2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
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カメラ雑文

[651] 2009年02月12日(木)
「未来の医学に託して」


子供の頃に読んだ本で、「不治の病に冒された人間を冷凍保存し、未来の進んだ医学で蘇らせる」という話を知った。
費用によって身体全体を保存するか頭部だけを保存するかが選択出来るという。

医学が進んだ今日でも、頭部だけの人間を蘇らせることは不可能であるから、当時冷凍された人々は、今でも深い眠りについているのであろうと思う。少なくとも、頭部以外の様々な組織や器官を体細胞から造り出せる技術が確立するまでは待たねばなるまい。
それがいつのことになるかは分からないが、その時まで頭部を保存する団体が変わらず存在し続けるのかが心配になる。

**************

さて、我輩は20年前からポジフィルムの電子化について努力を重ねてきた(参考:雑文473「現実を見ろ」)。
最初のうちはフォトビクスという装置を用いてポジやネガをNTSCビデオ画像にしてHI-FIビデオに録画し、パソコン時代に入るとフラットベットスキャナに透過原稿ユニットを装着して取り込んだりした。やがてフィルム専用のスキャナを購入、それも何世代もの製品を購入し使ってきた。

しかしどうにもならない問題があった。
それは、濃度の濃いポジでは取り込み出来ないという問題である。

濃度が濃いというのは、ひとことで言えば露出アンダーということになるが、写真的に失敗というものもあるし、Low-Key(ローキー)と言うべきものもある。
こういったポジをスキャナで取り込むと、絶対的な明るさが不足してしまい、それをパソコン上で強引に補正してもコントラストが高くくすんだ色になってしまう。

赤矢印が完全にスキャンで再現不能、黄矢印が部分的に再現不能
ポジ

ポジ現物については、明るいバックライトで見るとキレイに見えることから、ポジ現物には情報がそれなりに乗っていると言える。濃度が濃いために階調が埋もれてしまってスキャナでは拾えないのだろう。

もちろん、スキャナの取り込みウィンドウのパラメータには明るさ調整が出来るようになっているのだが、これはスキャナ装置側の照明光の強弱を調節しているのではなく、あくまでもスキャンしてCCDが読み取った信号を電子的に増幅しているに過ぎない。だから、そこで明るく調整したとしてもノイズと一緒に増幅するだけであるから意味が無い。
色についてもソフトウェアで強引に持ち上げることも出来なくはないが、かなり不自然になるのは避けられない。

フィルムスキャナで取り込んだ濃度の濃いポジを無理矢理ソフトウェアで調整
<Nikon SUPER COOLSCAN 4000>
フィルムスキャナで取り込んだ濃度の濃いポジ フィルムスキャナで取り込んだ濃度の濃いポジ

Low-Key写真の場合はコッテリとした色が魅力な場合も多く、スキャナで取れなくとも原版の美しさを見れば慰められたものである。
一方、露出アンダーなポジは自己責任の範疇として諦めねばならない面もあるが、それでも出来れば救済したい写真も多い。二度と撮れない想い出の写真もある。「失敗写真だ」とあっさり捨てることも出来ず、何となく未来の技術で救済出来るような気がして現在まで持ち続けていたりする。

フィルムスキャナのバックライトを明るくするのが不可能ならば、高画素化の進んだ現代のデジタルカメラでポジのデュープしてはどうだろう。バックライトにストロボを使えば、どんなに濃度の濃いポジであろうとも問題無かろう。露出の微調整も、カメラ側で絞りを変えれば良い。

そこで得られたのが以下の画像である。マクロレンズを用い、絞りもF11まで絞った。
本来ならば専用品のスライドコピーアダプタを使えれば良いのだが、手元に無いためポジ原稿と平行になるよう手動で調整して複写した。
それでもそこそこ階調豊かに写っているのが素晴らしい。ソフトウェアで無理矢理持ち上げずとも色が十分出ている。

デジタルカメラ
<Nikon D200/Micro-NIKKOR 55mm F2.8>
AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED

1,000万画素のデジタルカメラのためフィルムスキャナよりは得られる画像サイズが小さいが、それでも35mmサイズのポジには十分だと感じた(ただ、中判のポジも撮影してみたが、こちらはさすがに細部が描写しきれていない。この場合は2,000万画素以上のカメラが必須となる。)。

これまで20年間、強い光源にかざして見るしか他に方法が無かった写真を、ようやくパソコン画面に取り込むことに成功した。「失敗写真だ」と諦めて捨ててしまわず今日まで持ち続けていたことが間違いではなかったのだ。

恐らく2,000万画素のデジタルカメラを得るにもそう時間はかからないであろう。
医学が発達した世界を待ち望む冷凍患者のように、我輩は捨てられぬ失敗写真を未来に託したい。