2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
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5.カメラ雑文
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カメラ雑文

[190] 2000年12月12日(火)
「貧乏脱出大作戦」

会社帰り、いつもの道をショートカットしようと路地裏に入ると、その店はある。
広島風お好み焼きの店、「ひな」。

以前は目立たない居酒屋だったような気がするが、正直、昔の様子は記憶にない。店の前を通っても意識にのぼらないような、そんな存在だった。

しかし1年くらい前に、みのもんた司会の「貧乏脱出大作戦」という番組で取り上げられて以降、店が繁盛するようになった。
この番組は、極貧に喘ぐ店を救うべく、料理人を繁盛店の修行に行かせるという企画である。たまたまその店が出た時はテレビを見逃してしまったのであるが、やはり厳しい修行を積んだに違いない。
店も改装されてあか抜けし、今でも程々に客が入っているのが見える。

我輩は、この番組は大抵見ている。
やはり焼き物関係は、「焼き」の具合がなかなか難しい。焼き過ぎたり、半焼けだったり、焼きムラがあったりして、修行者はその都度師匠に怒鳴られる。今までろくに自分で調理したことが無かったような者ばかりなのだ。
恐らく、お好み焼きの修行も、「焼き」が一番の関門だったに違いない。
それほど「焼き」というのは、重要な要素の一つなのだ。


さて、写真で「焼き」と言うと、プリント(暗室)作業ということになる。
やはり写真の世界でも、「焼き」は難しい。

モノクロネガの場合、焼き付けのコントロールは明暗のコントロールのことだ。現像液や印画紙の種類、露光及び現像時間などは、白から黒への階調のコントロールである。明暗差が印画紙のレンジを越えるようならば、それを補うために部分的に焼き込んだり(覆い焼き)して収まるようにする。

しかし、カラーネガでの焼き付けは、それに色の要素が加わることになってややこしい。
我輩はカラーネガの現像はやったことはないが、オレンジ色ベースのネガの反転色を、見たままの色に戻すのは、無調整というわけにはいかないらしい。

手間を掛けて自分の思い通りの結果になるように調節・焼付けしたものを「ファイン・プリント」と言うのだが、それはまさに「渾身の焼上がり」と言える。
そのような調整を自分でやるにせよ、ラボに依頼するにせよ、焼き付けが完了するまで気を抜くことは出来ない。

これがモノクロネガならば、カラーに比べて調節要素は少なく自分が直接コントロールすることは容易である。しかし、カラーネガとなると、そもそも自分で焼く環境が無い。薬液の処理すら出来ない。必然的にラボに焼いてもらうことになるが、難しい「焼き」を他人に適切に指示するというのは至難のワザだ。同じ指示でも、よほど具体的に言わないと、ラボマンの解釈の違いで写真の仕上がりも変わってくる。
そして焼き直しをするたび、フィルムに傷が付くリスクが増えることにもなる。

我輩は基本的にはカラーネガをやらない(スキャナ取り込み用途には使うことがあるが)。なぜなら、我輩は面倒くさがりなのだ。

これがもしポジフィルムならば、撮影後はお決まりの処理が行われるだけであり、処理が忠実ならば、誰がやろうとも結果に違いはない。
仕上がりは、撮影時の努力が全てであり、逆に言えば他に気を配る必要は無い。いかにも我輩向きである。


撮影時に全力を尽くしたとしても、さらに焼き付け指示作業が残っているとしたら気が重くなる。
ラボマンとの意思の疎通というのは、もしかしたら写真の一番難しいテクニックの1つなのかも知れない。
相性の良いラボマンを見つけ、顔つなぎのために頻繁に通い、お互いの言わんとすることが目を見ただけで分かるという関係。それはまさに恋愛の時のような努力と情熱だ。
もし、ネガカラープリントで微塵も妥協せずに素晴らしい作品を創る者がいたら、それは本当にスゴイと言えよう。もちろん、皮肉ではない。


「貧乏脱出大作戦」では、苦労の末に理想の焼き具合を体得した瞬間、師弟共に涙する。
しかし、我輩は根性無しであるから、もし「貧乏脱出大作戦」に出るとしたら、焼かずに済む料理(ポジフィルム)で修行することにするが・・・。