2000/04/05
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表紙

1.主旨と説明
2.用語集
3.基本操作法
4.我輩所有機
5.カメラ雑文
6.写真置き場
7.テーマ別写真
8.リンク
9.掲示板
10.アンケート
11.その他企画

12.カタログ Nikon
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カメラ雑文

[108] 2000年 8月 7日(月)
「スケール感」

夏休みのためか、書店では子供用の図鑑が多く置かれている。
子供用だとバカにしてはならない。正確な資料を提供するため、鮮明で鮮やかな写真が多い。芸術作品としての作為が無い分、素直に写るのかも知れぬ。

さて、我輩が子供の頃は、昆虫図鑑を好んで見ていた。その中に、あるバッタの写真があった。岩の上に佇むそのバッタは、自然光で撮られたためか臨場感が強かった。順光の日光で撮られ、画面の全てにピントが合っている。
しかし画面の背景は単調な岩だった。大きさを比べるものも無く、写真の臨場感の強さゆえ、我輩は逆にそのバッタのスケール感を取り違え、まるでひとかかえもある巨大昆虫のように思えた。
「こんなでけえ虫、捕まえてぇ!」
もちろん、図鑑には体長は書いてあるが、小さな子供にはピンと来ない。

普通、写真に写った物の大きさを示す必要は無い。なぜなら、日常を写した写真なら、大抵は大きさを知っているものばかりである。 知らない人物の写真を見ても、その大体の大きさが判る。新製品の車の写真を見ても、その大体の大きさが判る。観光地の建物の写真を見ても、その大体の大きさが判る。
その写真を見る者の頭の中に、常識的な大きさのサンプルが予備知識として入っているからだ。

米国NASAの打ち上げた探査船「パイオニア10号、11号」は、外宇宙(太陽系外)に出た最初の宇宙船だが、そこには知的生命体に向けたメッセージプレート(金メッキされた15.2cm×22.9cmのアルミニウム板)が装着されている。男女の人間の姿と、パイオニア宇宙船の本体を並べた図である。そこからは、パイオニア宇宙船と人間の大きさが比較できる。つまり、地球人の大きさを知らない異星人がこのプレートを見たとしても、パイオニア宇宙船との比較から地球人のサイズが判るのである。

我々が普通の写真を見た時に、当たり前のようにスケール感を持つのは、実は見る者の知識に頼っているからだ。
たまに新製品情報などで、タバコのセブンスターの箱を一緒に写し込んだような写真を見掛けるだろう?大きさが本当に判らないものならば、あのように日常にありふれたタバコの箱を同席させることによって、スケール感を意識的に導入しなければならない。
写真の実力のある者ならば、そのスケール感を逆に利用し、プラモデルのジオラマなどを見事に等身大の写真に変えることもできる。

普段、我々はスケール感を意識の水面下に置いている。何も考えずにシャッターを押せば自然にスケールが写り込むのだからそれでいい。しかしたまに、スケール的に何の手掛かりも無い場合もあり、子供の頃の我輩のような無知なる人間を混乱させることにもなる。
意図的に非日常性を狙っていない限り、やはり写真にはスケールを写し込むことが重要だ。少なくともそれを意識することによって、自分の作品の普遍性が増す事になる。

写真の、時代を超える価値の一要件とは、「情報が正しく伝わること」である。