2000/04/05
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表紙

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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[236] 2001年03月01日(木)
「何も考えてないんだから」

ニコンとキヤノンは、良い意味でも悪い意味でも対照的な存在だと思う。
ここでは、我輩の感じた印象と推測だけで話を進めるが、それでもなるべく論理的に話を進めるよう努力するつもりだ。


AF時代ではどうなのかは調べていないが、少なくともMF時代には、ニコンとキヤノンの操作体系は、双方が全く逆の関係にあった。
例えば、「レンズ脱着時の回転方向」、「シャッターダイヤルの数字の順列」、「絞り環の数字の順列」、「距離リングの数字の順列」、「得意な露出モード」。まるで意識してそうなったかのように、ことごとく逆の関係なのだ。
前にも書いたと思うが、これは、銃のS&W社とコルト社の関係とそっくりである。ライバルというのはそういうものなのか。

さて、ニコンは「Nikon F」の時代からレンズマウントを変えていない。昔のレンズが現代のカメラに装着出来たり、その逆が可能である。AF化の際にマウントを変更したキヤノンには出来ない芸当だ。

また、ニコンのAFシステムは、ボディ内モータとレンズ内モータを使い分けている。小型レンズではボディ駆動、大型レンズではレンズ駆動とし、最適な駆動力でレンズの焦点を合わせる。また、超音波モータもキヤノンだけのものではなくなった。

しかし、我輩の印象を言わせてもらうと、ニコンはあまり先のことを考えていないように思える。
AFでは、まず「F3/AF」でレンズ内モータをデビューさせた。しかしボディ駆動形式のミノルタαシステムが発表されると、他社と競ってボディ駆動のシステムを採用した。その時、キヤノンだけは独り沈黙していた。

数年後、キヤノンはレンズ内モータ形式のEOSで殴り込みをかけた。超音波モータという消費者にアピールする武器でミノルタのシェアを一気に奪ったのは記憶に新しい。
キヤノンの凄いところは、この時既に、自動絞りのPCレンズや、防振レンズなどを構想に入れていたということだ。それ故、初期のEOS600シリーズでさえ、防振機能を活用出来る。

一方、ニコンはキヤノンの成功を見て、「そう言えば、超望遠レンズだとボディ駆動では無理があるなあ」などと今さらながらに気付いた。カタログでは「F3/AF」レンズの制限事項を書いたりなどして、レンズ駆動のAFシステムを忘れようとしていたのだが、ここにきて再びレンズ駆動に戻ってきた。しかもそれは「F3/AF」のAFシステムとはほとんど互換性が無いばかりか、今までのボディ駆動AFカメラすら使えないレンズとなった。

更には、取って付けたように防振レンズを開発したために、従来のAFカメラでは防振機能が利用出来ないという致命的な欠陥を抱え込んだ。もし、キヤノンのように初めから戦略的に商品開発を行っていたら、AFカメラを開発しようとした時点で防振の構想も盛り込んだはず。これは明らかにニコンの「思いつき戦略」の弊害である。

このようなことは他にもある。

例えばAFカメラなら当たり前のように利用しているはずの距離情報を最近まで使っていなかった。それをF90になって初めて「3D測光」などと大層な名前でデビューさせたのだ。他社は前からやってたことであり、特に名前もついていないようなカメラ内部の楽屋裏の仕組みである。

結局のところ3D測光は、F90以後のAFカメラと3D測光対応レンズの組み合わせでしか利用出来ない。なぜなら、その機能を「思い付いた」のがF90の時点だったから。ただそれだけ。
そのような機能はAFシステムを構築した時に視野に入れておくべきことだろう?
そういう意味で、ここでもキヤノンと対照的である。

もしニコンが戦略的に製品開発をやっていたら、AF開発時に全ての可能性を盛り込んだシステムを構築し、「初期のカメラでは利用できません」などという事態にはならなかった。もちろん、マウントを変えずに全く新しい合理的なシステムを作ることは不可能ではないと思う。

なぜキヤノンがマウントを変えたのかというと、径の小さなFDマウントの内側に電気接点を組み込めなかったからだろう。ニコンのように接点を引っ込ませたとしても、装着時にレンズ中心部が回転しないスピゴットタイプのFDレンズは接点の接触がうまくいかない。
だからと言ってペンタックスのようにマウントリングそのものに電気接点を組み込むわけにもいかない。ボディ側の細いマウントリングを見れば、シロウト目にもその困難さは解る。
マウントの変更は、必然だったのだ。

まあキヤノンは今まで、FDレンズのスピゴットタイプは精度が高いだの、摩耗が少ないだの、いろいろと言い訳をしてきたのだが、やはりそれも限界だった。
しかし、キヤノンは転んでもタダでは起きなかった。そういう苦い経験を生かし、今度のマウントは何十年経っても困らないように考え抜いた。だから、純粋にシステムとしての比較では、「ニコンFマウント」は「キヤノンEFマウント」に勝ち目は無い。

かろうじてニコンの戦略の無さを補っているのは、「レンズマウントの物理的互換性」という強みだけである。しかし、ニコンがラッキーだったのは、その強みが意外に大きかったということだ。そうでなければ、今頃はキヤノンに喰われていたに違いない。

今、MFの新機種「Nikon FM3A」と新MFレンズが現れている。しかし、ニコンのことだから、いつもの調子で何も考えずに「ウケそうだから」と出したのだろう。FM3Aの出現によって「これでしばらくはMFが安泰だ」などと思っていると、案外あっさりと裏切られるかも知れぬ。
まあ、その時は許してやってくれ。ニコンに悪気はないんだから。先のこと何も考えてないんだから。


(2004.05.05追記)
レンズの距離情報を利用したのはニコンの3D測光が最初だったようであり、ここで訂正する。ただし交換レンズの距離情報の最初の組込みは少なくともキヤノンでは1990年以降と見られ、ニコンが最初というわけでもない。