
共通撮影エリア
[共通撮影条件: ISO100・1/200秒・F4.5・ストロボ使用]

ここでは、ピントを合わせるポイントとして、ミニチュアカーのオレンジ色ウィンカー部とした。
撮影時、なぜか「EOS-5D Mark2」では若干後ピンとなることが多く(測距エリアは一番近い点を選んでおり、コサイン誤差は最小限のはず)、何枚も撮り直し、ようやく撮れた1枚を使った。

等倍切出し比較 (解像感)
<Canon EOS-5D Mark2からの等倍切出し (RAWデータからJPEG変換)>
Canon EOS-5D Mark2からの等倍切出し
若干ブレているようにも感ずるが、ストロボ撮影であるから、余程早い振動でも与えない限りはブレは有り得ない。恐らくこれはレンズ(24-105mmF4L)のせい。以前から我輩は、このレンズの周辺描写が良くないことを不満に思っている。

<Nikon P5100からの等倍切出し (JPEG撮影)>
Nikon P5100からの等倍切出し
色のくすみがあるため彩度を若干上げてみたが、その分だけ隠れていたザラツキ感が浮き上がってきた。被写界深度は深くピントの合っている範囲が広いが、クリアな感じは無い。ただ、メモカメラとして考えるならば充分過ぎるほどの情報量があると言える。

<SIGMA DP2からの等倍切出し (RAWデータからJPEG変換)>
SIGMA DP2からの等倍切出し
ウィンカーのオレンジ色のクリア感に驚かされる。少なくともこの等倍での比較に限定すると、「Canon EOS-5D Mark2」の画質を凌駕しているようにも見えてしまう。


この結果を見ると、「SIGMA DP2」の解像感が際立つ。
多少画像サイズは小さいが、Foveonイメージセンサーの唯一無二の画質を得られるという利点は大きいように思う。

しかし一般的には、大きな画像を縮小処理してシャープネス処理をかけると引き締まって緻密感が増す。
ならば、画素数の大きい「EOS-5D Mark2」と「Nikon P5100」の画像を、「DP2」相当の画素数にまで縮小処理するとどうなるだろう?

「EOS-5D Mark2」と「Nikon P5100」を「DP2」の画像と同じ大きさに縮小
<Canon EOS-5D Mark2の縮小画像>
Canon EOS-5D Mark2の縮小画像
縮小処理とシャープネス処理により、「DP2」の質感と同等あるいはそれ以上となった。フルサイズ2,100万画素だけのことはある。

<Nikon P5100の縮小画像>
Nikon P5100の縮小画像
バンパーの黒い部分はノイズが目立つものの、思ったほど悪くはない。1,200万画素の冗長性で救われたか。これならば、同じく1,000万画素超のデジタル一眼レフカメラ「Nikon D200」であれば画質は同等となろう。


この結果を見ると、「P5100」のほうはともかく、いくらFoveonであっても「EOS-5D Mark2」の解像感を超えているわけではないことが判る。Foveonでしか得られない画質というものが解像感以外にあるとしても、このテストからは感じられない。 パソコンの壁紙サイズにも足らぬ460万画素というサイズは、いくらなんでもマスターデータとしては小さ過ぎるように思う。

●テスト3 <ボケ具合とノイズの出方>
先ほど撮った同じ写真のうち、ピントの合っていない部分の描写とノイズについて比較してみたい。

等倍切出し比較 (ノイズ)
<Canon EOS-5D Mark2からの等倍切出し (RAWデータからJPEG変換)>
Canon EOS-5D Mark2からの等倍切出し
さすがにフルサイズだけあってボケの度合いは大きい。ノイズもあまり目立たない。35mmカメラを使っている者としては違和感が最も少ない。

<Nikon P5100からの等倍切出し (JPEG撮影)>
Nikon P5100からの等倍切出し
イメージセンサーの面積が小さいだけにボケの度合いは小さい。またノイズが多いのがかなり気になる。いくら画素数に余裕があろうとも、このノイズを画像縮小処理でごまかすことは不可能。

<SIGMA DP2からの等倍切出し (RAWデータからJPEG変換)>
SIGMA DP2からの等倍切出し
フルサイズの「EOS-5D Mark2」と比べればボケの具合は小さいものの、それでもコンパクトタイプのデジタルカメラとしてはかなりキレイなボケ具合と言える。ノイズも一般的なコンパクトタイプのデジタルカメラとは雲泥の差。


この結果を見ると、ボケ具合はともかく、ノイズの少なさは衝撃的ですらある。
いつでも携行出来るコンパクトサイズのデジタルカメラで撮った何でもないような日常撮影。それがまるでデジタル一眼レフカメラで撮ったような画像となるのだから、これほど面白いことも無い。

●その他、描写として気付いたこと
撮影した画像をチェックしていると、妙に違和感のある画像が目に入った。
その写真は、ハイライトが絵の具でベタ塗りしたかのような状態になっており、まるでビデオから静止画としてキャプチャしたかのような印象を与える。
こういうところは、ビデオカメラから派生したデジタルカメラらしさが出ていると言えなくもない。

ハイライトが絵の具のようなベタ塗りとなる
<DP2の等倍切出し (RAWデータからJPEG変換)>
DP2の等倍切出し

●我輩の結論
もしその場にデジタル一眼レフカメラがあるならば、わざわざ「DP2」を使う理由は無い。
いくらFoveonであろうとも、所詮は460万画素しか無い。Foveonでなくとも1,200万画素以上の画像であれば、縮小処理することでFoveonと同程度の画質が得られる。レンズが優秀だと言っても、小さな土俵で勝負する限りにおいてはその差も小さくなる。
また、「DP2」のハイライトでの不自然な描写はやはり気になるところだが、他のカメラでは撮影していない写真のため比較評価が出来なかった。しかしこういう画像は「DP2」で初めて見たのも事実ではある。

しかしながら、現在の通勤カバン常備のメモカメラを置き換える意味は十分にあると思われる。
また、デジタル一眼レフカメラに迫る画質は、我輩に"撮り甲斐"を感じさせ、「無理してもデジタル一眼レフを持って来れば良かった・・・」と後悔するシーンも減るだろう。

我輩の結論としては、過剰な期待をせずに「DP2」をメモカメラ後継として使っていくこととした。

なお、画質以外の使い勝手を中心とした評価については、ちょうど広島出張もあることから、早速「DP2」を実戦投入して問題点の洗い出しをしたいと思う。

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