2000/04/05
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表紙

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カメラ雑文

[158] 2000年10月11日(水)
「闘うための道具」

戦艦大和は、日本人の心の中に今でもその勇姿をとどめている。しかしその想いは、「戦争に勝つ」ということとはまた別の気持ちであると感ずる。

太平洋戦争では日本はアメリカに負けた。戦艦大和がどのように活躍しようと、圧倒的な力(資源)を持つアメリカを相手に、どう戦局が有利になろうか。
しかし、最高の艦を造り上げた日本人にとって、例え戦争に負けようが大和がその本領を発揮して欲しかったと思うのは当然のことである。
実戦では、その最強の主砲は、対艦用の徹甲弾ではなく対空弾を撃つしかなかった。敵艦船を1発で撃滅可能な46センチ砲を、蚊を追い払うことにしか使えなかったことはさぞ無念であったろう。

当時の最高技術を注ぎ込んで作られた世界最大の戦艦「大和」。起工時から国家機密のベールに覆われ、敗戦後は関係資料の多くが処分隠滅された。そのようなナゾの多い戦艦ながら、いまだに多くの書籍が発売されていることを思うと、今更ながらに日本人の戦艦大和に対する想いを感じさせる。

史上最大の46センチ三連装主砲は、ガンワイヤと呼ばれる鋼線で何層にも巻かれ、高圧で締めて仕上げられる。このような構造は、330kgの火薬の爆発力に耐えられるようにするためであり、逆にそのような構造を知ることによって大和の強大な力を垣間見る。
甲鈑材料は、ドイツから導入した技術を更に改良し、製造効率向上と耐弾効果に優れたVH甲鈑やCNC甲鈑を生み出した。
また、革新技術を盛り込む一方で、機関は航続力のあるディーゼルではなく実績のある保守的な蒸気タービンを採用し、どんな時でも確実に動くことを第一とした。
また、大和は主舵の他に小さな副舵を持っていた。主舵が破壊された際の予備である。

これらの仕組みは、通常の船には必要ないものである。まさに、闘うためのメカニズムであると言えよう。それ故、それらメカニズムを生かせぬまま艦を沈めることになったのは、戦争の勝ち負け以前の哀しみである。


プロ用カメラの場合、チタンで外装を固めたり、普段は必要ない緊急作動シャッター(F3)や巻き戻しクランク(F4)、そして2重接点(EOS−1)を装備しているという点では、闘うための道具に近いと言える。

一般家庭向けのカメラを「商船」と例えるならば、プロ用カメラは「戦艦」だ。単に撮影するだけの道具ではなく、闘うための道具なのだ。

もちろんカメラの場合、明確な敵はいない。しかし、過酷な自然環境、争乱、劣化や各種トラブルなど、あらゆることを想定し、それに耐えるように設計されている。まさに「闘うための道具」だ。
実際にはそのような目に遭うことのほうが珍しいのかも知れないが、工夫を凝らしたメカニズムは、いつでも戦闘可能で頼もしい。

「闘うカメラ」。それは機能だけでは推し量れない。
闘い方で次第でその価値を左右する、特殊な存在である。